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ライバル車・フリードを要する元ホンダディーラーからみた新型シエンタの変貌とは?

 2022年8月23日、トヨタは3代目となる新型シエンタを発売した。快適性・機動性・安全性の高さが注目され、すでに受注台数は約3万台と好調だ。

 モデル末期のフリードが、最新装備を搭載する新型シエンタに対抗できるのか。次期モデルで期待したい要素は何か。元ホンダディーラー営業マンである筆者が、販売現場目線で考えていく。

文/木村俊之、写真/TOYOTA、HONDA、ベストカー編集部、雨田芳明

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変わりつつあるコンパクトミニバンの選び方

オシャレカワイイ系のデザインとなった新型シエンタ。運転支援システムも旧型に比べて大幅に進化した

 新型シエンタは、ホンダ陣営にとって大きな脅威となるだろう。シエンタはコンパクトミニバンに必要な、デザインや安全性の高さというニーズを的確に捉えている。

 近年残価型クレジットが普及したことで、クルマの選び方は大きく変わった。自分だけの「特別なクルマ」を求めるユーザーが、以前より増えていると聞く。残価保証があり、ある程度リセールバリューを気にせずに、カーライフを楽しめるようになったことが最大の理由だろう。

 シエンタは女性に好かれる優しい顔立ちでありながら、男性も惹かれる欧州車のようなデザインに仕上がっている。ボディカラーも豊富で、流行のアースカラーも準備した。さらに、最先端の安全機能が備わっていることもシエンタの強みだ。シエンタを選べば、「クルマに乗る家族の安全」が一緒に手に入る。まさに、特別なクルマといいたくなる一台だ。

「オシャレなミニバン」として、コンパクトミニバンの中心的存在となるシエンタ。そんなシエンタに、フリードはどう対抗していくのだろうか。

大きくしなくても快適になる! シエンタが起こしたフル乗車革命

 コンパクトミニバンの欠点は、フル乗車時に窮屈さを感じることである。居住空間の快適性を上げることは、開発の大きな課題だ。

  新型シエンタは先代と比べ、ボディの長さや幅を変えずに、ニースペースを広げている。その秘密はシート背面の凹みにあり、足元に空間を作り出しているのだ。着座した際に、膝周辺が広くなると、そのクルマが広くなったような感覚を受ける。

 さらに、ラクな姿勢を維持できるよう、全高を20mm上げて座面を高くした。乗降性も高まり、快適性が大幅にアップしている。コンパクトミニバンの設計では、限られたスペースの中で空間を作ることが醍醐味(だいごみ)である。7人乗っても窮屈さを感じさせない新型シエンタには感服だ。

激戦コンパクトミニバンはどちらが優勢?! 新型シエンタ VS フリード

新型シエンタの3列目シートを格納した状態

 コンパクトミニバンの利便性はシートアレンジが豊富なところだ。なかでも3列目シートの使い勝手は注目ポイントである。

 3列目の収納方法は、新型シエンタは2列目シート下部に、フリードは跳ね上げが採用された。シートの出し入れ時に「手間」がかかるのはシエンタだ。3列目シートを動かす際には、同時に2列目の格納が必要となる。ここはフリードに軍配。

 しかし、コンパクトミニバンでは、そもそも3列目シートの使用頻度が少ない。これを念頭に置くと、3列目がダイブインにすることにより、荷室が広く使える利点は大きいと思う。また、跳ね上げ式の欠点である後方の視界の悪さも、シエンタでは払拭できるのだ。

 両者一長一短だが、ミニバンで重視したい荷室の利便性ではシエンタがやや優勢に思える。また、限られた装備の中で、室内空間をいかに快適にするかを考えるユーザーが増えているようだ。

 近年の猛暑から後席でも空調が欲しくなる。しかし、コンパクトミニバンではスペースや予算の兼ね合いでリアエアコンを装備しにくい。そのため、車内は広いが、車室後方には空調が行き届きにくくなる。

 そこで、シエンタに用意されたサーキュレーターが活躍するだろう。こうした配慮では、新型シエンタに軍配を上げたい。

打倒シエンタ! 次期フリードに期待したい装備とは

 次期フリードがシエンタに対抗するには、ミニバンの最重要ニーズである居住空間の向上がカギになるだろう。

 フリードには、シエンタでは設定されていない6人乗りキャプテンシート仕様がある。ウォークスルーができて乗り降りもしやすく人気も高い。いっぽうで、小さな子供がいるユーザーの検討からは外れることが多い。乳幼児のお世話をするときは、ベンチシートの方が利便性は高いのだ。

 キャプテンシートを左右にスライドさせて、ベンチシートのように使用できれば、ターゲットになるユーザー層は広がる。同様の機構はステップワゴンでも採用されているから、導入も可能だろう。また、ステップワゴン同様に3列目シートの床下収納が実装されれば、後方視界もスッキリする。再びシエンタの脅威となる存在になれるはずだ。

 フリード改良の肝となるのは、目新しい装備よりも、空間へのこだわりになるだろう。

 ブランドイメージがコンパクト化しているホンダだからこそ、次期フリードがどんな進化を遂げるのか楽しみである。シエンタとフリードの対決から、今後も目が離せない。

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