2021年から2022年にかけての新型車ラッシュと、近年の電動化と自動運転技術によって、再び注目を集めている日産。
そこで気になるのが「企業」としての日産の力。本稿では、ゴーン体制から直近までの売上推移を簡単におさらいした上で、本誌連載「自動車業界一流分析」のわかりやすい語り口でもおなじみ、中西孝樹氏に日産の経営状況を俯瞰してもらう。
※本稿は2022年8月のものです。
文/中西孝樹、ベストカー編集部、写真/NISSAN、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年9月26日号
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■ゴーン体制下から直近までの経営状況の売上推移
昨年あたりからの日産は日本国内に向けた魅力的なニューモデルを積極的に投入するなど、ゴーン体制下で感じられた日本市場軽視のビジネス戦略から大きく舵を切った印象。
我々日本国内の自動車ファンの目線では「日産、やっと日本を向いてくれた!!」との思いを抱く人も多かろう。
一方で会社としての経営状況はどうなのか?
まずは下の表で、ここ8年間の日産自動車の決算での数字をまとめたのでご確認いただきたい。
グローバルでの販売台数、売上高、純利益ともに2015~2018年度前後がピークで、以降2021年度にかけて減産、減益体質が続いている。
2016年は三菱自動車の燃費偽装問題を端緒に資本参加、アライアンス強化へと動いたこともあり、経営面でも好調がうかがえた。
一方2018年11月に当時のC・ゴーン会長が金融商品取引法違反容疑で逮捕され、会長職から解任されるという事件が勃発し、日産は企業統治の側面で大きな課題を突き付けられた。
これにも関連して2020年5月28日に事業構造改革「NISSAN NEXT」を発表。
コスト削減、販売体制の見直し、老朽車種の刷新、電動化への対応などを中心とした施策で、これらに伴う費用を2019年度決算の特別損益に算入したことで、純利益マイナス6712億円の赤字を計上した。
続く2020年度はコロナウイルス問題による操業停止などもあって減産、減益となり純利益マイナス4487億円と、2年連続での赤字となっている。
2021年度には2155億円の最終利益を出しているが、グローバル販売台数は387万6000台、売上高は8兆4246億円で減産、減益傾向に歯止めはかかっていないのが現状なのだ。
株価を見ても、2018年は1000円を超えていたものが昨年から本年にかけては500~600円台と低水準。
経済、経営評論家の中西孝樹氏は現在の日産を以下のように分析する。以下、中西氏の分析コメントだ。
■「Nissan NEXT」は順調。だが、しかし
2018年末のゴーン事件以降、混迷期はあったものの、その後18カ月で15車の新型車を投入し、立て直しを図ってきたのは評価します。
特に、国内のフェアレディZ、サクラ、エクストレイルは市場での評価も高く、日産自動車のイメージを引き上げる効果も大きく、販売面でも順調ではあります。
「Nissan NEXT」は順調ですが、その結果に慢心しないことが大切です。
実際、日産以上に他メーカーはもっと順調ですし、日産の自動車事業が未だに赤字体質であることは大問題です。
現実的には中国でのエクストレイルの販売は計画ほどではないし、米国でのパスファインダー、ローグなども凡庸としています。
4~6月のグローバルでの市場シェアは好調期には6%以上あったものがわずか4.3%に留まります。
到底“経営順調”とは言えない状態と判断せざるを得ません。
確かに日本国内では今まさに新型車投入時期なので元気のよさを感じますし、その新型車が魅力的なので印象がいいのですが、販売台数の規模が大きな北米や中国では新型車投入が一段落しています。
今後の大きな伸びは期待できません。
日産は現況に満足をしていてはいけません。持続可能性に自信が持てない状況で、危機のふちにいると、経営陣は認識しなければならないと警鐘を鳴らします。
低調な株価が暗示していることは、投資家はリアルに経営状況を見ているということです。
* * *
以上、中西氏の見解をご紹介した。うーん、なかなかに手厳しい…。逆に言えば、日産が本当に復調するにはまさに今が正念場だということ。頑張れ!!! 日産!!!!
●中西孝樹(なかにしたかき):オレゴン大学卒。1994年より自動車産業調査に従事し、国内外多数の経済誌で人気アナリスト1位を獲得。著書多数
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