3代目となる新型シエンタが発売されてから早1カ月が経過した。快適性がアップした室内空間や新設計されたプラットフォームの採用で、先代よりも魅力を大幅に高めている。
そこで本稿では、人気モデルとなっている新型シエンタのグレード選びについて解説。特定のグレードに限定して生産を開始しているなかで、制約が少なく納期が早いおすすめグレードについてご紹介する。
文/渡辺陽一郎
写真/TOYOTA、HONDA、ベストカー編集部
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インテリアの質向上&原点回帰!! 新型シエンタの魅力に迫る
ミニバンにはさまざまな車種があるが、シエンタは特に重要な役割を担っている。今はノア&ヴォクシーやステップワゴンが3ナンバー専用車になり、セレナもフルモデルチェンジを控えて5ナンバーサイズの標準ボディを廃止したからだ。運転しやすい5ナンバーサイズのミニバンは、実質的にシエンタとフリードだけになった。
また最近は安全装備の充実などもあり、クルマの価格が全般的に高まった。ノアの場合、大半のグレードは価格が300万円以上だ。そのいっぽうで、所得は1990年代の後半をピークに伸び悩む。つまりクルマは値上げされ、所得は増えないから、小さなクルマに乗り替えるユーザーが多い。
この状況でシエンタが新型にフルモデルチェンジした。現行型は3代目で、開発者は「外観を初代の路線に戻した」という。先代型はワゴン風のデザインだったが、新型はサイドウインドウの下端を20mm下げ、上側は60mm高めた。ウインドウ面積を大幅に広げて視界を向上させ、外観も明るい印象に仕上げた。
パワーユニットはヤリスと同様、直列3気筒1.5Lのノーマルエンジンとハイブリッドだ。プラットフォームも前側はヤリスと共通化したが、中央から後部は異なり、薄型燃料タンクを採用して床を低く抑えた。先代型に準じた設計だ。燃料タンク容量は先代型の42Lから新型では40Lに減ったが、最小回転半径は5.2mから5.0mになり、小回りの利きが向上している。
内装は新型になって質を高めた。居住性も1列目の座り心地が快適になり、2列目も後端までスライドさせて足元空間を大幅に広げられる。身長170cmの大人4名が乗車して、2列目に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半に達する。
ただし3列目にも大人が座るには、2列目の膝先空間を握りコブシ1つ分まで詰めねばならない。そうすれば3列目の膝先に若干の余裕ができる。3列目はシートのサイズも小さくて窮屈だが、床と座面の間には相応の空間があり、膝が大きく持ち上がる姿勢にはならない。2列目の下側に足が収まりやすく、片道1時間なら大人の多人数乗車も可能だ。つまりシエンタはコンパクトでも、ミニバンの実用性は相応に高い。そこでグレードの選び方を考えたい。
ハイブリッドのほうがお得!? 新型シエンタのグレード選び
最初の選択は、2列シートの5人乗りと、3列シートの7人乗りだ。用途に応じて決めれば良いが、7人乗りには2列目シートのスライド機能も装着され、5人乗りと比べたときの価格アップを4万円に抑えた。エクストレイルの7人乗りは、5人乗りに比べて約13万円高いから、シエンタの7人乗りは買い得だ。
次はノーマルエンジンとハイブリッドの選択だ。売れ筋になるGとZでは、ハイブリッドの価格はノーマルエンジンに比べて35万円高い。ただし購入時に納める税額は、ハイブリッドが約10万円安く、実質価格差は25万円に縮まる。
そしてWLTCモード燃費を比べると、GとZ(7人乗り/2WD)の場合、ノーマルエンジンは18.3km/L、ハイブリッドは28.2km/Lだ。レギュラーガソリン価格が1L当たり160円とすれば、1kmの走行に要する燃料代は、ノーマルエンジンが8.7円、ハイブリッドは5.7円になる。そうなると8~9万kmを走ると、燃料代の節約で25万円の実質価格差を取り戻せる。
ハイブリッドはノーマルエンジンに比べてノイズが小さく、モーターは瞬発力が伴うために、加速力にも余裕がある。ハイブリッドの動力性能をノーマルエンジンに当てはめると1.8Lに相当する。低燃費とこの付加価値を考えると、ハイブリッドはノーマルエンジンよりも買い得だ。
駆動方式は前輪駆動の2WDと4WDを用意するが、4WDはハイブリッドのE-Fourのみになる。ノーマルエンジンは2WDだけだから、4WDが欲しいときは必然的にハイブリッドを選ぶ。4WDの価格は2WDに比べて19万8000円の上乗せだ。用途に応じて選べば良いが、後輪をモーターで駆動する4WDとしては価格を割安に抑えた。
以上のようにシエンタでは、7人乗りのハイブリッドを推奨したい。そうなると次はグレード選びだ。
制約少なく納期が早いのはどのグレード? モデル末期のホンダフリードもチェックすべきか
シエンタは全グレードに、ベーシックなX、中級のG、上級のZを用意する。XはGに比べて装備がシンプルだが、オプション設定も多く、Gに近い状態まで充実させられる。その意味ではXに必要な装備を加えても良いが、スライドドアの電動機能は左側に限られる。Gと違って右側には装着できない。
この点を考えると、最も買い得なグレードは7人乗りのハイブリッドG(269万円/2WD)だ。このグレードにオプションのパノラミックビューモニター(2万7500円)をオプション装着すると良い。
ただしGにアルミホイール(6万500円)、車内の空気を循環させる天井サーキュレーター(2万9700円)などもオプション装着するときには注意が必要だ。生産開始が2023年4月以降になり、販売店は「納期が1年に達することも考えられる」という。
開発者は「今は半導体を始めとする各種の供給が滞り、特定のグレードや仕様に限定して生産を開始している」と述べた。従ってオプション装備を多く装着したいときは、7人乗りのハイブリッドZ(291万円)を選びたい。制約が少ないためだ。
またオプションの100V・1500W電源コンセント(4万4000円)は、ほかのオプション装備とは逆に、装着しないと生産開始が2023年4月以降になってしまう。以上のように買い得グレードはハイブリッドGだが、装着を希望するオプション装備次第では、ハイブリッドZに上級化させたい。
販売店では「2023年4月以降の生産車でなければ、納期はさほど延びない。ノーマルエンジンは約3カ月、ハイブリッドでも約5カ月に収まる」という。それでもシエンタは人気車で、短期間で納期が延びることも考えられるから、購入の商談は早めに開始したい。
シエンタのライバル車はフリードだ。2023年の中盤にフルモデルチェンジする予定で、今はモデル末期の状態にある。現行型の発売は2016年で設計が古く、WLTCモード燃費は、ノーマルエンジンが17km/L、ハイブリッドは20.9km/Lだ。安全装備と運転支援機能も含めて、メカニズムはシエンタに比べて見劣りするところが多い。
しかし2列目シートの形状は、シエンタはベンチタイプのみだが、フリードならセパレートタイプのキャプテンシートを割安な価格で用意した。エンジンは4気筒だから、エンジンの音質では有利な面もある。フリードの買い得グレードは、ノーマルエンジンを搭載するG(227万5900円/6人乗り・2WD)、あるいはハイブリッドG(263万3400円/6人乗り・2WD)になる。
推奨度が高いのは設計の新しいシエンタだが、コンパクトミニバンは実質的に2車種だから、フリードと乗り比べて判断すると良いだろう。両車の良し悪しが明確に分かる。
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