トヨタ「ハイエース」と共に、「日本の働くバン」として活躍し続けている、日産「キャラバン」。広く使い勝手の良い荷室空間と、存在感のあるエクステリアが魅力で、仕事の相棒としてのみならず、レジャーや趣味を楽しむユーザーからも支持され続けている。
5代目となる現行モデル(E26型)が登場したのは2012年6月のこと。すでに10年が経過していることから、そろそろ次期型の姿が見えてきてもよいころだ。次期型キャラバンの予想と展望について、考察しよう。
文:吉川賢一
写真:NISSAN、TOYOTA
「最新顔」にしたマイチェンも、効果はなし
キャラバンは、2021年10月のマイチェンでまずガソリンモデルがスキンチェンジを行い、2022年2月にはディーゼルモデルがガソリン車同様のスキンチェンジとともに、三菱製の2.4Lクリーンディーゼル(4N16型)へと変更するマイナーチェンジをうけている。また、ガソリンモデルのマイチェンのタイミングで、車名が「NV350キャラバン」から、約9年4ヶ月ぶりに「キャラバン」へ復帰した。
(ディーゼルモデルのエンジン変更以外の)マイチェンの内容は、フロントグリルをナバラやフロンティアといった日産の海外向けSUVが採用を始めた「インターロックグリル」へと刷新したほか、フロントバンパーも変更、グリルに付いたNISSANロゴも新形状とした。インテリアには、新たにファインビジョンメーター(5インチTFTディスプレイ付)を採用。ステアリングは新形状のD型ステアリングホイールとし、シートトリムは生地を刷新して質感を大幅に向上させている。
また、インテリジェントエマージェンシーブレーキを全車標準採用(全車サポカーS<ワイド>の対象になる)し、「インテリジェントルームミラー」をEXグレード以上に標準装備、「インテリジェントアラウンドビューモニター」(EXグレード以上に標準装備)の機能性も向上させている。さらに、トランスミッションを5速ATから7速ATに多段化したことで、燃費と高速走行中の静粛性も改善した。
しかし、ここ数か月のキャラバンの販売台数は月販1000~1500台といったところ。マイチェンの前も同程度であり、マイチェンの効果は薄かったといわざるを得ない。ライバルのハイエースはその約4倍の5000台は売れており、ディーラー数の差を考慮しても、善戦はしているが、ライバルの牙城は崩すには程遠い状況。ハイエースよりも商品力が高いわけでもなく、仕方のない結果であろう。
現行型キャラバンに求められるのは「軽量化」
年間で平均5万km以上も走るのが当たり前の商用車は、小まめなフルモデルチェンジよりも、耐久性が高いことや壊れてもすぐに直せること、そしてランニングコストがリーズナブルであることが求められる。毎日ガシガシ使っても丈夫で壊れる心配もなく、たとえ壊れても安く修理ができて、いつまでも乗り続けられる。こうした要素で選ばれる商用車は、乗用車のように、きびきびしたハンドリングや豪華絢爛な内外装にする必要はない。アフターパーツでカスタムする人は多いが、カスタムを楽しむためには、ベースは質素であるほうがいいかもしれない。
この「耐久性が高くて、修理しやすく、維持費が安い」という点をライバルであるハイエースと比較したとき、現行キャラバンに足りていないのは、「維持費」に関わる燃費性能だ。
現行キャラバンの燃費は、2.4LディーゼルターボがWLTC燃費で11.3km/L、2.0Lガソリンが同8.5km/L、2.5Lガソリンが同8.3km/L。しかしライバルのハイエースは、ガソリン車が9.3km/L、ディーゼル車が12.5km/L。前述したように、キャラバンは、今回のマイチェンで7速ATとし、ライバルである6速ATのハイエースよりも燃費は有利になっているはずなのだが、勝てていない。
クルマを道具としてみるならば、燃費はとてつもなく重要な要素だ。WLTCモード燃費で1.0km/Lも離されているようでは、たとえ実燃費は変わらなかった(荷物の積載によっていくらでも変わる)としても、「技術力の差」があるように見えてしまう。キャラバンのような商用モデルでは、一般的な乗用車のように、e-POWERやプラグインハイブリッドにするなど、パワートレインの変更で燃費向上を目指すことは考えにくい。となると、キャラバンが次期型で達成しなければならないのは、燃費性能向上を達成するための「軽量化」だ。
もちろん、軽量化などという基本的な対策は、すでにかなり織り込み済みのはず。ここからさらなる軽量化となると、技術やコストなど、突破しなければならない課題が山積みとなるだろう。しかし、ここでハイエースとの差を縮めておくことは、今後のキャラバンにとって重要なこと。生みの苦しみはあるだろうが、キャラバンの今後を考えるならば、乗り越えなければならない壁だ。
欧州日産の商用車に切り替わることはない
日産の商用バンといえば、「インタースター」と「プリマスター」という新モデルが、欧州で登場している。これまでのNV400とNV300の後継モデルだ。このインタースターとプリマスターが次期型キャラバンでは?? という噂もあるが、筆者は、それはあり得ないとみている。
日本市場で販売されている4ナンバーサイズのキャラバンは、4695×1695×1990(全長×全幅×全高mm)と欧州日産のバンよりもひと回り小さく、スーパーロングボディ(最長5230mm、車幅1880mm)であっても、プリマスターのほうが車幅は76mmも大きい。インタースター(全長5048mm、全幅2070mm、L1)にいたっては190mmも幅が広くなる。日本では、この2モデルは、相当大型なバンに見えるだろう。
日本で活躍しているキャラバンやハイエースは、全幅を1700mm未満に抑え、最小回転半径5.2m(ハイエースは5.0m)とコンパクトカー並の小回り性能を誇る。このサイズ感こそが日本で商用バンとしてもっとも使い勝手のいいサイズ感であり、海外製のバン(しかもルノー開発のOEM車)のおおらかな車幅は、日本市場で受け入れられない。
デザインは欧州チックでカッコよいのだが、やはりキャラバンは、いまのサイズ感でなければならない。次期型でどれだけの時代に沿った進化を積み込んでくるか、キャラバンの今後に期待している。
【画像ギャラリー】日本の「働くバン」の2強対決!! トヨタ「ハイエース」と日産「キャラバン」の現行モデル(21枚)画像ギャラリー投稿 いつ出る? どうなる?? 日産新型キャラバンが守らなければならない基準 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。