ダイムラートラックの大型長距離EVトラック「メルセデス・ベンツ・eアクトロス・ロングホール」が、ドイツ「IAA Transportation 2022」の開幕前夜に世界初公開された。
「欧州の長距離輸送業務の6割」を占める一運行距離500kmに対応できる航続性能を実現しており、ゼロエミッション商用車として普及可能な性能を確保した。
ダイムラートラックでは、23年に輸送企業における実証試験を行ない、24年から量産を開始する計画だ。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
可能性が高まった「大型長距離EVトラック」
公開された「eアクトロス・ロングホール」は4×2セミトラクタで、駆動軸に直接モーター2基を組み込んだ電動アクスル(eアクスル)は、連続出力400kW(544ps)・最高出力600kW(816ps)以上という高出力を発揮する。
高電圧バッテリーは、ダイムラー最新電気トラックが採用している中国・寧徳時代(CATL)製のリン酸鉄リチウム(LFP)電池だが、3基搭載するバッテリーパックの総容量は600kWh以上で、「eアクトロス300/400」よりさらに大容量タイプが用いられている。
LFP電池には耐久性が高いという特徴があるが、「eアクトロス・ロングホール」用LFP電池はさらに「長寿命」「高エネルギー密度」を特徴とし、1メガワット級の大容量充電システムに対応できる能力がある。同システムを用いた場合、バッテリー充電率(SOC)20%→80%までの充電が30分以内で済むという。
さらに、ディーゼル・アクトロスと同等の「10年間・120万km走行」という耐久要件を満たしていることも、大型トラックに適した特徴となっている。
量産車デザインの方向性
「eアクトロス・ロングホール」は、現行アクトロスをベースとしながら、24年から生産開始予定の量産モデルを示唆するデザインとなっている。
フロントパネルで最も広大なリッドパネル部は、なんとグリルレスとした上でスリーポインテッドスターを頂くという、電動トラックならではの造形となっている。
そのかわり、特徴的な形状のヘッドライトを強調するLEDデイタイムランプを装備し、わずかな開口部を象ったLEDストリップライトを備えることで、従来のキャブオーバー車とは違った、新しい差別化を試みている。
そして、24年の量産モデル投入時には、キャブコンポーネントをディーゼル車と共有しながらも、さらに空気抵抗を低減させる造形を施すなど、「eアクトロス・ロングホール」専用のスタイリングになりそうだ。
第5輪カプラはもっと後ろ側?
出品車はホイールベース4000mmという、4×2セミトラクタとしてはかなり長いシャシーに、第5輪カプラ(牽引装置)を架装したものである。これは、高電圧バッテリーの搭載数に関係したものといえそうだ。
その第5輪カプラの位置については、「本来ならもう少し後側」とのことで、実際のトレーラ牽引に合わせたものではないという。「eアクトロス・ロングホール」は、あくまで大型EVセミトラクタの方向性を打ち出すものなのだ。
なお、「eアクトロス・ロングホール」は、2020年9月に開発を明らかにしていたもので、「一充電航続距離500km」「24年からの量産開始」は、その当時から計画目標だった。
ダイムラートラックのマーティン・ダウムCEOは「大型長距離トラックは、燃料電池車(FCEV)とバッテリーEV(BEV)で市場展開していく」と話し、2種の電動アクトロスの普及をめざす考えである。
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