幼稚園バスでの園児置き去りに対する自衛手段としての記事には多くの反響をいただいた。それから間もなくは、テレビや新聞で海外の事例が多く取り上げられ、取り入れを検討する声もあがった。そんな中で、大人のヒューマンエラーを排除するためにアプリを作った事例を紹介する。画像ギャラリーではアプリの実際をスクリーンショットで詳報する。
文:古川智規(バスマガジン編集部)
現役パパが作ったアプリ
名古屋市の長屋印刷株式会社と富山市の合同会社Noop〈ヌープ〉が、幼稚園等のスクールバスを運行する団体向けに、無料のバス運行管理iPhoneアプリ「まもる」をリリースした。
開発者である長屋印刷の中川さんは4歳と6歳の娘がいる名古屋のパパで、Noopの林さんは9歳と11歳の息子を持つ富山のパパだ。
スクールバスにおける置き去り事故をニュースで見て、「パパとして何かできることはないか、命を守ることができるのではないか」という想いですぐに電話連絡を取り、無料アプリの制作やアプリの仕様、採算性は考えない方針がニュース配信30分後には決定したという。
この安全管理の仕組みづくりでこだわったのは次の4点だ。まず、スクールバスでの子どもの置き去りをなくすこと。次に、iPhoneさえあれば無料ですぐに導入できるようにすること。
さらに、先生やドライバーの方々など大人の行動管理で安全性を高める工夫をする。最後に、忙しい先生方のために運用に必要なアプリの操作時間をできるだけ短くすること。以上の4点だ
アプリでできること
このアプリでは先生やドライバーに後部座席まで移動すること促し、車内の子どもの置き去りを防ぐ仕組みだ。原点は大人が後部座席に移動する過程で、もし子供が座席にいれば自然に目に入り、置き去りを防げるという行動管理の発想だ。
大人が後部座席に移動して確認したことの証明に、後部座席から写真を撮りアプリにアップすることで特別な車載デバイスなしで確実に確認をする工夫を実装した。
実際の運用方法
運用方法は次の2つだけだ。まず園バスルートの運行時間を設定し、出発ボタンを押すことで、運行時間のタイマーが作動する。そして運転終了後に、後部座席に移動して写真を撮影しアップロードする。
出発ボタンを押した後に設定されたタイマーの時間内に車内の写真が撮影・アップロードされない場合は、確認未了の警告が当該団体内(幼稚園の職員等メンバー)の全ユーザー対して通知され、置き去り可能性の警報を発する仕組みだ。
一連の操作で大人を信用していないわけではないのだろうが、ヒューマンエラーと不正を防ぐ仕組みまでもが備わっている。これは忙しい先生やドライバーの方々は、安全管理の運用がおざなりになってしまうことが予想されるため、大人に不正をさせないための仕組みを盛り込んだ。
すわなち、後部座席からの写真のアップロードは写真フォルダが使えないのでライブで写真撮影しなくてはならない。これにより、過去に撮影した写真を使用する不正を防ぐ。
行動履歴や写真を過去3日間保管し、写真は全ユーザーが見ることができる。これにより適当な写真を撮影してアップする不正を防ぐことができる。つまりズルはできない仕組みだ。
子供たちを守るために
海外の警報装置の事例をヒントに、車載装置を追加で設置せず大人の確認を必須とする仕組みをカメラでの撮影という行動により代用したアプリは、費用や手間を節約できるばかりか、今すぐに導入でき今日から使えるメリットがある。
リリース時点ではAndroid版がないのが難点だが、必要だという声があれば移植が不可能ということはないだろう。IT技術でハード的な費用や時間を丸ごと引き受け、簡便に導入できるので、子供たちを守る一つの選択肢となり得る。
同社では発出したプレスリリースで「この悲しい事故の再発防止に対して、行政、メーカー、その他多くの方が真剣に取り組まれている事も知り、大変心強く思っております。今後、より安全な仕組みやシステムが作られ、導入されていくでしょう。
それまでの僅かな期間かもしれませんが、2人のパパがつくったこのアプリで、少しでも安全な、少しでも簡単なスクールバスの運行のお手伝いができたらと考えております。 多くの方に使っていただき、子どもたちの命が守られますように」と述べている。
投稿 「バス置き去りは二度と起こさせん!!」現役パパ2人が作った無料アプリが有能すぎる!! は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。