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アダプティブ・クルーズにつきまとう「右足をどこに置くか問題」。ペダル愛が深すぎる評論家が調べた正解はこれだ!

 クルマの走行中に、前のクルマとの車間距離を検知して、追従走行をしてくれるアダプティブ・クルーズ・コントロール(以下ACC)。長距離移動の際には運転の疲れを軽減してくれるいっぽう、低燃費走行にも貢献してくれる、非常に便利なアイテムだ。

 このACCの登場によって、クルマのペダル配置にも変化が生じた。まだ少数だが、アクセルペダルの右側に、右足をおけるような「出っ張り」を用意してくれているモデル(メーカー)が出てきたのだ。

 そこで、試乗会の度にペダルの写真を撮影してきた筆者が、各車のペダル配置について紹介しつつ、「こりゃいいわ!」と思ったクルマをランキング形式で紹介しよう!

文/吉川賢一、写真/エムスリープロダクション、NISSAN、MAZDA、HONDA、DAIHATSU、BMW、Volkswagen、Audi

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■両足で突っ張ることで、疲労軽減につながる

 「ACC」といっても、機能のレベルがいくつかある。

 マニュアルミッション車に多い一定車速をキープし続けるだけのCC(クルーズ・コントロール)や、前走車に追従走行するタイプ(低速になると解除される仕様もある)、完全停止までサポートしてくれるタイプ、停止状態から再発進までこなしてくれる高機能なタイプなどさまざまだ。

 CCの場合は、前走するクルマが減速すればブレーキペダルを踏む必要があるが、ACCの場合は、前走車が減速すればクルマが自動で減速してくれるために、ACC作動中は基本的にはペダル操作が必要なく、右足の出番は圧倒的に減る。

 しかしながら、とっさの状況に対応するため、常に右足はすぐブレーキペダルを踏める位置に構えている必要がある。

 オルガン式アクセルペダルであれば、アクセルペダルに足をそっと置く程度ならばできるのだが、踏まないように足を浮かせておくのは、長時間となると疲れることもあるし、吊り下げ式アクセルペダルでは、そっと置くことすらできない。

 右タイヤのホイールハウスの車内側の形状を工夫して、右足用のエリアがあればよいのだが、スペースがまったくないクルマも多い。

 筆者が考える、ACC作動中のベストな右足の位置は、アクセルペダルの右側。もっというと、左足用フットレストと線対象の場所に、同じ角度で、右足用フットレストがあるのがベストだ。

 左足のフットレストと線対称で配置することで、両足で突っ張ることができて姿勢が安定、疲労軽減につながる。また、両足で突っ張ることで腰にかかっている負荷が一時的に減るため、腰痛持ちの方(筆者も腰痛持ち!)にもおすすめなのだ。

■マツダは「アクセルペダルの上で保持」を想定か

日産 スカイライン・ハイブリッド(販売終了)の足元。アクセルペダル横に斜めの壁があり、どうにか右足をひっかけることは可能

 こうした右足の位置について、各社はどう考えているのか。たとえば日産だが、スカイラインはアクセルペダル右横にある突起をフットレストのように使うことができるかも知れないが、壁に角度があるため、フットレストとして使用することは前提にないようだ。

 また、セレナやGT-R NISMOなどには一切スペースはなく、車型によってバラバラであることから、メーカーとしての一貫した設計フィロソフィもまだないようにみえる。

 ペダルレイアウトにこだわるメーカーといえばマツダだが、マツダ車はアクセルペダルのすぐ右側にピラーがあり、右足を置けそうな場所はない。

 ただ、マツダ車は全モデルがオルガン式ペダルであり、左足フットレストとアクセルペダルの角度が同じで、位置も左右対称なので、アクセルペダルの上で、右足を保持することが想定されているようだ。

マツダ3の足元。アクセルペダルのすぐ右側にピラーがあり、右足がおける場所はない

 こういったメーカーやクルマごとの特徴を踏まえて、筆者が使いやすいと考えたトップ3が以下になる。

■3位:BMW&ホンダ

BMW 5ツーリングの足元。左足フットレストと前後位置がややずれるが、右足フットレストとして使える

 まずはBMW。一部車種にフットレストとして使える部分をもつクルマがある。現行型のBMW5シリーズは、左足と前後位置がややずれるが、右足を置くスペースとして使えるエリアがある。

 BMW Z4にも使えそうなピラーが横にあるが、位置がアクセルペダルよりも手前なため、足を大きく曲げないと置くことはできない。

 いっぽうホンダも、フィットに、右足を置けそうなスペースを用意している。

ホンダ フィット(現行モデル)。右足をおけそうなエリアがある

■2位:ダイハツ

ダイハツ ロッキーの足元。左足のフットレストと角度は違うが、右足を立てかけるエリアがある

 右タイヤホイールハウスの内張の形状を工夫して、右足を引っかけることができる構造をつくっているのがダイハツだ。ロッキー、トール、タントなどには、右足を置くことができるスペースがある。

 もちろんOEMのルーミーやライズにもあります。ただし、角度や位置は左足用フットレストと対象ではなく、右足を立てかける程度のもの。フットレスト用のトリムパーツではなくフロアカーペットではあるが、それでもあるだけで助かる。

■1位:フォルクスワーゲン

フォルクスワーゲン T-Rocのペダル。左足用フットレストと対象の理想的な位置に、右足用のフットレストが存在する

 右足フットレストが明確に用意されているのがフォルクスワーゲンだ。ゴルフ8(7にもあった)やパサート、つい先日試乗したT-Rocにも装備されていた。

 吊り下げ式のアクセルペダルの右側に、樹脂製のスペースが用意されており、左足のフットレストと同じ角度でついているため、最も快適な姿勢をとることができる。樹脂成型のトリム部品を用意しているのは、筆者が知る限りでは、フォルクスワーゲンだけ。

 ただ、VWとプラットフォームを共用するアウディには、この右足のフットレストはない。例えば、T-Rocにはあるが、プラットフォームを共用するアウディQ2にはないのだ。

 上級ブランドのアウディならば、やる気になればできるはずだが(コスト的には大した差はつかない)、アウディは、そもそも右足フットレストを不要と考えているのだろう。VWの設計フィロソフィと、アウディのそれとが異なることがよくわかる。

■多くのメーカーが作らないのは「安全かどうか確認できていないから」

 フォルクスワーゲンは、この右足フットレストについて、初めから設計要件に入っているようで、昨今試乗したクルマには、必ず右足用のフットレストが用意されていた。しかしそれ以外の自動車メーカーについては対応がバラバラの状況だ。

 かつて、某国産車の試乗会へ参加した際、開発担当者に、「右足フットレストをなぜ作らないのか?」と聞いたところ、有効性は確認しているものの、「右足フットレストを作った」とは言いにくい、とのこと。

 踏み間違い事故が発生した際、「右足フットレストがあったからではないか」といわれる懸念があるそうで、その代わりに、「右足が置けそうな場所」をこっそり用意した、という回答が得られた。

 「安全性が確認できないものは採用しない」という考えはもっともだが、ACCがこれだけ普及してきた現在において、「右足をどうするか問題」は今後重要になってくるはず。また、冒頭で触れたように、用意しないことで事故になる可能性もある。安全性を早急に検証して標準設定されることを期待する。

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