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 善政で名高い小国の王が、脅威に感じた隣の強国の王に騙され家来ごと捕まってしまう。小国の王は強国の王妃に救いを求めるが、王妃は強国の王が隠し持っているキツネ数千匹分のコートと引き換えに助けるという。小国の王は盗みに長けた家来に依頼。見事逃げ出すことに成功する▼国境の関所まで辿り着くが、真夜中のため固く閉ざされている。夜明けまで足止めされると追っ手に捕まってしまう。小国の王は家来の中にニワトリの鳴き真似が上手い者がいることを思い出す。家来が鳴き真似をすると、周囲のニワトリが一斉に鳴き出し、朝と勘違いした門番に扉を開かせることに成功。無事帰還する▼紀元前100年前後に司馬遷が記した「史記」に登場する孟嘗君列伝から引かれた鶏鳴狗盗。近年、ダイバーシティーが声高に叫ばれているが、2000年以上前から多様な人材を生かす重要性は変わっていない。故事では、つまらない技能を持つ人というネガティブな解釈をされている。しかし時代がどれほど変わろうと、人は皆それぞれ光る才能を持っているという本質は変わらないのだ▼「夜をこめて鳥の空音は謀るともよに逢坂の関は許さじ」。清少納言は孟嘗君列伝から引用し、大納言藤原行成とのやり取りでこの和歌を詠んだが、こちらもなかなか味わい深い。(22・9・26)

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