ホンダから登場した待望の新作「ダックス125」にさっそく試乗。スーパーカブC125よりスポーティで、モンキー125より安定感に優れた独自のキャラクターを確立していた!
さらに、ホンダ125ccレジャーバイクの中で最も優れたタンデム性能も自慢。愛らしいデザインながら、走りが楽しい1台に仕上がっていた。
文/沼尾宏明、写真/市本行平、HMJ
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気軽に楽しめる愛犬は、余裕がありリラックスしたライポジ
7月の発売予定から2か月延期となり、9月22日より販売されたホンダ ダックス125にいち早く試乗する機会を得た。
ダックス125は、1969年に登場した初代ダックスホンダ(50cc)の「胴長短足」フォルムを現代に甦らせたモデル。最大の特徴であるスチールプレスのモノコックフレームも現代の技術で再現している。
開発コンセプトは「ファミリー&レジャースニーカーズ」。バイクと離れていた若い家族や、バイクに乗ったことないユーザーにも家族の一員として気軽に楽しめるバイクを狙った。
実物は、さすがに昔のダックスより明らかに大きくなっているものの、独特の愛らしい雰囲気はしっかり受け継いでいる。
跨ってみると、自然に手を伸ばした位置にハンドルがあり、ヒザの曲がりも緩やか。シートはフラットで前後に長く、ライディングポジションの自由度が高い。兄弟車のモンキー125やスーパーカブC125より余裕のあるライポジで、身長177cmの筆者にはよりシックリくる。
クラッチ不要でイージーながら中低速がパワフル、野生の牙もアリ!
走りで感心したのは、中速域での力強さと安定感の高さだ。
心臓部の123cc空冷単気筒は、スーパーカブC125由来のエンジン。AT限定免許で運転できるクラッチレバー要らずの4速自動遠心クラッチを搭載する。
発進時の加速感は125らしいマイルドさながら必要十分。回転上昇とスピードの乗りは良好で、2速でスロットルを開けていると簡単にレブリミットに当たってしまうほど。40km/h程度の中速域から一段と元気になり、サウンドも力強くなる。“小型犬”とはいえ野生の部分をしっかり感じ取ることができた。
ダックスは、C125と同系のエンジンながら、独自の吸排気系とセッティングで出力特性が変更されている。C125と比べると60km/h前後での伸び感はマッタリしているが、中速域でのパワーはダックスが上回っているのだ。
かといって飛ばさずに単気筒のトコトコしたフィーリングを味わいながら、まさしく愛犬と散歩するような走りも楽しい。マッタリも元気も許容する絶妙なパワー設定だ。操作に気をつかわずに済む自動遠心クラッチなので、周囲の風景を楽しむ余裕まである。
コーナリングは安定感抜群で意外やスポーティ、小回りも得意だ
そして走りの安心感が高い。独自のモノコックフレームは適度に剛性を抜いた設計とのことだが、かなりカッチリした感覚で、車体の安定性に貢献している印象だ。
サスはフロントをグロムから流用、リヤはストロークなどを伸ばして2段レートのスプリングを採用した専用品。ソフトながらも適度なコシとストロークがあり、ギャップでの衝撃をかなり吸収してくれる。直進安定性も高く、125クラスとしては乗り心地が良好。郊外の道路を60km/hで巡航するシチュエーションで実に快適だ。
コーナリングも楽しい。スッと体重移動するだけで自然に曲がっていく。ギリギリ前へ座ればヒザでバックボーンフレームを押し込めるとはいえ、さすがに過激な走りは難しい。しかし車体に剛性感があり、ブレーキング~旋回中~立ち上がりと常に安定している。パワフルな中速域と相まって意外なほどスポーティで、通常のモーターサイクルに近い感覚でライドできる。
加えて小回りも得意だ。ハンドル切れ角が42度もある上に車体が軽く、足着き性も良好なので、Uターンは何ら不安がなかった。
2時間ほど千葉県の郊外を走ったが、シートに前後長があり、ポジションを変えやすいため、お尻が痛くなることもなかった。街中から郊外へのショートツーリングまで幅広いステージで楽しめるのだ。
ただし燃料タンク容量が3.8Lと小さめなのはタマに傷。今回の試乗で燃費は計測できなかったが、WMTCモードでリッター65.7kmを記録しており、理論上の航続距離は249.66kmもある。簡単にガス欠はしないものの、グロムやモンキーよりは航続距離が短いのでご注意を。
新感覚、125とは思えないタンデム性能はダックスの大きな魅力
「ファミリー&レジャースニーカーズ」を謳うダックスだけに、しっかりタンデム性能も造り込まれている。
後席の座面は、狭すぎず広すぎない面積が確保されている。男性二人で試してみると、拳1つ分程度は前後ライダーの間にスペースがあり、密着するほど狭くはない絶妙な距離感だ。
タンデムステップはフレームマウントで、位置も快適性も優秀。そしてシートを囲むように配置されたグラブバーも握りやすい。125にしては総じて快適な部類だ。
タンデムで運転してみても許容範囲だった。小排気量車で二人乗りすると、パワー不足やサスの沈み込みなどで挙動の変化が激しく、運転しにくいのが常。ダックスもさすがに変化はあるが、元気な低中速域パワーとタンデムも考慮したサス設定により、かなり走りやすい。ショートツーリング程度なら全く問題ないだろう。
サスはソロでも適度に動きながら、タンデムでイニシャル変更をしなくても違和感のない設定としているのだから見事。125クラスでこれほどタンデムが快適なバイクも珍しい。
自動遠心クラッチは、ビギナーにとって変速時にギクシャクしにくい上に、クラッチレバーなしで変速できるため、タンデム時も安心感が高い。
ベテランはマニュアルの方がスムーズだろうが、自動遠心クラッチでも変速時にペダルを踏み込んだままにしおくとクラッチが切れた状態となり、変速時のショックをより緩和することが可能だ。
モンキーとスーパーカブC125のいいとこどり、独自の立ち位置が光る
ここからは兄弟車と比較したい。ホンダ125ccレジャーバイクは、5速マニュアルミッション+前後12インチホイールのグロムとモンキー125、そして4速自動遠心クラッチ+前後17インチのスーパーカブC125、CT125ハンターカブに大別できる。ダックスは、4速自動遠心クラッチと前後12インチという両者の特徴を併せ持つ。
5車の中で最もスポーティと筆者が考えるのはグロム。5速ミッションでタンクをホールドでき、通常のモーターサイクルと同じ感覚で走れるからだ。次点がモンキーとなる。
スーパーカブC125とCT125ハンターカブは、前後17インチでロングツーリングが得意。前者はエンジン特性が高速寄り、後者は低中速域にパンチがある設定でオフロードに強い。
ダックスの立ち位置は、モンキーとC125のいいとこどりと感じた。
まず車格が2車の中間で、ホイールベースはグロムと同じ1200mm。モンキーより55mmロングで、スーパーカブC125より45mmコンパクトだ。
ダックスは高速域での安定感こそC125に一歩譲るものの、スポーティさで上回る。まずホイールベースがC125よりコンパクト。C125のアンダーボーンフレームに対し、ダックスのプレスモノコックフレームはより剛性感が高く、ダイレクトな旋回性と中速域のパワフルさでダックスに軍配が上がる。
モンキーと比べると、ダックスはクラッチレバー不要で気軽な上に、車体の安定感や乗り心地が優秀でよりロングラン向き。5速ミッションでコンパクトなモンキーは俊敏さが魅力だが、コーナリングでダックスの素直さが光る。
2車ともに12インチながら、モンキーはフロント=120/80-12、リヤ=130/80-12と偏平率の高いブロックパターンタイヤで、曲がる際に若干ゴロッとした感触や粘りがある。
一方、ダックスはフロント=120/60-12、リヤ=130/60-12のロードタイヤを履く。スルッと素直かつスムーズに倒し込むことができ、旋回中の安定感も高い。
そしてダックス随一の個性がタンデム性能だ。
そもそもモンキーはタンデム不可。C125とCT125は2人乗りOKだが、リヤキャリア仕様なので別途タンデムシートが必要だ。さらにタンデムステップはスイングアーム直付けとなる。グロムはタンデムシートを備え、ダックスに次ぐタンデム性能を持つが、座面は狭く、ほぼ緊急用と考えていい。
ホンダの125兄弟は、キャラが被らないよう絶妙な棲み分けを実現している。5車もラインナップしながらシッカリ個性を確立させているのだから驚くほかない。ダックスの登場によってホンダ125クラスの選択肢が確実に広がった。
ソロはもちろん、手軽に子供とショートツーリングしたい人にもオススメ
ダックス125は、気軽に乗れるセカンドバイクとしてオススメだが、十分メインの1台としても活躍できる万能さを持つ。
ソロで街乗りやツーリングを楽しめるのはもちろん、小学生程度のお子さんを持つライダーにもオススメ。お子さんとタンデムでショートツーリングに出かけたら、いい思い出になるし、きっと家族からの株が上がると思う。
原付二種の125ccクラスは、ファミリーバイク特約などの任意保険が使え、燃費も優秀のため、ランニングコストが良好。その上、ダックスはカワイイのでパートナーもサイフのヒモを緩めてくれる……かも!? ペットの“忠犬”を飼うように、生活が彩り豊かになる――そんなフレーズで家族を説得してみては?
※ダックスは難産だった!? 別記事の「開発者インタビュー」もぜひご覧ください(近日公開)
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投稿 愛しのダックス再び!! これは買いだわ!! ダックス125速攻徹底試乗 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。