次世代の医療イノベーションを担うベンチャー、スタートアップの輩出を目指し、厚生労働省が本格的な支援に乗り出してから5年。同省は今夏、この間の取り組みを振り返って今後に生かすための検討会を開催し、課題の洗い出しなどを行った。新たな医薬品や医療機器、サービス創出の担い手としてベンチャーやスタートアップへの期待は高まっており、政府による支援も一段と重みを増している。省庁間の縦割りを排した、より実効性のある取り組みが求められる。
有識者会議が2016年にまとめた提言書に基づき、厚労省が「医療系ベンチャー・トータルサポート事業」(MEDISO)を立ち上げたのは18年のこと。「医療系ベンチャーの底上げ支援」「有望企業の輩出支援」の2つを柱に進めている。具体的内容は企業相談、セミナーの実施、起業プログラムの開催、知財戦略の策定支援、人材交流・マッチングなど。企業相談の中身も法規制、資金調達、事業計画、知財、マーケティングなど幅広くカバーしている。
経済産業省など他省庁もベンチャー支援の取り組みを行っているが、MEDISOの場合、厚労省の事業という強みを生かし、薬事規制や医療保険制度に関する相談を中心に引き受け、差別化を図っている。内容に応じて経産省などの相談窓口に取り次ぎ、マッチングや資金調達先の確保などにもつなげている。18年2月のスタート以降、相談実績は900件を超え、医療系ベンチャー創出に一定の成果を収めているとしている。
5年間の活動を総括して、今後の方針に「他機関連携の強化」「民間機関との連携」「厚労省事業であることを生かした支援」-の3つを挙げた。例えば他機関との連携については、協力を進めるための枠組み構築、公的ファンディングエージェンシー応募の支援強化などを示した。横のつながりを強めることで、多面的なサポートに結び付けるのが狙い。また新規医薬品・医療機器の実用化を図るうえでカギを握る、薬事規制や保険償還への対応強化も欠かせないとして、厚労省ならではの特徴を生かした効果的な支援策を展開すべきとした。
政府は今年を「スタートアップ創出元年」と位置付けて「スタートアップ育成5カ年計画」の年内策定を目指しており、厚労省としても、さらに力を入れる考え。その際、各省庁が持ち味を発揮する格好で連携することが、世界で通用する医療系ベンチャー、スタートアップ創出には必要だろう。ベンチャーキャピタル(VC)をはじめ民間支援機関との連携を、どう進めていくかも大きな課題となる。
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