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クルマの査定時の事故歴・修復歴は正直に申告すべし

 中古車の購入・売却を検討している人にとって修復歴があるか否かは最重要とも言えるポイントだ。

 実際、安くて見た目がきれいでも修復歴のあるクルマは避けるという人は多く、売却の際には不利になってしまう。そのため、事故に遭ったことがあるにもかかわらず、そのことを隠して売却できないかと考えてしまいがちだ。しかし、虚偽申告には痛いしっぺ返しがくることも……。

 今回は事故歴・修復歴のあるクルマの扱いについて紹介していく。愛車がいつ事故に巻き込まれ事故車になってしまうかは誰にもわからない。すべてのドライバーにとって無関係なことではないのだ。万一の場合に備えるためにも、参考にしていただきたい。

文/入江 凱 写真/写真AC、イラストAC

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修復歴がないクルマ=事故歴がないクルマではない!

クルマの査定時の事故歴・修復歴は正直に申告すべし
修復歴の有無は骨格(フレーム)を修正・交換しているかどうかで決まり、告知義務がある。いっぽうの事故歴は被害の大小にかかわらず事故に遭ったことがあるかどうかを指し、告知義務はない

 中古車を購入する際に事故に遭ったことのあるクルマ(事故車)を避けたいと考えるのは当然の心理だ。では「修復歴がないクルマ=事故車ではない」なのかというと……実は違う。

 「修復歴」と「事故歴」という言葉は、一般的に同義として使用されることも多いが、業界では異なる定義を持つ用語とされている。

 まず、修復歴については、自動車公正取引協議会や日本自動車査定協会といった団体が統一基準を採用している。

 日本自動車査定協会が示す修復歴の定義を見てみると「骨格(フレーム)部位などを交換したり、あるいは修復(修正・補修)したもの」とされている。つまり、車体の強度を保つうえで重要な役割を持つ骨格(フレーム)にダメージがあるかどうかが修復歴の有無を分けるポイントだということだ。

 骨格(フレーム)に該当するのは以下の8部位で、これらが損傷、または修復されているクルマが修復歴ありとなる。

1.フレーム(サイドメンバー)
2.クロスメンバー
3.インサイドパネル
4.ピラー
5.ダッシュパネル
6.ルーフパネル
7.フロア
8.トランクフロア
(ただし、ネジ止め部位を除く)

 これに対し、被害の大小にかかわらず単純にそのクルマが事故に遭遇した経験があるかどうかを指すのが事故歴だ。フレームに影響が出るような大きな交通事故も含め、駐停車中に後ろから軽くぶつけられバンパーが凹んだといった軽微なものであっても事故歴があるクルマ(事故車)となる。

 ここで重要なのが、自動車公正競争規約集で規定されているのは、あくまで修復歴に関する告知義務のみということ。事故歴については告知義務がなく、申告するかどうかは売主側の任意となる。

 つまり、修復歴がないと表示されているクルマであっても事故車である可能性はあるということだ。

 このように修復歴と事故歴の違いを事前に知っておかないと中古車を購入する際に「修復歴なしと聞いていたのに実は事故車だった」なんてトラブルにもなり得る。なによりも大事なのは契約前にしっかりと修復歴だけでなく、事故歴の有無も確認することだ。

虚偽申告のしっぺ返しは大きい!!

クルマの査定時の事故歴・修復歴は正直に申告すべし
事故歴や修復歴を隠して売却しても店側が中古車として販売する前の整備などで判明してしまう。故意に隠すと査定額の大幅な減額だけでなく、差額の返金請求されることもある

 事故歴・修復歴があるクルマを避けるユーザーは多いため、査定額や売却金額は低くなる。では、事故歴や修復歴を隠したままクルマを売却した場合、どのようなリスクがあるのだろうか。

 買主が買取後に売主から申告されていない不具合があると判断した場合、修理費などの損害賠償請求や、買主が売主に対して代金の減額を請求ができるという「契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)」というものが存在する。

 そのため、売買契約書の中に「契約後に査定時に確認できなかった不具合が見つかった場合は契約解除や損害賠償を請求できる」といった主旨の内容が記載されていることがある。

 この記載があった場合、事故歴や修復歴が後から判明すると再査定を受けなくてはならず、大幅に減額された査定額が改めて提示されることがある。すでに車両を売却してお金を受け取っていても、契約解除や差額の返金を請求されることがあるということだ。

 ただし、プロの査定士による査定によって買い取り時に不具合を見つけられずに契約をして、その後に新たなる不具合が見つかったとしても「不具合を見落とした業者側の過失であり売却者の責任ではない」という考え方もある。前述の売買契約書の記載は、不具合を見落とした場合に責任を追求されないための防御策であり、嘘の申告の抑止対策とも考えられる。

 注意したいのは、正直に事故歴や修復歴を申告したにもかかわらず「後から申告されていない修復歴が見つかった」ということで、損害賠償などを求めてくる一部の悪徳業者が存在するということだ。

 国民生活センターのサイトでは、売却後にオークション会場での点検で事故車と判明したために当初の半額での買取になると一方的に告げられたうえ、解約する場合は解約料を請求された事例が紹介されている。

 ただし、事故歴・修復歴を隠して売却をした場合には、理不尽な賠償請求をされても隠したことに非があるため、泣き寝入りしなくてはならない場合もある。悪質業者に引っ掛かって泣き寝入りしないためにも虚偽申告はしないようにしよう。

 いずれにせよ、トラブルに巻き込まれた場合は一度、国民生活センターや弁護士などに相談しよう。

国民生活センター 消費者ホットライン

事故歴・修復歴はどのように申告する?

クルマの査定時の事故歴・修復歴は正直に申告すべし
整備の履歴が記載された記録簿は、事故歴を調べるのに役立つだけでなく、保証書や取扱説明書とセットにしておくと査定時の加点ポイントになることもある

 事故を起こして修理したことは記憶していても、時間が経過していたり、修理をディーラーにお任せだったりする人のなかには、車体のどの部分を修理したのかわからないという人もいるかもしれない。

 残念ながら車検証には修復歴の有無に関する記載はないため、基本的には前の所有者が把握していなければユーザーが自分で確認する方法がない。

 しかし、車両に記録簿(整備手帳・メンテナンスノート)が保管してあれば、手がかりを見つけられることもある。車検証や取扱説明書と一緒にグローブボックスの中に入れられていることが多い記録簿には、定期点検の整備や修理の履歴が残されているからだ。

 日本自動車査定協会の査定基準によると、定期的にメンテナンスを受けていた証明である記録簿と保証書・取扱説明書のすべてが揃っている場合、プラス査定になることもある。

 そのため、中古車を購入する際には記録簿を見せてもらおう。点検とは関係のない部品が交換されていたりしたら事故を修復した可能性があるという目安になるからだ。

事故の被害で修復歴がついたら、相手に損害を請求できる?

クルマの査定時の事故歴・修復歴は正直に申告すべし
事故歴・修復歴のあるクルマは元通りにできても売却額が大きく下がる。これを評価損(価格落ち)と呼ばれ、相手に責任がある事故の場合は損害額として請求できる可能性がある

 運悪く事故に巻き込まれた場合、その原因が相手にあれば損害賠償を請求できる。もし完全に修理できたとしても修復歴が残ってしまうと、下取りや査定に出した際の価格は下がってしまう。

 このように事故によってクルマの価値が下落してしまうことを評価損(価格落ち)と呼び、事故によって下がってしまった買取金額についても修理費用とは合わせて損害額として請求できる可能性がある。

 しかし、事故によってどれくらいクルマの価格が落ちてしまったのか、具体的な金額を求めるのは難しい。そんな時に利用できるのが、日本自動車査定協会の発行する「事故減価額証明書」だ。

 これは事故によって発生した評価損の金額を、第三者の立場から査定・証明してくれるというもの。この証明書の金額がそのまま評価損の金額として認められるとは限らないが、保険会社との交渉などに証拠として利用できる。

 事故減価額証明書を発行するには、車検証や修理見積書の写しといった必要書類のほか、車種やナンバープレートの分類によって異なる証明手数が必要になる。発行の申請に関しては、最寄りの自動車査定協会に問い合わせよう。

 注意してほしいのは、事故は100%相手に非があると認められることが難しく、過失割合が10:0になるのはレアケースということだ。理不尽かもしれないが、自分は100%もらい事故と考えていても、満足のいく修理費や評価損を受けることができない場合もある……。

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