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 鉄道とバスが競合しているルートは多くある。しかし大半は棲み分けができていて、駅までのフィーダー線としてバスが利用され、そこから先は鉄道。さらに新幹線や航空機というのが長距離移動の一般的な流れだ。

 れでも競合する路線バスも多々存在する。昔からバチバチやっている高速バス路線について事例を紹介しよう。

文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)


近距離路線バスが鉄道と競合するのは利便性が高いため?

 近距離の鉄道や地下鉄と路線バスががっつり競合するケースは、利便性によりすみわけができているためだと考えられる。鉄道は地下鉄を含めて駅間が比較的長く、駅間にいくつもの停留所が設けられている路線バスは利便性で勝る。

 よって目的地がバス停の近くにあるケースや、なるべく徒歩を少なくしたい高齢者はバス利用が多い。鉄道は階段が多いことも理由の一つではある。

池袋サンシャインで出発を待つ池86系統

 東京都内ではJR山手線、地下鉄副都心線とがっつり並行する都営バス池86系統が便数も多く好例だろうか。東京では人口が多いことに加え、鉄道不通によるバックアップの目的もあると考えられ、この目的で活躍したのが日暮里舎人ライナーに並行する都営バス「里48」系統だ。

 地方では西鉄バス北九州の1番特快が鹿児島本線小倉-黒崎間を、1番が小倉-折尾間を路線は多少異なるもののカバーする。こちらは連節車を投入してかつての路面電車代替という大義名分はあるものの、常にJR九州の出方をうかがいながら攻め続ける。

西鉄バス北九州は連節バスのシターロGで鉄道に挑む

 同じ西鉄でも福岡市内になると鹿児島本線や地下鉄と競合していても、都心から都市高速を経由しワープし、さらにその先のフィーダー路線も兼ねて1路線で乗り換えなしでごっそりいただく作戦で鉄道を攻略する。

新幹線に挑む高速バスはけっこう多い

 高速バスは中・長距離での競合になることが多い。東名ハイウェイバスは東海道新幹線と競合する。在来線は普通列車しかなくもはや相手にならない。東京-名古屋間はスピードでも便数でも、のぞみ号にかなうはずがないが、運賃重視の乗客に支持され一定の便数が維持できている。

 そして東京-名古屋・京都・大坂間の夜行になれば競合相手はバス会社だけになるので鉄道は競合ですらない。唯一の例外は上りサンライズの大阪-東京の片方向だけだが、利用のしやすさとしては高速バスに軍配が上がる。

 東海道・山陽新幹線を通しで丸ごと相手にするのはご存じ「キングオブ深夜バス」のはかた号だ。ドル箱というわけではないのかもしれないが、運行する西日本鉄道のフラッグ路線として平日でも14時間以上かかるのにそれなりの乗車がある。

そしてバス王国の九州では……

 一方で、地方ではやはり西鉄を中心に例に挙げなければならないだろう。短距離でも中距離でも鉄道に果敢に挑み、完勝している路線さえある。

 短距離では北九州-福岡間の高速バスは以前ほどの利便性はなく、最近は減便と北九州側の経由地分散で使いにくいと定期利用者から苦情が上がるほどにまでなってしまったが、それでも都心直結で住宅地の近隣バス停が利用できる強みは大きい。

これでもかなり少なくなってしまった福岡-北九州線

 都市間では九州新幹線開業に脅かされながらも、在来線特急がなくなったことを尻目に利便性と運賃の安さで乗客が減らなかった福岡-熊本線「ひのくに号」が好例だ。

 さらに福岡-別府・大分線の「とよのくに号」に至っては、鹿児島本線と日豊本線を北九州市(小倉)経由で遠回りするしかない鉄道に対して、高速バスは福岡市から鳥栖JCTを介して久大本線沿いに直行できる。運賃はもちろんだが所要時間でも特急列車と大差ないので、振り子電車を投入して防戦したJR九州を苦しめている。

日田バスのとよのくに号

 まだある。福岡-宮崎線「フェニックス号」は、博多-宮崎間の直通特急列車をほぼ駆逐してしまった。宮崎駅で福岡から夕方以降に到着する便を見ていると、若い人が福岡に遊びに行った帰りであることがよくわかるほど好調だ。

西鉄のフェニックス号

 福岡発の最終便は2045で、宮崎駅着はなんと0130と福岡でのレジャーやビジネス需要をよく考えられているダイヤだ。ちなみに逆向きも似たようなダイヤだ。もはや相手は航空機といった様相だ。

 負けた事例もある。北九州-別府・大分線の「ゆのくに号」だ。こちらは振り子電車を投入したJR九州に完全に負けてしまい、路線ごと休止に追い込まれた。大分側の事業者が先に撤退していて、西鉄バス北九州が単独で路線を維持していたがコロナもあり力尽きてしまった。

鉄道に完敗してしまった西鉄バス北九州のゆのくに号

西九州新幹線競合はJRが追う立場か?

 九州ついでに最新の話題と言えば西九州新幹線だ。所要時間はさすがに鉄道にはかなわないが、運賃は割引乗車券を考慮しないとバスのほうが約半額であり、乗り換えなしなので新幹線開業に伴うご祝儀相場経過後に注目だ。

 ちなみに博多駅から長崎駅までの最終接続を見てみると、鉄道が2207発リレーかもめからの乗り継ぎで長崎には2339着。一方で九州急行バスの「九州号」は2234発で長崎駅前に0104着と、保線のために日付を超えて営業運転ができない新幹線が不利である。逆向きは鉄道のほうが有利で最終はバスのほうが90分程度早く発車する。

バスはポテンシャルの高い輸送機関

 路線バスでも高速バスでも、どちらが良いとは一概に言えないが、バスが入れる道路さえあれば路線とダイヤを比較的自由に設定できるバスは、高い能力を秘めているといえる。

 あとはバス事業者がどれだけ人のが流れを読み、あるいは人の流れを創造するのかがカギになるのではないだろうか。時間はかかるが安くて便利で快適なバス旅を楽しんでいただきたい。

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