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櫛の歯が欠けるように消えてゆく…日産車種激減の今こそ復活を望む名車4選

 ここ数年、風前の灯火状態だった、日産のフラグシップセダン「シーマ」、そしてラージセダンの「フーガ」が、とうとう生産終了となった。

 日産といえば、2019年末をもって、トールワゴンの「キューブ」、コンパクトSUVの「ジューク」、そしてラージFFセダンの「ティアナ」がそれぞれ生産終了になっている(ジュークとティアナ(北米名:アルティマ)は、海外ではフルモデルチェンジをうけ、現在も活躍中)。2020年9月には、名門「ブルーバード」の系譜を受け継いできたミドルセダン「シルフィ」も生産終了に。その前にさかのぼれば、ムラーノ(2015年生産終了)やデュアリス(2013年生産終了)など、ここ10年くらいの間で、ラインアップは激減している(ムラーノもデュアリスも海外では現在も活躍中)。

 もちろん、「アリア」や「サクラ」など、新モデルも登場しているが、トヨタがあれだけのラインアップを誇るなか、日産のラインアップは実に寂しい。生産終了の背景には、仕方のない事情もあったのだろうが、経営に復活の兆しが見えるなか、ラインアップも復活させてほしい!! ということで、いまこそ復活させるべき日産車をいくつかご紹介しよう。

文:吉川賢一
写真:NISSAN

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「パオ」をe-POWER車、もしくはバッテリーEVで!!

 まず取り上げたいのは、1989年に発売された日産パイクカーシリーズの「パオ」だ。開閉する三角窓、外付けのドアヒンジ、上下2分割するリアクオーターウインドウ、ボディに入ったスリッド模様など、パイクカーシリーズの先駆けとなった「Be-1」よりもさらにレトロ調を強めた秀逸なデザインで、当初より人気モデルだった。いまでも、中古車市場では高額で取引されている。

 パオをこのデザインのまま、現行(E13)ノートに搭載されている第2世代e-POWER、もしくは、軽バッテリーEVである「サクラ」のパワーユニットを搭載して、現代に復活させてほしい。衝突安全性や走行性能など、乗り越えなくてはならない課題はたくさんあるだろうが、現代の技術で蘇った「電動パオ」は、ヒットする予感しかしない。

 ちなみに、当時のパオは3か月間の受注期間をもうけ、その間に予約された台数分を販売する戦略で、なんと5万台以上の受注を獲得し、最長1年半もの納期待ちが発生した。「限定販売」という言葉に弱い日本人の心をくすぐったこの販売戦略も、参考になると思う。

ドアインナーやインパネ、ダッシュボードなどは、ボディカラーと同一色で、シフトノブやステアリングホイール、メーター、スイッチノブなどは、アイボリーのクラシカルな雰囲気に統一されており、インテリアもよかった

「2代目キューブ」も、e-POWER車、もしくはバッテリーEVで!!

 和風コンパクトの極み、「キューブ」の復活も期待したいところだ。1990年代末から3世代にわたってつくられた中でも、筆者がもっとも秀逸なデザインだと思うのが2002年から2008年まで販売された、2代目(Z11型)キューブだ。海外進出も考えて洒落っ気を出した3代目のデザインよりも、シンプルでいいと思う。四角をイメージしてつくられたスタイルだけでなく、格子状フロントグリルやホイールのデザイン、ソファーのような座り心地のフロントシートと広いリア空間など、本当に使いやすかったと思う。

 こちらも、パオ同様に、e-POWER車やバッテリーEVとなって、復活させてほしい。パオよりもデザインにクセがなく、トールワゴンという使い勝手も抜群な人気ジャンルのモデルであるため、かなり期待のできるモデルとなるのではないだろうか。ただ、日産のフロントマスクのお作法であるVモーショングリルはキューブには使わないでほしい。2代目キューブの、あのバランスを壊してはならない。インテリアも、ノートオーラ風のデジタル2枚ディスプレイを搭載し、その中で、四角をモチーフにした遊び心あるデジタルデザインを織り込み、「キューブ」の世界観のまま実現させてほしい。

後継か!?? と話題になったコンセプトカーをBEVにして、「8代目シルビア」に!!

 2002年に排ガス規制をクリアできずに販売終了した7代目S15型を最後に、ラインアップから消えた「シルビア」。モーターショーのたびに、「次こそはシルビア後継車が出るか!??」と、ファンが活気づき、日産も、「フォーリア(FORIA)」(2005年)や「エスフロー(ESFLOW)」(2011年)、「IDx」(2013年)と、後輪駆動スポーツカーのコンセプトカーを出したものの、どれも市販化には至らなかった。

 ただ、新型フェアレディZの人気ぶりをみると、シルビアも復活させたら、そこそこ売れるのではないかと思う。ぜひ、フォーリア、エスフロー、IDxのどれかを、「8代目シルビア」として、あのデザインのまま市販してほしい。どこかレトロさを感じるデザインや「シルビア」というネーミングからも、シルビア復活を望む当時からのファンはもとより、若い世代からも、「平成レトロ」として支持されるのではないだろうか。まさに「パイクカーシリーズ」の復活だ。パワーユニットはバッテリーEV、駆動方式は後輪駆動だ。台数限定、期間限定の販売でもよいと思う。新型フェアレディZ(RZ34)が税込524万円~という高価格にもかかわらず、人気を集めている状況をみれば、売れる可能性はあると思うが、どうだろうか。

VCターボe-POWERを搭載した「ステージア」

 1996 年~2007年まで、2世代が販売された上級ステーションワゴン「ステージア」も復活してほしい一台だ。荷室容量の大きさに加え、ローレル/スカイライン譲りの優れた走行性能、低く流麗なデザイン、低めのアイポイントなど、魅力的なポイントが多いモデルだった。

 ステージアには、(400Rの3.0L V6ツインターボエンジンもあることだし)現行スカイラインのパワートレイン流用を期待してしまうところだが、復活させるならば、時代に合わせて、新型エクストレイルのVCターボe-POWERをパワートレインとするのが理想的だろう。全高の低さがもたらす「スタイリシュなデザイン」を狙い、新型クラウンエステートのようなリフトアップはせず、背の低い「快速ワゴン」に仕立ててほしい。

 ステーションワゴンは、欧州メーカーでは、SUVと同じように、プラグインハイブリッドなどの最新のパワートレインを搭載するなど、商品強化が図られている人気ジャンルだが、国産車では、商用ワゴンを除くと、スバルレヴォーグとマツダ6ワゴン、カローラツーリングくらいしかない。新型クラウンに「エステート」が復活設定されたことで、(トヨタは新型クラウンエステートを「ラージSUV」と呼んでいるが)、ステーションワゴンが再び注目される可能性はある。VCターボe-POWERを搭載したステージアは、スカイライン好き、そしてステーションワゴン好きの筆者としては、かなり熱い。

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 今回取り上げた中でも特にパオなどは、当時と現在では求められる安全性能のレベルが大きく異なるため、復活させるためには、何段階も、技術のブレークスルーが必要になるだろう。アリアのようなまったく新しい新型車ももちろん必要だが、一方で過去の人気モデルを復活させるなどの、ファンを喜ばせるような仕掛けも重要だと思う。

 また、キューブなどは復活させないほうがもったいないような存在だし、ステージアはいまが復活のチャンスかもしれない。ぜひこのような資産を使いつつ、国内ラインアップを再び華やかにしてほしい。

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