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車載ディスプレイはデカ過ぎ!! どこまで大きくなる? 実は大きさに規制はなかった……

 昨今の新型車を始め、CASE時代に合わせて、車載ディスプレイの大型化が進んでいる。従来まではカーナビの地図表示やカーAV機能がメインだったが、現在はエアコンやADASの各種設定まで多岐にわたっている。

 一方でディスプレイの大型化に対してうっとうしいと感じている人もいるのも現実だろう。今後のディスプレイに関して法規制の流れなども含めその未来像を解説する。

文/高山正寛
写真/トヨタ、日産、テスラ

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■専用デザインにより従来の枠組みが崩れた日

トヨタ ハリアーの12.3インチ高精細TFTディスプレイオーディオ

 現在のカーナビに代表される「大画面化」のトレンドは多くの人が理解していると思う。物理的にも地図の大型化は視認性やスイッチ類の操作性も向上させることが可能だ。

 これを実現したのが、自動車メーカーがこれらをインフォテインメントと一体で開発したこと。従来までの2DINにカーナビをインストールするスタイルはデザイン側からしても全体のイメージ(コンセプト)を損ねるし、何よりもそれまでのDIN規格ゆえに大画面化は難しい。

 昨今は市販カーナビでディスプレイを本体から独立させる「フローテング構造」で大画面化を実現させたモデルが多く発売され人気だが、これはあくまでも2DINユーザーに対しての提案だ。

 自動車メーカー側としてはあくまでもディスプレイ(インフォテインメント)もインテリアのひとつ、という考えで設計を行っている。つまり従来までの枠組み自体が大きく変化(終わり)しているひとつの証とも言える。

■大画面化や情報量が多すぎるのでは?

テスラ モデルSはダッシュボード中央部に縦長ディスプレイを備えてデビューしたが、2021年にマイナーチェンジを受けてディスプレイが横長へと変更。シネマティックディスプレイと呼ばれる17インチのタッチスクリーンとなった

 一方でディスプレイの大型化は人によっては「うっとうしい」と感じる場合もある。

 世に送り出される新型車はとにかく大画面の傾向にあることはいまさら説明の必要はないだろう。

 従来までの横型から縦型へ。テスラ・モデルSの17インチ、プリウスPHVの11.6インチなどはタブレットをはめ込んだようなイメージ、もちろん横型も前述したような専用設計であることからも新型クラウンには12.3インチの大画面が装着されている。

 ホンダeのような5つのディスプレイを並行に配置したワイドビジョンインストルメントパネルも斬新な発想と言える。

 また実際の市販には至らなかったが中国のバイトンの「Mバイト」には世界最大となる48インチ幅のワイド液晶スクリーンが搭載(予定)だった。

 これらの例を見るまでもなく、専用設計による大画面化は従来までのカーナビ&カーAVだけではなく、エアコンやADASの設定、また切り替えによっては常時燃費などの走行情報がめまぐるしく動き表示される。

 全てがそうではないにせよ、視線移動なども考慮するともう少しシンプルのほうが良いと感じるユーザーもそれなりにいる。

 もちろん、メーカーもその辺は考えており、ディスプレイの表示項目を減らす「シンプルモード」のような設定も行っているが、悲しいかな筆者も含め「せっかく情報量の多いディスプレイ付きのクルマ買ったんだから沢山表示したい」という感覚が襲ってくるのもひとつの事例だろう。

■実は鍵はディスプレイではなかった……

新型トヨタ クラウンのヘッドアップディスプレイ。運転シーンに合わせて「フル/スタンダード/ミニマム」の3つに切り替え可能な表示モードを用意

 今回の件も含めて、ディスプレイに関しての上限はあるのかを国土交通省自動車局に聞いてみた。基本的にはディスプレイの大きさには上限はない、とのこと。で、ここでわかったことはこれまでのディスプレイではなく、重要なのは搭載車が増えてきているHUD(ヘッドアップディスプレイ)の法制化だった。

 HUDはメーカーによって呼称が異なるが、大まかに言えば、窓ガラスに速度などの情報を投影するシステムだ。今回のテーマであるディスプレイの大型化による視線移動の問題や情報量の過多などにより、見方によっては事故が増える可能性もある。

 そこで注目されるのがHUDなのである。

 初期の頃に発売された車両に設定されていたHUDは単色で速度のみ、というものも存在したが、昨今ではカラー化はもちろん、速度だけでなく、ナビゲーションとの連携による「ターン・バイ・ターン(矢印)表示」、そしてADASの動作状況など項目自体は増え続けている。

 すでにこの段階でも情報量は多いのにこのまま技術革新という名の元に情報量を増やしていくと今度はHUDを凝視して事故を起こす可能性すらある。

 令和4年6月22日に策定された道路運送車両法の保安基準等による一部改正によれば、

 「乗車定員10人未満の乗用車の前面ガラス等に投影される、運転者による認知を支援するための視界アシスタント(FVA:Field of Vision Assistant)情報について、運行中に表示してよいものを運転に関連する情報に限る等の明確化を行う」

 とある。また新型車は令和5年9月1日より、継続生産車は令和6年9月1日から適用されると告示されている。

 わかりやすく言えば「HUDのような情報を表示しアシスタントする機能にも運転中に表示してよいものを限定する」ということである。

 つまり今回のテーマで言えば、現在のディスプレイはある程度一定の大きさまで拡大し、コンパクトカーなどにも十分普及した後は、運転中の情報を確認するというよりは各種設定などを行うメインコントロール機能に特化する(走行中は操作を制限する)のではないか。

 実際の運転時にはHUDのようなシステムや音声操作などを活用することで視線移動を抑え、将来の自動運転時にも注意散漫にならないようにしていくことが予想される。

 ただ、それでもこのトレンド自体はまだまだ続くはず。意外と知られていないが、ディスプレイはオフにすることもできる。もし過去、運転中にディスプレイを見過ぎて「ヒヤリハット」状態に陥った経験のある人はオフにして取得できる情報量を抑えるのも良いかもしれない。

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