アップルのデザインチームのトップの一人、エバンス・ハンキー氏が同社を去ることが明らかとなった。この件について、アップルも事実だと認める声明を出している。
インダストリアルデザイン担当VP(副社長)だったハンキー氏は、2019年にかつてのデザイン最高責任者ジョニー・アイヴ氏が退社した後、ソフトウェアデザイン担当のアラン・ダイ氏とともに、アップルのデザイン面を率いてきた。
アップルの内情に詳しいBloombergのMark Gurman記者によれば、ハンキー氏は、今後6ヶ月は同社に在籍した後に退社すると述べているそうだ。アップルは重要な幹部が退職する際に後任を発表することが珍しくないが、まだそのリリースは出ていない。
ハンキー氏の抜けた穴を埋める候補としては、かつてアイブ氏が最高デザイン責任者に「昇進」したのと同時期に、2015~2017年にかけてインダストリアルデザイン担当VPに就任していたリチャード・ハワース氏の名前が挙がっている。
アップルのデザインチームは秘密主義のベールに覆われており、その例に漏れず、ハンキー氏がメディアに露出することも少なかった。しかしハンキー氏と彼女が率いるチームは昨年末に米Wallpaperが詳しく報じていたほか、今年7月には同氏が英GQ Magazine UKにM2 MacBook Airのデザインを語ったことが記憶に新しい。
アップルは今回の報道に関する声明の中で、ハンキー氏の会社への貢献に感謝を示すとともに、作業の引き継ぎを行う期間中は在籍する予定であると確認している。
さらに「アップルのデザインチームは、まぎれもないアップル製品を創造するため、世界中から多くの分野にわたる専門クリエイターを集めている」「シニアデザインチームには、数十年の経験を持つ強力なリーダーが揃っている」とも付け加えており、ハンキー氏の退社後も、優秀な人材がごまんといると強調したいようだ。
とはいえ、アップル製品の強みの1つは一貫したデザインの方向性にある。アイブ氏が去ってからわずか3年後のハンキー氏の退社は、またしても「もしもジョブズが生きていれば」的なデザインに関する懸念を再燃させるかもしれない。実際、同社の役員ページには、アイブ氏が会社を去って以降、デザインチームの幹部が一人も紹介されていないのである。
もっともアイブ氏がアップルを退社した理由は、ティム・クックCEOに軽視されたというより、製品のデザインやマーケティングに多大な責任を負うことや、地位をめぐる社内闘争に疲れて燃え尽き症候群になったため、との報道もあった。アップル製品のデザイン責任者という立場には、それほどの重責がのし掛かりそうだ。
- Source:Bloomberg
- Source:9to5Mac