メルセデスSクラスW126は、時代を超えたエレガンスで今日までファンを楽しませている。そんな1986年製の420SELが売りに出されており、状態も良好とのことだ。
辞書には、「timeless elegance(時代を超越したエレガンス)」という言葉の横に、文章ではなく、W126シリーズのメルセデスSクラスの写真が載っているはずだ。1979年から1991年秋まで製造された2代目ダイムラーは、デザイナー、ブルーノ サッコの手腕によって成功し、製造期間終了から30年以上たった今でも、1980年代のエグゼクティブ メルセデス・ベンツに魅了され続けるたくさんの愛好家たちがいるほどだ。
eBayで、このタイプの1986年製「420SEL」が売りに出されている。スモークシルバーのエクステリアと、レザーを使ったブラウンのインテリアが印象的な一台だ。売主の説明によれば、メルセデスは素晴らしいコンディションだそうだ。価格は25,900ユーロ(約365万円)と表示されている。
そのメルセデスはポーランドにある
広告の写真を見ると、ポーランドのナンバープレートがついている。そして実際、売主の説明によれば、このメルセデスはワルシャワの近くに在る。しかし、売り手はそれを問題視しない。どんな質問にも快く応じてくれる。ポーランドで購入した車をドイツで登録するのは問題ない。言うまでもなく、ポーランドもEUの国なのだ。
説明文は比較的華やかな文章で、技術的な内容にはほとんど触れていない。その理由は明白ではない。しかし、この事実を知るには、その車両と歴史を精査する必要がある。これには、ポーランドへの訪問が必要だ。
とりあえず、広告の写真のダイムラーは我々を誘惑している。本当にいいクルマを見える。一見したところ、ダメージはもちろん、使用感もあまりない。このメルセデスは明らかに素晴らしいコンディションで、本当に良い個体かもしれない。
このW126を購入する前に、購入希望者が知っておくべきことはこれだ
しかし、そのためには、ベンツが広告にあるような優れた車でなければならない。約束されたコンディションと美しい写真と文章からは1986年に製造されたこの「W126」は、第2シリーズに属し、より成熟したものと考えられている。
「420SEL」は、有名なトップバージョンである、「560SEL」と比べると、少しプレステージが低いかもしれない。しかし、「小さい」V8を甘く見てはいけない。パワーがあり、時速200kmを問題なくクリアしながらも、燃料消費は兄貴分より少しだけ少ない。
「Sクラス W126」も錆とは無縁ではない。ジャッキマウントやリヤウインドウフレームなどが有名どころだろう。いくつかの電子機器は徹底的にチェックする必要がある。それらは問題が発生する可能性があり、最悪の場合、多額の費用がかかる可能性がある。
やはり、「W126」は気の弱い人には向かない。基本整備は、必要な知識と専門家のサポートがあれば、維持するのは簡単だ。第2シリーズのスペアパーツは、新車と同じぐらい早く手に入る。しかし、ダイムラーは高級車だ。そのため、小型のシティランナバウトと同じ金額では維持できないのだ。
【ABJのコメント】
「Sクラス メルセデス」といえば、やはり昭和40年男にとっては、この「W126」こそが「ザ・Sクラス」という印象が強い。時はバブル経済の真っただ中で、街中には金のバッチを光らせた「500」か「560SEL」が跳梁跋扈し、トランクリッドにはブーメランアンテナ(TV用、もちろん当時だからアナログなので映りは悪い)、と電話用の黒いアンテナが付いていて、我が物顔に渋滞している東名高速の路肩を全力疾走していた、そんな時代だった。それからすると今の「Sクラス」はなんともアクがぬけて穏やかな感じになってしまったし、あの頃の迫力満点の「Sクラス メルセデス」に比べると、一瞬「Eクラス」かと、間違えるようなたたずまいになっている。なんとも時代は変わるもの、である。
そんな「W126」の、今回はなんとも程度のよさそうな「420SEL」、である。本文中にもあるように、「500」とか「560」という数字とパワーユニットが絶対的に必要なことなど、一般の路上ではほとんどなく、アウトバーンのごく一部の全開区間でその差を痛感するくらいのものであろう。だから「420」のパワーユニットでも十分すぎるほど十分なはずで、個人的には、「300」か「300SD」でもいいくらいのものだ。だがなぜか日本では、「420」はまったく人気がなかったのは、「560じゃないとイヤだ」というなんとも金満な理由と、「420」というネーミング(死に)が理由だったと聞く。そういう意味も込めてバブルだったなぁと痛感する。
今回の一台は、内装の程度もよさそうだし、黒革ではない内装とシャンパンの外装が上品でよろしい。これで「ヘタクソ棒」がついていたら満点なのだが、残念ながらヨーロッパでは「ヘタクソ棒」は見たことがない。また、車両価格そのものは適当価格だとは思うが、交換パーツなどは驚くほど高いので気を付けてほしい。(KO)
Text: Lars Hänsch-Petersen
加筆: 大林晃平
Photo: ebay.de/manjei