新型クロストレックの気になる走りの性能はどこまで進化しているのだろうか? 新型ではパワートレーンが先代XVに設定されていた1.6Lエンジンがなくなり、2Lマイルドハイブリッドのe-BOXER1本となった。
国内での発売は2023年以降を予定しているが、10月初旬にクローズドコースとなる日本サイクルスポーツセンターでのプロトタイプ試乗会が開催された。さっそく国沢光宏氏によるレポートを紹介しよう。
本文/国沢光宏、写真/平野 学
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■車名を変えてひとクラス上級へ!
もともとスバルの『XV』はインプレッサの5ドアHBをベースにクロスオーバータイプにしたものだった。人気のあるSUVということで、そのインプレッサ以上にヒット!
このクルマ、実はアメリカでは最初から『クロストレック』というネーミングにしている。アメリカでXVというネーミングにしたら、どんなクルマなのか、まったくわからないからだと思う。だったら日本でもクロストレックにすればよかったのに(笑)。
熟慮の末、XVをフルモデルチェンジさせるタイミングで海外と同じ『クロストレック』にすることにしたそうな。トヨタでいえば『ヴィッツ』を『ヤリス』にしたようなもの。
以下、XV改めクロストレックを紹介したいと思う。まずプラットフォームだけれど、Dセグメントに近いレヴォーグと共通のスバルグローバルプラットフォーム+フルインナーフレーム構造になった。XVはカローラやシビックなどと同じCセグメントだったので、ワンランク上級になったと考えていい。
■パワステはWピニオン式を採用し、極上のステアフィールに!
どこが違うのか? 例えばXVのパワーステアリングはハンドルの軸端にアシストモーターが付く普通のタイプ。従来の日本は軽自動車からクラウンまですべてハンドル軸のどこかにモーターを付けてきた。
しかし、数年前からプレミアムブランドがラックにアシストモーターを付けるWピニオン式を使うようになっている。ハンドルはアシストなしにステアリング系とつながります。
Wピニオン式はコスト高になるけれど素晴らしいステアリングフィールを実現できる。日本車に採用され、「いいね!」と絶賛されたのは先代シビックタイプRだった。スバルは現行型レヴォーグから採用を始めた。
Wピニオン、上質さが求められるDセグ以上から採用されるというイメージ。車体骨格もCセグだった先代XVより多くの点で剛性を持たせた作りになっていて、話を聞くだけで「いいクルマになるでしょうね」。
唯一、残念なのはレヴォーグで好評のザックス製ダンパーをオプションでも選べないこと。ステアリング系の質感に絶対的な影響を与えるのがWピニオンだとすれば、乗り心地を決定的に向上させるのはダンパー。
だからこそレヴォーグもザックス製ダンパーを採用しているSTI Sportの評価が圧倒的に高い。果たしてクロストレックの乗り心地はいかがだろう?
■「元気のいいスバル車の走り」ではなかったが……
試乗といきましょう。といっても試乗車はプロトタイプであり、2L水平対向DOHCにモーターをつけたe-BOXERのスペックについて、エンジンパワーは公表されていない。ただ、クロストレックの車重は1540~1620kgで、先代XVのe-BOXERが車重1530~1550kgだったことを思うと、少し重くなっている。
Dレンジをセレクトしてアクセルを踏むと、過不足なく走り出す。スバルといえば元気のいい走りをイメージするかもしれないが、今や厳しくなるいっぽうのCAFE規制(企業平均燃費)クリアのため、燃費の悪いハイパワーユニットを搭載できない。
こう書くと「トヨタや日産、ホンダなどは高性能エンジン車を出しているじゃないか」と思うだろう。CAFEって企業「平均」燃費であり、燃費のいいハイブリッド車やコンパクトカーの多いメーカーは燃費の悪いクルマを出しても問題なし。
スバルの場合、フルハイブリッドもコンパクトカーもないため、極めて厳しいのだった。WRX S4とレヴォーグの2.4Lターボで売り切れです。
プロトタイプということからエンジンスペックを公表していないが、ユニットとしてはXVと同じ2L簡易式ハイブリッドのe-BOXERと共通。最高出力や最大トルクは先代と同じく145ps/19.2kgm+モーター13.6ps/6.6kgm程度だと思う。
車重1550kgの現行XVより重くなっていることを考えると、動力性能で少しばかり皆さんの期待を下回るかもしれない。2Lのミニバンの走りをイメージしていただければ間違いないかと。
■とにかくよく曲がるクロストレック!
「曲がる性能」は文句なし! 新しいクロストレックは4WDとFFを選べるが、どちらもよ~曲がる。車体性能は圧倒的に高いだけに、完璧な「足がパワーに勝っている」というクルマになった。
もちろん、Wピニオンがもたらすステアリングフィールは抜群! これでザックスのダンパーなど使っていれば、欧州のプレミアムブランドと真正面から勝負できる乗り味になると思う。
安全面では低速域のみ左右方向の視認性を確保するため、アイサイトに広角の単眼カメラを追加した。国内のスバル車では初採用となり、詳細なスペックを公表していないものの、一段と安心できるクルマになっているに違いない。
これはクロストレックの開発責任者である毛塚紹一郎PGMにも伝えたのだが、少しばかり残念なのは突出した魅力を持っていないこと。アメリカで売っている一段と車高をアップし、オフロード対応タイヤ履かせた『ウィルダネス』バージョンを強くリクエストしておく。
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