米大手メディアThe Wall Street Journalの記者が、iPhone 14シリーズとApple Watch Ultraの「衝突事故検出」について、実際にクルマを衝突させて検証したテスト結果を報告している。
つい先日もiPhone 14 Proで同じような動画を公開したYouTuberもいたが、この記事で興味深いのは「アップルが公式に回答し、衝突検知の新情報を明かしていること」である。
同誌のジョアンナ・スターン記者は、わざわざデモリション・ダービー(自分の車両を他車に衝突させて破壊するモータースポーツの一種)のプロを雇い、鉄のフレームで頑丈に作られた競技専用車を時速40kmほどで衝突させている。
テスト場所はジャンクヤードであり、駐車された2台のクルマ(2003年型フォード・トーラスと2008年型ダッジ・キャラバン)に突っ込む格好だ。
まず衝突するダービー車では、ドライバーが手首にApple Watch Ultraを巻き、iPhone 14 ProとGoogle Pixel 5(自動車事故検出機能を搭載)も積んでいる。かたや衝突されるクルマには、ダッシュボードの通気口にiPhone 14 ProとPixel 6 Proが固定されている。
その結果はおおよそ、ダービー車のiPhoneやApple Watchは衝突を検知したが、衝突された車のiPhone(やPixelスマホ)は反応しなかった、というものだ。つまり停車した状態でぶつけられた側のiPhoneは、事故を検出しなかったわけだ。衝突スピードは約40km/hであり、低速というほどではない。
これをスターン氏がアップルに問い合わせたところ、同社の広報担当は「ジャンクヤードでのテスト条件では、停車中の車内で(衝突事故検出)機能を起動させるのに十分な信号がiPhoneに供給されなかった」と述べている。
さらに続けて、iPhoneがBluetoothやCarPlayに接続されていなかったこと(車が使用中だと示す指標)や、車が運転中だと分かるほど十分な距離を走行していなかった可能性があると指摘。もしiPhoneがこれらの信号を受け取り、GPSで車が実際の道路を走っていると認識していれば、警告が出される可能性はより高くなっただろう、と付け加えている。
手短にまとめれば、iPhoneの衝突事故検出は「CarPlayやBluetoothにつなぎ、あるいはGPSで走行を認識する」条件を満たしてこそ機能しやすい、といったところだろう。
アップルは本機能を「100万時間以上の実世界での走行と衝突事故データでトレーニングされた高度なモーションアルゴリズム」によるものと概説していた。
さらにスターン氏は、iPhoneとApple Watchでの衝突検知での各種センサーの働きを(アップルからの説明を受けて)次のように説明している。
・モーションセンサー:すべてのデバイスに3軸ジャイロスコープと高加速度センサーが搭載されており、1秒間に3,000回以上、動きをサンプリングしている。これにより衝突の瞬間や車両の動きや軌道の変化を正確に検知できる
・マイク:衝突を知らせる大きな音を検知する。アップルによれば、マイクがオンになるのは運転が検知されたときだけで、実際の音は記録されないとのこと
・気圧計:窓を閉めた状態でエアバッグが作動した場合、気圧計が気圧の変化を検知する
・GPS:読み取り値から衝突前の速度や突然の減速を検知しつつ、デバイス側に道路を走行中と認識させる
・CarPlayとBluetooth:クルマに乗っていることをアルゴリズムに伝え、衝突を未然に防げる
これらの条件を満たすには、実際にクルマを運転し、本当に事故を起こす以外難しそうだ。スターン氏も自らのテストが非科学的だとしつつも、実際に機能することが確認できて心強いとの趣旨を述べている。
よほどのことがない限り誤動作することを防ぎつつ、人命が危機に晒される可能性があれば的確に動作させるため、アップルも「100万時間以上」もかけ、アルゴリズムを訓練したのだろう。
- Source:The Wall Street Journal
- Source:MacRumors