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 教習所では「ハンドルは、9時15分あたりの位置を外側から持って、両手で操作する」という内容の指導がされています。しかし、道路を走行しているクルマを見ると、教習所では教えることのない自己流のハンドル操作をしているドライバーを見かけることがあります。

 運転に慣れてくるとついやってしまう「ハンドルの内掛け」や「片手運転」は、ダメな操作方法と言われますが、なぜダメなのでしょうか? この疑問について、教習所での指導経験がある筆者が解説します。

文/齋藤優太
写真/ベストカー編集部、Adobe Stock

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■なぜ教習所で教えられていないハンドル操作をやってしまうのか?

初心者のうちは慎重に、教習所で習ったことを忠実に実践して運転するので、両手でハンドルを握って正しい姿勢で運転する。しかし慣れてくると自己流になりがちだ(taniho@Adobe Stock)

 なぜ、内掛けハンドルや片手運転など教習所で教えることがないハンドル操作をやってしまうのでしょうか。それは、運転経験を積んで、運転に対する恐怖心が少なくなり、両手じゃなくても危なくないという油断が主な理由だと考えられます。

 運転操作に対する恐怖心がなくなる事例としてわかりやすいのは自転車です。初めて自転車に乗れるようになった頃は、バランスを崩して転んでしまうかもしれないという恐怖心などがあるため、両手でハンドルを握って慎重に運転することがほとんどです。

 しかし、運転経験を積んで、バランスのとり方や操作方法に慣れると、片手で運転できるようになったり、両手を離してもバランスを取れることがわかったりします。(自転車の手放し運転は安全運転義務違反となるため、片手運転〈手信号をするときを除く〉や手放し運転をしないようにしてください)

 この自転車の例えは、車の運転にも当てはまるでしょう。経験を積んで運転に慣れたり、他の人の運転を見たりすると、教習所で教わっていない方法でも運転できることがわかり、内掛けハンドルや片手運転などの操作をするようになると考えられます。

 では、動画サイトやSNSなどで見かけることがある内掛けハンドルや片手運転はなぜダメなのでしょうか。

■内掛けハンドルがダメな理由

ハンドルの内側に手をかけて回す内掛けハンドルは「ハンドルを戻す」という動作がしにくいので咄嗟の操作ができない可能性がある。またエアバッグが開いた場合ケガをする危険もある(Marko@Adobe Stock)

 内掛けハンドルがダメな理由は、突発的な操作がしにくいことと、エアバッグが開いたときに怪我をする危険性が高いためです。

 ハンドルの内側に手をかけて回す内掛けハンドルは、切り足すときの動作がしやすいと言えます。しかし、内掛けのままハンドルを戻すという動作はしにくく、飛び出してきた人や自転車、動物などの緊急回避ができない可能性が高いです。

 また、ハンドルの内側に手をかけているときにエアバッグが開いた場合、腕を骨折したり、顔面に腕を強打したりする可能性があります。内掛けハンドルをすると、乗員を守るためのエアバッグが怪我の原因になってしまうこともあるのです。

 現在、多くの車はパワステになっているため、ハンドル操作をするときに重ステのような力は必要ありません。また、ほとんどの車に乗員の身を守るためのエアバッグが装備されています。パワステの普及やドライバーを守る安全機能を正しく作動させるためにも、ハンドルの内掛けはしないほうがよいでしょう。

■片手運転がダメな理由

片手運転は緊急回避が遅れたり、ふらつきの原因となる場合があるのでNG。しかしMT車の運転や灯火の故障による手信号など「絶対ダメ」と言えない理由もある(metamorworks@Adobe Stock)

 片手運転は、ふらつきの原因になったり、緊急回避が遅れたりするなどの理由でダメとされています。ただし、片手運転を絶対にしてはいけないと断言することはできません。

 まず、片手運転がダメな理由について解説します。

 ハンドルを保持する位置や路面状況・走行している環境などによりますが、片手運転で走行するとふらつくことがあります。また、片手運転をしていると緊急回避が遅れたり、回避できなかったりする可能性が高いです。そのため、片手運転はダメとされています。

 次に、「片手運転は絶対にしてはいけないと断言できない」理由についてです。

 MT車を運転するときは、片手運転になる場面があります。MT車のギアチェンジをするときは、片方の手でハンドルを保持し、もう一方の手でシフトレバーの操作をします。そのため、MT車で片手運転になるのは仕方ないことなのです。

 ただし、シフトレバーに手を置きっぱなしにしていると片手運転という扱いになるため、ギアチェンジが終わったら、シフトレバーからハンドルへ手を戻しましょう。

 実は、片手運転をしなければならない場面があるのは、MT車に限った話ではありません。AT車でも片手運転をしなければならない場面があります。それは、灯火類の故障などにより手信号で合図をする場合です。手信号による合図をするときは、片方の手で合図をして、もう一方の手でハンドル操作をします。

 このように、MT車のギアチェンジや手信号による合図などがあるため、片手運転は絶対にダメと断言できないのです。

■ハンドル操作ひとつで交通違反になる可能性もある

ハンドル操作は、運転の試験のチェック項目のひとつ。また免許取得後はハンドル操作が適切でない場合に交通違反として検挙されることもある(Satoshi@Adobe Stock)

 ハンドル操作は、運転の試験のチェック項目のひとつです。また、免許取得後は、ハンドル操作が適切でない場合に交通違反として検挙されることがあります。そのため、ハンドルの保持や操作のクセは直しておいたほうが良いでしょう。

 警察庁が公表している「運転免許技能試験に係る採点基準の運用の標準について」によると、運転の試験においてハンドルやブレーキなどの装置を確実に操作しないなどの理由により、試験官が補助や是正措置を指示した場合、「安全運転義務違反」となり、危険行為として試験中止(一発不合格)になります。

 免許取得後は、道路交通法第70条「安全運転の義務」違反により検挙されることがあります。違反すると、点数2点、反則金9,000円(普通車)となるため、ハンドルの保持・操作不良などがないようにしなければなりません。

 条文には、「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と定められています。

 具体的な違反行為が明記されておらず、非常に曖昧な表現です。簡単に言い換えると、ハンドル操作やブレーキ操作などドライバーの不注意やミスにより、周囲へ危険を及ぼすこと自体が違反ということになります。

■自己流のハンドル操作は直すのが難しい

一度自己流のクセがついてしまうと、直すのが非常に難しくなる。逆に正しい持ちかた、正しい操作を心がけ、そちらをクセにしてしまうまで徹底しよう(fotofabrika@Adobe Stock)

 ハンドル操作は、いつの間にか自己流になっていることも少なくありません。

 内掛けハンドルや片手運転、ハンドルを保持している位置を変えずに小刻みにハンドル操作をする送りハンドル、カーブや交差点などを曲がった後に手を離しハンドルの反力を利用してスルスル戻すなど、操作のクセを直すためには、自ら意識して操作を変えていくしかありません。

 「意識することが直すこと」ということに対してさまざまな意見があると思いますが、車やバイク、自転車など乗り物の運転は、危険の意識や見つける意識などの「意識」が安全運転への第一歩となります。なぜ危険なのか、どのようなリスクがあるのか理解すれば、意識が改善し、運転操作も変わるでしょう。

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