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 ビルの壁面や自動車ボディの曲面へ設置可能な次世代太陽電池(PV)の社会実装が現実味を帯び始めている。国内で大規模太陽光発電所(メガソーラー)の適地確保が難しいなか、さまざまな場所に設置できるPVは、再生可能エネルギーの普及拡大を後押しする存在となりそうだ。

 次世代PVで今、最も注目を集めているのがペロブスカイト太陽電池(PSC)。2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授が開発した。吸収層がペロブスカイト結晶で構成されているのが特徴。塗布で層を形成可能で、軽量かつ柔軟なPVに仕上げられる。

 PSCは、さまざまな企業が研究開発に取り組んでいる。フィルム型PSCの開発を進める積水化学工業は、業界に先駆けて10年間の屋外耐久性を確認。30センチメートル幅のロール・ツー・ロール製造プロセスを構築した。JR西日本が開業を進める大阪駅北側の再開発地区「うめきた」への提供を決めるなど社会実装を目前としている。また京都大学発のスタートアップでPSCの開発を行うエネコートテクノロジーズ(京都市上京区)は、三菱マテリアルや日本ガイシなどの出資企業とも連携を進めながら、量産技術の確立に力を注いでいる。

 PSC以外にも有望な次世代PVは存在する。複数の化学メーカーが参入を計画する有機薄膜太陽電池(OPV)も、その一つ。PSC同様、軽量でフレキシブル性に優れるため、曲面に設置が可能。電力小売りなどを手掛けるLooop(東京都台東区)がこのほど、OPV製造の独ヘリアテックと日本でのパートナーシップを締結。22年内の販売を計画している。

 ドイツが7月にロシアからの天然ガスの主要パイプラインを一時停止するなど、ウクライナ侵攻によって世界的なエネルギー危機が引き起こされている。いつ何時発生するか分からない自然災害と相まって、自国内でエネルギーを安定的に供給できる体制づくりが求められる。

 地熱や火力、風力、原子力と、さまざまなエネルギーが存在するが、太陽光は規模を問わず、しかも比較的安価で導入できる。太陽光発電協会の鈴木伸一理事(エクセル社長)が「最強の分散化電源」と語るように、太陽光発電の普及はエネルギーの安定供給体制につながる。

 東芝の試算によると、同社開発によるエネルギー変換効率15・1%のPSCを東京23区内の建物屋上と壁面の一部に設置すると、原発2基分の発電が可能という。化石燃料への依存を抑えた、自給自足のエネルギー社会実現のためにも、あらゆる場所にPVの適用を進めるべきだ。

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