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9月までに日本では2万5000台受注も……世界でクラウンクロスオーバーは果たして売れるのか!?

 2022年7月に発表された16代目トヨタ クラウンは、代数を徳川幕府になぞらえ「維新のクラウン」と呼ばれたりもしている。

 その新型クラウン、維新の名に違わず約40か国でグローバルモデルとして販売される。世界を相手に立ち回る16代目クラウンに勝算はあるのか!?

文/桃田健史、写真/TOYOTA、ベストカー編集部

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■グローバルでも勝算ありのワケ

2022年7月に発表された、16代目となる新型トヨタ クラウン。まずはクロスオーバータイプからの登場となる

 日本のユーザーがアッと驚く大転換を果たした、トヨタ新型「クラウン」。世界約40か国に向けたグローバルカーとして生まれ変わった。

 これまでも、歴代クラウンでは一時期アメリカで、また中国などでも販売されたことはあるが、名実ともにトヨタの世界戦略車として製品企画されたのは今回の16代目がクラウン史上で初めてとなる。

 トヨタは、クラウンのグローバル化に勝算ありと見ている。

 発表記者会見では報道陣との質疑応答の際、トヨタのデザイン領域総括部長であるサイモン・ハンフリーズ氏が「自動車に対してプレミアムな体験を求めている人々は(グローバルで)多様性を求めている」という表現をしている。

 さらに、「この多様性(というトレンド)は、日本以外でも中国や欧州などでも見て取れる。(トヨタとしてクラウンの)商品としての価値を(グローバルに)伝えていくいいチャンスだと思う」とも言う。

■本当に売れるのか? クラウンクロスオーバーで考える

1995年に北米市場に登場したトヨタ アバロン。グローバルモデルとしてのクラウンはこのアバロンの後継としても位置づけられる

 新型クラウンは海外で、本当に売れるのだろうか?

 ここから先は、筆者の海外での自動車関連の取材を基に予測してみたい。

 なお、対象とするのは、トヨタからすでに車両スペック詳細が公開されている、クラウンクロスオーバーに話を集約する。

 まずは、北米市場だ。

 アメリカの自動車メディア各社は、「新型クラウンがアバロン後継になるようだ」という記事を掲載している。

 アバロンは、1990年代中盤に登場したC/Dセグメントセダンである。その頃、C(北米での小型)、C/D(北米での中小型)セグメントが北米市場の中核であり、トヨタは各々Cセグメントの「カローラ」とC/Dセグメントの「カムリ」が二枚看板だった。

 そのひとつ上となるクラスのアバロンは、トヨタ既存客にとっての上位モデルへのステップアップやアメ車からの買い換え需要を見越したDセグメントモデルとして、ユーザーと販売店にとって重宝な存在であった。

 そうしたアバロンの製品としての立ち位置は2000年代から2010年代になっても大きく変わらなかったが、「カローラ」や「カムリ」はともによりスポーティで上質な製品へと進化していく。結果的に、「カムリ」の上級グレードというイメージのアバロンの製品価値が不明確になっていったと思う。

 要するに、アバロンは北米市場で”浮いた存在”になっていた。

■セダン凋落でクロスオーバーに勝機が!?

2010年代の北米市場はセダンからSUVへの急激なシフトが起こり、RAV4の販売が大きく伸びた

 さらに、2010年代は北米市場が大きく変化した時期でもあった。C/Dセグメントセダンから北米ではコンパクトSUVへの急激なシフトが起こったのだ。トヨタでは、王道のカローラとカムリの販売が減少する一方、ラギッドでオフロードイメージを前面に押し出したRAV4の販売が一気に伸びた。

 こうなってくると、北米でのアバロンの必要性はさらに弱まっていくことが避けられない情勢となってしまった。

 ならば、アバロンをSUV、またはクロスオーバーに仕立て直してしまおう、という発想が出てきてもおかしくはない。

 こうやって時系列で見てくると、北米では新型クラウン導入ありきで物事が進んだというよりも、北米でのSUVシフトのなかでアバロン後継に大きなビジネスチャンスが見えてきたので、「ならばクラウンをグローバルカーにして……」という発想が生まれたとも考えられる。

 よって、北米市場ではすでに、新型クラウンの受け皿は充分に存在するため、当面は安定的な販売実績が見込まれるのではないだろうか。

 ただし、少し気になるのはレクサスとの食い合いだ。上質かつスポーティな新型クラウンは「UX」や「NX」、さらに「RX」のライバルにもなり得るかもしれない。

■クロスオーバースタイルは中国でも強い!?

 次に、世界最大の自動車市場である中国市場ではどうか?

 そもそも、中国市場が拡大し始めた2000年代中盤以降、中国のユーザーはアメリカンライフへの憧れが強く、トヨタは北米モデルを意識したうえで、中国人好みの装飾を施すといった中国現地化の戦略をとってきた。

 それが2010年代になると、生涯で2台目や3台目の新車への買い換え需要として、北米市場はもとよりグローバルで人気が高まってきたSUVへのシフトが中国でも進んだ。

 また、中国地場のEVベンチャーメーカーのなかには、ボディ外観をクロスオーバーとして製品の先進性を高める傾向もあり、クロスオーバーに対する庶民の憧れも高まってきたと言える。

 こうしたトレンドを鑑みれば、中国でも新型クラウンの需要は充分にあると思える。

■米中以外では苦戦もある!? トヨタの作戦はいかに

 また、欧州については、トヨタはBセグメント、Cセグメントが主体であり、同時にレクサスの認知度が市場で高まっているなか、その中間に位置する新型クラウンをどうやって訴求していくのか?

 そのほか、東南アジア、南米、中東、アフリカ、ロシアなどでは、従来のトヨタラインアップに厚みが増えるといったイメージだろうか?

 正直なところ、前述のハンフリーズ・デザイン統括部長が言う「プレミアム市場での多様性」という言葉は、新型クラウンを導入するアメリカと中国では当てはめやすいと思うが、そのほかの国や地域では、そうしたイメージを持つのが難しいとも感じる。

 果たして、トヨタはどんな手を打ってくるのか? 今後の動向を注視していきたい。

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