年々、厳しくなっていく一方の排ガス規制と燃費規制。もはや電動化は全自動車メーカーに課せられた課題であり、CAFÉ(企業平均燃費)のクリアは喫緊の課題だ。その状況のなか、果敢にも直6のクリーンディーゼルをCX-60に搭載したマツダだが、果たしてこのままこのエンジンを作り続けるのか、電動化にも対応は可能なのか、国沢光宏氏が斬る!
本文/国沢光宏、写真/マツダ、ベストカー編集部
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■環境軽視だと英国トラス首相も就任間もなく辞任の憂き目に
あまり知られていないことながら、マツダCX-60のディーゼルエンジン搭載モデルが販売されるのは日本だけである。こう書くと、「欧州での主力パワーユニットとして開発されたんじゃないんですか?」となるだろう。
そのとおりで、今までCX-60の開発を担当してきた人たちは「絶対に電気自動車の時代にはならない!」と主張し、欧州でディーゼルを華々しく展開するつもりだった。
しかし! 5年前から時代は脱エンジンの方向をしっかり向いており、欧州(EU)全体の意向として電気自動車に主力を置くこととしている。ウクライナ侵攻やOPECの原油減産を受けても悲鳴こそあげているものの、日和ることなく脱エンジンに向けて動き続けている。
直近だと「コストがかかる環境対策は軽視」とブチあげた英トラス首相があっと言う間に支持率3%と窮地に陥り、辞任。さまざまな分野を取材しても、随所で「脱化石エネルギー」の強さを感じる。
■CAFÉに引っかかるディーゼルエンジン
閑話休題。マツダのディーゼルでした。そんなことから二酸化炭素削減効果の大きいディーゼルに対する締め付けは厳しい(ディーゼルを許してしまうと、皆さん一時凌ぎのため重用し、これでいいかという論調になる)。排気ガス規制や燃費規制などで事実上ディーゼルを閉め出す方向に動いている。
マツダの場合、そもそも燃費のいいクルマが少ない。ディーゼルとしちゃ燃費いいとはいえCAFÉ(企業平均燃費)に引っかかってしまう。ディーゼル車、燃料となる軽油に含まれる二酸化炭素量がガソリンより10%程度多いため、CAFÉだとガソリン車より10%程度燃費が悪いとされる。今や欧州のディーゼルはマツダ以外も絶滅危惧種になった。ランクル300だって出せないです。
アメリカはどうかといえば、排気ガス規制で厳しい。伝統的にディーゼル嫌いというお国柄であり、そのうえ、VWのディーゼルゲート(不正事件)で決定的なダメージを与えた。米国政府海洋大気局はディーゼルを毛嫌いしているように見える。
実際、ディーゼルの排気ガスには規制対象外となっているナノレベルの微粒子が大量に含まれており、そいつを吸うと肺胞から直接血液に混ざると言われてます。
当然の如くCX-60のディーゼルも出せない。中国や新興国はどうかとなれば、日本で生産したクルマは罰則的な関税がかけられるため実質的な禁輸。オーストラリアなど大洋州も厳しい環境にある。可能性あるのは中東くらいだろうか。
とはいえ、お金持ちの中東だとディーゼルより高品質な直6ガソリンのニーズ高い。消去法で考えていけば日本しか売れないということになります。
■CX-60は2030年の燃費規制はクリアできない……
となると気になるのは「日本でいつまで売れるのか?」という点。日本も燃費規制や騒音規制が厳しくなっていく。最初のハードルは2027年くらいに既存車を含めた規制強化となる騒音だと思う。
ここをクリアできても、新型車を対象にした2030年の燃費規制は相当難しい。したがってCX-60の場合、フルモデルチェンジできないということになります。絶滅確定種ということ。
逆に考えると、それまでは買える。残念ながら現在購入できるマイルドハイブリッド付きディーゼルは低速時のドライバビリティでさまざまなショックを出すし、そもそも40km/h巡航状態からのアクセル全開に代表されるレスポンスで決定的な課題を持つ。
ということから、おすすめはモーターを持たない純エンジンのディーゼルになる(このエンジンも未試乗)。面白い存在だと思う。
もし、予想どおり素直な走りを見せてくれるなら、モーター嫌いの人には経済性が高くて楽しいという超お買い得モデルである。マツダファンには100%推奨しておくし、マツダファンじゃなくても積極的に試乗してみることを薦めたい。
直6の大排気量ディーゼルエンジン、どんな評価基準を持ってしても素晴らしい! 特に年間走行距離の長い人にピッタリだ。
マツダのディーゼルといえばススの溜まりを気にする人もいるけれど、改良により2.2Lディーゼルの10分の1くらいに減少しているそうな。1回に30分以上走るような人なら気にしなくていいレベルになったという(マツダの開発担当者談。現物は未確認です)。
最後のエンジン車を考えているなら有力候補にしていい。相当の確率で2030年あたりに絶版となります。
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