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 韓国・現代自動車(ヒョンデ)は2022年9月30日、同社によるトレーラのコンセプトデザインが、世界最大規模のデザインコンペ、レッド・ドット・アワードのデザインコンセプト部門で最高賞に相当する「ルミナリー」賞を受賞したと発表した。

 ヒョンデの「トレーラ・ドローン」は燃料電池+無人運転によるコンテナ輸送のデザインコンセプトで、従来のトラクタに代わって、鉄道車両のボギー台車のような「eボギー」を無人運転することでモビリティの革新を目指した。

 他に電動SUVの「セブン」や「PnD」モジュラープラットフォームなど、ヒョンデは2022年のレッド・ドット・アワードのデザインコンセプト部門の各賞を3つ受賞した。

 コンセプトと実車は違うとはいえ、広範な技術にわたるモビリティコンセプトで国際的な賞を受賞したのは、ヒョンデが掲げる「自動車メーカー」から「スマートモビリティソリューションのプロバイダー」への変革が進展していることの表れと言えそうだ。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/現代自動車・Red Dot Design Award


ヒョンデ初の最高賞

 韓国の現代自動車(以下、ヒョンデ)の無人トレーラコンセプト「トレーラ・ドローン」が、国際的プロダクトデザイン賞、レッド・ドット・デザイン・アワード(以下、レッド・ドット)のデザインコンセプト部門において、最高賞に当たる「ルミナリー」賞を受賞した。

 「トレーラ・ドローン」は水素燃料電池による無人トレーラというコンセプトで、ルミナリー賞の受賞は同社初だという。

 世界最大規模のデザインコンペティションとして知られるレッド・ドットは、ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン・デザインセンターが主催している。

 同賞は、デザインにおける多様性を適切に評価するため三つの部門に分かれており、そのうち、アイデアやビジョンを評価する「デザインコンセプト」は2005年に新設されたもの。受賞に相当する「ウィナー」、その中でも特に優れたものを表彰する「ベスト・オブ・ザ・ベスト」、そして最高賞の「ルミナリー」の3賞からなる。

 ヒョンデはトレーラ・ドローンでルミナリーを受賞したほか、電動SUVの「セブン」コンセプトが「ベスト・オブ・ザ・ベスト」を、ロボットによるモジュラープラットフォーム「プラグ&ドライブ」が「ウィナー」を受賞している。

 ヒョンデの副社長でデザインを担当するイ・サンヨプ氏は次のようにコメントした。

 「様々な技術を駆使した先見性のあるデザインにより、スマートモビリティソリューションのプロバイダーに生まれ変わろうとしている弊社の取組を、レッド・ドットは再び評価してくれました。

 とりわけ、完全無人運転の水素燃料電池による商用車という、私たちのビジョンを示す『トレーラ・ドローン』は、重要なモデルです。

 ルミナリー賞の受賞は、ゼロ・エミッションのモビリティを実現するという、弊社のデザイナーとエンジニアの情熱と努力を称賛するものだと思っています」。

燃料電池無人トレーラでレッド・ドット・アワードの最高賞!! 現代自動車のコンセプトデザインはどこがスゴい!?
シンガポールで開催された授賞式の様子

鉄道から着想を得た「eボギー」

 トレーラ・ドローンはコンテナ輸送システムを水素を動力としたゼロエミッション、かつ完全に無人で運用することを想定したコンセプトだ。

 水素燃料電池により効率的な輸送を実現するためには、様々な輸送プロファイルに合わせた水素タンクが必要だ。今日のコンテナ輸送に匹敵するためには、1充填あたり1000kmを超える航続距離を確保する必要があった。

 また、様々な用途に対応するためにヒョンデは「eボギー」を設計した。これは鉄道車両のボギー台車(車体と直結せずに回転装置を介して車体と接続する台車)と同様の思想でデザインした。

 つまり、2台のeボギーの上にトレーラ(コンテナ)が乗っているという構造で、セミトレーラ(トラクタ)など道路輸送用の商用車とは全く異なるユニークな発想だ。この構造により一般的なトレーラより回転半径が小さくなり、狭い道路も通行できる。

 eボギーはコンテナ輸送を専門として設計されたものではなく、あらゆるビジネスを想定した多目的プラットフォームだ。コンテナトレーラと切り離して運用することで、eボギーは貨物輸送のほかに建設業、消防、レスキューなど様々な分野で活躍する。

モビリティ・ソリューションでも受賞

 いっぽう、ベスト・オブ・ザ・ベストを受賞した「セブン」は、2021年のLAオートショーで公開した電動SUVコンセプトで、車両スペースの革新により、クルマを車輪のついた生活空間に変えるというヒョンデの「IONIQ」ブランドの完璧な例だという。

 また、「ウィナー」を受賞した「PnD」(プラグ・アンド・ドライブ)モジュールは、ヒョンデがCES2022で初公開したオール・イン・ワンのモビリティソリューションだ。

 インホイールモーター、ステアリング、ブレーキ、サスペンションなどのハードウェアを一つに組み込むことで、目的・サイズ・用途を問わないモジュールとなっていることが特徴。テーブルからコンテナまであらゆるものを接続することでモビリティを拡張するというコンセプトだ。

 ホイールユニットがステアリングアクチュエーターを使用することで、360度の回転が可能など自在に動くことができる。オブジェクト検出と自動運転にはLiDARとカメラを用いる。

レッド・ドットによる評価

 レッド・ドットはトレーラ・ドローンについて、「燃料電池技術とトラック、トレーラ、ロボットを一つのプラットフォーム上に組み合わせることで、独創的で革新的な未来のモビリティソリューションとなった」と評価した。

 また、その要素技術については次のように評価している。

eボギー

 トレーラ・ドローンに乗員はおらず、完全自動運転技術が使われている。正確な運転を可能にしているのが、両端にある一対の「eボギー」という台車だ。優れたパッケージ技術により、システムはコンテナの下部に収まっている。

 鉄道車両の「ボギー台車」技術から着想を得た「eボギー」は、必要最小限のコンポーネント(推進機関、制御装置、操舵系、サスペンション)を限られたスペースに効率的に搭載し、運転手不在のモビリティを可能としている。

 この台車は多目的のモビリティプラットフォームであり、様々な産業において広範な用途に使い得る。

水素燃料電池

 高出力の燃料電池システムを搭載するトレーラ・ドローンは、経済・商流においてだけでなく地球環境の保護においても重要な役割を果たす。水素タンクもトレーラの下部に搭載し、最大で1600kmの航続距離をもたらすだろう。

無人運転システム

 トレーラ・ドローンは、ドライバーのスペースを完全に排除することで多くの容積を確保した。完全無人の自動運転システムと合わせて、輸送はさらに効率化するだろう。またトレーラ・ドローン同士の無線通信により、運行の効率化や障害情報の共有など素早い対応が可能となる。

モジュラー・プラットフォーム

 用途によっては、eボギーに対してボディキットやワゴンなどの艤装を施すことができる。こうした柔軟なスケーラビリティは、車両開発の効率化や生産性向上に貢献する。

 いっぽう、「PnD」についてのレッド・ドットの評価は次の通りだ。

 PnDは、ステアリング、ブレーキ、インホイールモーター、サスペンションなどのハードウェアを組み合わせているが、用途や目的によってサイズは自由に変更できる。

 360度の回転が可能な次世代ホイール、LiDARやカメラなどのセンサーにより、あらゆる物体を自律的に移動可能なものとするPnDは、モビリティの新しい地平線となる。

 これまでに4台のPnDモジュールがデザインされているが、安全性や乗降性とともに、充電やメインテナンスについても良く考慮されている。固有のタスクのためにカスタマイズすることもできるほか、地面に光を投影して周囲とコミュニケーションをとることも可能だ。

 AIと自動運転という新技術は、「自動車」と「ロボット」の境界線をあいまいにする。PnDはモビリティに限界のない自由というビジョンを実現するために作られた。また、メタバースプラットフォームへのアクセスを提供することで、輸送という概念を新しい次元に引き上げた。

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