今あえて乗りたい平成の名車。あなただったら何を選びますか? 国沢光宏、清水草一、斎藤 聡 3名の自動車評論家が、「今あえて乗りたい!!!」という平成黄金期のクルマ3台をそれぞれ厳選!!!
※本稿は2022年9月のものです。各中古車情報は本誌おなじみの萩原文博氏調べ。★印は流通台数で、★(0〜10)、★★(11〜30)、★★★(31〜50)、★★★★(51〜100)、★★★★★(101以上)。価格は中古車の価格帯。情報は2022年8月時点のもの。
文/国沢光宏、清水草一、斎藤 聡、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年10月10日号
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■速さに「質感」があった3台。ランエボならIXです!(国沢光宏)
●国沢光宏氏が選んだ「推しの平成レトロカー」3台
・三菱 ランサーエボリューションIX
・スバル インプレッサ WRX(GDB)
・スバル レガシィツーリングワゴン(4代目)
ランエボ(スバル)とインプレッサWRX(三菱)の面白さは進化の早さにあった。
ランエボの場合、最初のモデルは1992年9月。そして1年3カ月後に出た『II』で足回りを全面的に見直しエンジンも10馬力アップ。1年後の『III』も、圧倒的なパフォーマンスアップを行った。
1年7カ月後にフルモデルチェンジして『IV』へ。ここからランエボの売りになっていくAYCが加わる。
以後、最強のランエボと呼ばれる2006年9月の『IX MR』まで12回も進化させた。IXのMR、本当に洗練されたスポーツモデルです。
WRXだって負けていない。ランエボと同じ1992年11月に初代がデビューすると、毎年の如く進化していく。
ランエボは文字どおり『エボリューション=進化』ながら、WRXの場合、航空機などで使われる『Ver』(バージョン)という表現をした。
当時WRCが市販車ベースのグループAだったこともあり、勝つためには市販車を改良していくしかない。
最終進化形が鷹目のGDB。ポルシェじゃないけれど、自分の一部になったような感覚を味わえる。
4代目レガシィ(スバル)の凄さはホンキで世界一の乗用車を目指した点にある。徹底的な軽量化や、ボディに使われる鉄板の平滑度まで見直し、質感も追求。
完成したクルマは本当に素晴らしく、COTYで圧倒的に優位と言われた2代目プリウスを破って受賞したほど同業者の評価も高い。
今でもこのモデルに試乗してみると「充分に通用しますね!」という完成度。
280馬力の2Lターボがレガシィの売りながら、今乗るなら超滑らかな3Lの水平対向6気筒をマニュアルで楽しみたい。
■デザイン、走り。心に残る3台(清水草一)
●清水草一氏が選んだ「推しの平成レトロカー」3台
・日産 キューブ(2代目)
・ホンダ アコード ユーロR(6代目)
・マツダ デミオ(3代目)
この3台は、平成レトロカー的なはずし技じゃなく、カーマニア的正攻法の選択だけど、やっぱりカーマニアなので、実際に今あえて乗りたいと思うクルマを選ぶと、こうなってしまいました。
2代目キューブ(日産)は、とにかくデザインが傑作だった。
あの和ダンスみたいな四角い形は本当に個性的。「史上初めて成功した和風自動車デザイン」と私は呼んでいます。結局、子孫が断絶してしまったことも、2代目の価値を高めているよね。
実は最近、代車で2代目キューブに乗る機会があったけど、当時の輝きはまったくなくて、ただのくたびれた古いクルマ。
でもそれは、愛を受けることのない代車だから。モノとしては間違いなく傑作だ。ピカピカに磨ぎ上げれば必ず輝くはずだ。
続いて、6代目アコードのユーロR(ホンダ)。あのエンジンは絶品だった。
落ち着いたセダンボディに、ややエレガント系のスポーツエンジン、そしてMTの組み合わせ。まさに羊の皮を被った狼!
年月を経るごとにシブさが増すような気がする。インテRじゃなくあえてアコード ユーロRというのが、ツウな選択だと思うのです。
そして最後は、3代目デミオ(マツダ)。つまりひとつ前のデミオと言いましょうか。2006年の登場だけど、これの1.3L、MTは究極のハンドリングマシンだった。
コーナーでアクセルを戻すだけで曲がる! まるでロータス・エリーゼ。1.3Lじゃないとダメなの。1.5Lはノーズが重くてペケ。ものすごくスイートスポットが狭い話だけど、こんなに運転が楽しいコンパクトカーはいまだにない。
最後の部分は平成レトロカーとあまり関係ない話になってしまいましたが、カーマニアなので許してつかぁさい。
■さまざまな物語があるスポーツに乗りたい(斎藤 聡)
●斎藤 聡氏が選んだ「推しの平成レトロカー」3台
・スバル インプレッサWRX(GDB)
・日産 フェアレディZ(Z33)
・マツダ RX-8
一台目はインプレッサWRX GDB(スバル)です。三菱のランエボと鎬を削る全力の性能競争の真っただ中にあり、なりふり構わず毎年性能に大きく関わる年次改良を繰り返していたのがWRX。
その結果、世界でも類を見ないスポーツ4WDに成長。
特にGDBシリーズはライバルとの競争が最も熾烈な時期で、A型でランエボにコテンパンにやられメーカーを挙げてクルマのチューニングに取り組んだこともありました。
お薦めはPCDが100から114.3に拡大したE型以降です。
1999年、ルノーと提携しカルロス・ゴーン氏が社長に就任したことで、奇跡のV字回復を果たした日産。その復活プログラムに強引に割り込んだのがZ33です。
消滅するかもしれなかったフェアレディZ(日産)が奇跡の復活を果たしたモデルでもあるのです。
ダイレクトな3.5L・NAエンジンのちょっと荒っぽくも心地よいサウンド、迫力ある加速が楽しいスポーツカーです。
RX-8(マツダ)は平成12年排ガス規制で生産終了したRX-7に代わって登場した最後のロータリーエンジン搭載車。
厳しい排ガス規制をクリアし、ロータリーエンジンを存続させるためあらゆる英知を絞り生み出したのがRX-8でした。お薦めは2008年のMC以降のモデルです。
驚かされるのは、この時代の操縦性はすでに完成の域。どのクルマも、乗っていると作り手の熱のようなものが伝わる。そんな作り手の思いが共有できるのも平成レトロカーの楽しい部分です。
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