米国の政府が、半導体に関して中国への規制をしだいに強化しているなか、アップルが中国の半導体大手YMTC(長江存儲科技)からのiPhone向けメモリーチップ調達を、保留することになったとの噂が報じられている。
日経の英字メディアNikkei Asiaの情報筋によると、アップルは中国市場向けiPhoneにYMTC製のNAND型フラッシュメモリチップを採用する計画を進めていたものの、地政学的なリスクの高まりや米当局からの批判を受けて、方針を見直したとのことだ。
アップルは、今月初めにはすでに数ヶ月にわたるメモリチップ認証のプロセスを終えていたという。だが、その後に米政府がYMTCを含む30数社の中国企業を、製品の最終先が確認できない「未検証リスト(UVL)」 に加え、規制の対象とした。これらの企業からの部品調達そのものは制限されないと言うものの、米企業は認可なしに設計、技術、文書、仕様書を提供することを禁止される。
さらに、UVLリストに登録された企業の事業体がある国の政府が、60日以内に必要な情報を米国政府に提供しない場合、より厳しい輸出管理下に置かれる見通しのため、米中の緊張をより高めている格好だ。
これに先立ち、米上院情報特別委員会のメンバーは、アップルとYMTCとの潜在的な取引が国家安全保障にもたらす脅威を分析するよう、米情報機関トップに要請したと明らかにしていた。韓国メディアなどが9月上旬に、アップルがiPhone 14シリーズ用NANDチップ調達先の候補として、YMTCを加えたと報じたこともあり、政治的な圧力が加えられていた経緯がある。
米バイデン政権が、半導体関連製品の中国への輸出規制を強化しているのは、ハイテク分野での覇権争いで優位に立つ狙いがあると見られる。その一方で、中国による台湾への軍事侵攻のリスクが高まるなか、最先端チップの製造を一手に担うTSMCの施設が直接の脅威にさらされており、万が一があれば「米軍がTSMCを爆撃」するシナリオも検討されているとの報道もあった。
巨大ハイテク企業のアップルといえども、二大超大国がにらみ合う状況では、風向きを読むしかなさそうだ。
- Source:Nikkei Asia
- Source:日本経済新聞
- Source:MacRumors