2022年7月に待望の日本登場となった、新型エクストレイル。受注も好調のようで、歴代エクストレイルで最速となる、発売後約2週間で1万2千台を受注したという。
豪華でエレガントになり、初代エクストレイルを知る人にとっては「これがエクストレイル!?」と思ってしまうほど立派になった新型エクストレイルだが、はたして高級SUVとよぶにふさわしいまでに成長しているのか!?? 初代と比較しつつ、新型エクストレイルの高級SUVとしての実力を考察しよう。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:NISSAN
「タフなオフローダーのフリした乗用車」であることで、実用的で低価格を実現した初代
初代エクストレイルが発売となったのは2000年のこと。「手頃な価格で買える本格4WD」「4人が乗って快適、4人分の荷物が積める」「運転しやすくてガンガン使える機能」という、アウトドアスポーツを最大限満喫するためのタフギアというコンセプトで開発されたモデルだ。ターゲットはアウトドアスポーツを楽しむ20〜30代だったが、そのパッケージングは、ファッショナブルなシティ派も満足させるものがあった。
テレビCMではハードなエクストリームスポーツを楽しんだ若者が、エクストレイルに汚れたままのギアを積み込むシーンや、エクストレイルが渡河やジャンプをするシーンが織り込まれ、タフなオフローダーのようなイメージを強調。もちろん、エクストレイルは本格オフローダーではないのだが、通常のアウトドアスポーツやレジャーを楽しむにはこのメカニズムで十分だし、ある程度のラフロードでも困ることはない。取り外して水洗い可能なウォッシャブルラゲッジボードや防水フロア、撥水シートの設定など便利な機能と装備が備わっていることで、文句なしに「ガンガン使える」クルマに仕上がっていた。
何よりも乗用車として設計されているため、オンロードでの快適性、経済性、価格の面でユーザーの満足度が高い。普段使いから週末のレジャーまで広くカバーしてくれる実用的なパッケージングである上に、およそ200万円〜という低価格設定も若者には嬉しい。ランクルやプラドのような威圧感はないが、カジュアルなおしゃれを楽しむように乗れるというところも大きな魅力だった。
先進性と高級感は、初代と比較にならないほど進化した新型
一方、今回の新型エクストレイルは、ゆとりと豪華さを感じられる上質なデザインに、日産の電動化技術と4WD制御技術、充実した先進安全運転支援システムなど、日産のもつ最先端技術が満載されている。
高出力モーターを搭載した第2世代の「e-POWER」は力強くてなめらかな加速を楽しめる。発電用エンジンは、日産が世界で初めて量産化に成功した可変圧縮比エンジン「VCターボ」だ。このエンジンの採用によってあらゆる速度域で回転数を抑えられるとともに、高剛性ボディと徹底した遮音構造で圧倒的に静かな走りを楽しめる。
4WD制御技術「e-4ORCE」は、前後2基の高出力モーター、左右のブレーキを統合制御することで、4輪の駆動力を最適化し、ラフロードや滑りやすい道での走破性を高めるとともに、日常使いでの扱いやすさや楽しい走り、快適な乗り心地を実現してくれる。
エクステリアデザインは、上段にポジションランプとターンランプ、下段にメインランプを配置した2階建て構造を採用し、個性と存在感、SUVならではの力強さを主張。インテリアでは、コンソール部分を宙に浮かせたブリッジ構造のセンターコンソール、高級感のあるトリム素材、先進的な12.3インチのアドバンスドライブアシストディスプレイ、同じく12.3インチのセンターディスプレイ、10.8インチの大型ヘッドアップディスプレイなどが装備され、先進性と高級感では、歴代モデルとは比較にならない仕上がりぶりだ。
ひとことでいうならば「大人になった」
日産によると、新型エクストレイルは、「初代モデルからのDNAである「タフギア」を継承しつつ、新たに「上質さ」を加え、全く新しいSUVへと生まれ変わった」という。あくまでもタフギア感は残しているとしているが、外観からは歴代モデルのタフギア感はあまり感じられない。
たしかにDピラーに隠された「X」のモチーフや防水シートの設定、ディーラーオプションで防水仕様のラゲッジトレイが用意されているあたりに「タフギア」の片鱗は感じられるが、ラゲッジスペースの写真には汚れたマウンテンバイクではなくゴルフバッグが積載されているし、時代が違うとはいえ価格も319万8,800円〜と、落ち着いたファミリー世代にターゲットが移っているように思える。まるで、エクストレイルもユーザーとともに歳を重ねて、大人になったかのようだ。
もちろん、憧れの的になるようなプレステージ性をもっているかというとそこまではなく、先進技術でカーライフをより豊かにするモデル、と表現するにとどまる。「フラッグシップSUV」とよぶには、まだ足りない部分の多いエクストレイルだが、高級SUVとしてはふさわしい実力を兼ね備えているといえるだろう。
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仮にフラッグシップSUVを目指すならば、パワートレインをプラグインハイブリッドへと置き換え、21インチタイヤを装着した「ラグジュアリースポーツ」を追求した最上級グレードを期待したいところ。「e-POWER+VCターボ」という日産の新兵器を搭載した新型エクストレイルは、日産の電動化戦略においても重要な役割を担っている。ミドルクラスSUVという激戦区で戦う新型エクストレイル。今後の活躍が楽しみだ。
【画像ギャラリー】成長したなぁ… 初代T30型エクストレイルと新型(4代目)T33型エクストレイルを見比べる(19枚)画像ギャラリー投稿 新型エクストレイル売れてます!! でも何か…遠いものになった気が…初代からの成長譚 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。