先進国市場以外でも、東南アジア市場に大きなシェアを持つ日本メーカーは、世界戦略車のほかにもその国の市場や経済に合わせて、新興国向け専用車をラインナップしている。つまり日本車なのに日本人が知らないクルマというのが走っているのだ。
今回はそんな車名もスタイルもわからない日本メーカーのクルマをご紹介しよう。
文・写真/小林敦志
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■自動車メーカー各社「地域限定モデル」の戦略
VW(フォルクスワーゲン)や、BMW、メルセデスベンツなどドイツ系ブランドでは地域限定モデルは設けずに、グローバルで共通モデルのラインナップを行ってきたが、それでも中国を中心に地域限定モデルをラインナップするようになってきた。
中国ではいまや“ロングホイールベースモデル”が当たり前のように設定されている。例えばメルセデスベンツCクラスのグローバルモデルに対してホイールベースを延長し、例えば“C180L”といったモデルを中国限定で現地生産、ラインナップしている。
そもそもはレクサスLS(先代)に“460L(Lは460のロングホイールベースモデルの証)”があり、これをヒントにアウディが“A6L”を発売すると大ヒットし、これが広まったとされている。
当初、アウディ本社は中国限定モデルということに抵抗を示していたようだが、条件付きでラインナップを許すと大ヒットしたといった話も聞いている。
いまではセダンに限らず、ミニバンやSUVなどさまざまなボディタイプに“●●L”が設定されている。中国では、おもに大企業となるが中間管理職クラスあたりまで、業務での移動用に運転手付きのクルマが貸与される。
昔は幹部になるような年配層には運転免許を持たない人も多かったので、後席で足を組んでゆったり乗ることこそがステイタスとされ、後席足元がゆったりするロングホイールモデルのニーズをアウディが察知し、一気に広めるきっかけを作ったのである。
そしてそのステイタスが庶民層にも憧れとともに広がったのである。そのため車名の最後に“L”がついていることがマストとなっている。
例えばメルセデスベンツのCやEクラスの新型がワールドデビューすると、間髪入れずに中国現地生産モデルとしてロングホイールベース版となる、“●●L”がデビューするのである。
欧米車に比べて、日系モデルは各市場でそこのニーズに合わせてモデルのラインナップが異なる傾向が強まっている。
日産が少し前に新興国向けに“ダットサン”ブランドを展開した。だがこれは現地ニーズを「性能はさておき、とにかく安価なブランド」と誤って車両開発したために、当の新興国の消費者の評価が悪く失敗に終わったともいわれている。
ASEAN(東南アジア諸国連合)地域の新車価格は、ASEANだからといってけっして安価というわけではない。日本からの完成車輸入など特殊な事情がなく、現地生産モデルであっても、現地通貨を円換算すれば、日本での新車価格とそん色がないことがわかる。つまり“高い”のである。
四輪車はまだまだステイタスの高い乗り物であり、そこを見誤ると地域限定モデルとはいえ、ダットサンのようになってしまうのである。
■「日本では見たことのない日本車」の魅力
我われ日本人が海外のモーターショーに行くと、「日本で見たことない日本車ばかり」と思うが、海外から日本に来たひとも「日本で走っている日本車は見たことのないモデルばかり」となっている。
幅広いモデルラインナップを持つトヨタで見ても、国内ラインナップのうち、先進国、新興国含めほぼほぼ世界的に知られているモデルとしては、ヤリス、ハイエース、カムリ、カローラ、C-HR、RAV4、ランドクルーザーぐらいになるだろう。
そのようななか、「海外専売モデルのなかで日本でも売れそうなクルマがあるじゃないか」という声をよく聞くが、これは「隣の芝生はきれいに見える」的なものもあり、実際日本市場に導入しても満足のいく販売台数を稼げないことが十分予想できるのである。
例えばASEAN地域ではコンパクトな日本車の人気が高く、その地域向けの専売モデルも多いのだが、多くが全幅1700mm超となる、つまり日本では3ナンバー車なのである。ASEANの衝突安全基準はすでに日本より厳しくなっているといわれるなかでは、日本の5ナンバー枠に収まるモデルは少ない。
スズキ バレーノは全長が4メートル以内にも関わらず、全幅が3ナンバーサイズとなるコンパクトハッチバックだったこともあったのだが、日本市場から早々に撤退している。仮に日本に導入するとなれば、現地生産モデルを輸入して販売することになるだろうが、今度は原産国がネックになってくる。
“インド製”、“タイ製”、“インドネシア製”をネガティブにとらえる日本人も多い。現状では世界でタイ生産モデルの品質が最も高いといわれるなど、“日本製=最高品質”ということでもなくなってきているが、依然として“日本製が世界一”と考える人も多く、その面でも売りにくくなっているのである。
日本でもニーズがあればメーカーだって国内販売に踏み切るだろう。
パッと見ると「日本でも売れそう」と思えるほど、新興国専売モデルでも完成度が高まってきたものと考えるとともに、国内ラインナップに魅力的なモデルが少ないことで“日本市場でも売って欲しい”という声が目立ってきたのではないかと筆者は考えている。
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投稿 あれ? ホンダBR-Vってなんだっけ? 日本で見かけない海外専売の日本車たち は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。