11日に投開票された沖縄県知事選では、現職の玉城デニー氏が得票率51%を獲得する圧勝劇に終わり、県内に浸透する知名度の高さを見せつけた。基地問題での政府との対決路線を取るデニー県政を支持する地元紙は一夜明けた12日、早速社説で「『辺野古』断念が民意だ」(琉球新報)、「辺野古見直し協議せよ」(沖縄タイムス)と勝ち誇るように県民世論に訴えた。
数々の争点があった中で、両紙が揃って知事選を総評する社説のタイトルに「辺野古」を持ってきたあたりは一夜明けても興奮が冷めやらないところか。デニー知事を巡っては、選挙前の県議会で異論が噴出していた「公約達成率98%」をビラに記入したことに、さしもの沖縄タイムスでも擁護できず、ファクトチェックで不正確の判定を出さざるを得ない杜撰が際立ったが、安堵した面もありそうだ。
ところが各自治体別の開票結果を確認すると、両紙の社説には「不都合なデータ」が浮き彫りになる。県内41市町村の大半でデニー氏が最多得票を集めた中で、「辺野古」問題の当事者である2つの市、すなわち普天間基地の地元・宜野湾市と、移転先の辺野古のある名護市では、いずれも佐喜眞氏がデニー氏の得票を上回った。また同日に投開票を迎えた宜野湾市長選は、現職の保守系市長が圧勝で2期目を決めた。
もちろん宜野湾市は、佐喜眞氏の出身地で、市長を2期務めた地元だから、県内のほぼ全域が陥落した中で「死守」したのは当然と言える。しかし名護市は4年前の選挙では、デニー氏が16796票で、佐喜眞氏の15,013票を上回っての快勝だったのが、今回は佐喜眞氏が15,717票で、デニー氏が15,407票と310票の僅差ながら“逆転”した。
名護市は4年前までオール沖縄が市長ポストを押さえていたが、18年2月の市長選で保守系が市政を奪還。今年1月の市長選も現職が防衛に成功するなど、保守系の地盤が立て直されてきた効果はありそうだ。しかし結局、知事選では最大の票田である那覇市でデニー氏が53%の得票率で優位を確実なものに(佐喜眞氏は35%)。
他方、大接戦だったとはいえ、保守系の知事候補が名護市を制したことは、今後の4年間で辺野古基地断念を“県民の総意”であるかのように訴えていきたい地元2紙にとっては、論説の整合性を突っ込まれる隙を与えたことになり、何かと都合の悪い「ねじれ選挙」だったと言えそうだ。