生産終了するバイクが相次いでいる昨今。殿堂入りするバイクのパターンを紹介する第三回は、50ccの「原付」をテーマに取り上げる。
他のクラスと違い、排ガス規制が適用されるのは3年後だが、電動化が進み、いずれエンジン版は陶太される可能性が高い。
そして11月にはホンダが同社で初めて一般向けに原付一種&二種相当の電動スクーターを発表する模様。これがEV化の流れを加速させることになりそうだ。さらにスーパーカブ50の電動化や、電動モトコンポの噂も探った!
文/ベストカー編集部
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2025年までエンジン版50ccは存続できるが、その先は絶滅の可能性あり
排気量50cc未満の第一種原動機付自転車(原付一種)は、販売台数、ラインナップともに減少の一途をたどっている。
1980年に国内だけで原付は約250万台を売り上げていたが、2021年の販売台数は12万7736台。20分の1以下にまで落ち込んでいる。そして国内4メーカーのラインナップ数は、わずか13車種(グレード違いを含まず)。80年代にはミッション付きのスポーツ原付、2ストローク車なども存在し、まさに百花繚乱だったが、寂しい限りだ。
凋落した理由として「高額化」が挙げられる。
度重なる排ガス規制に対応するため、2000年代から徐々に価格が高騰。例えば1980年代のスクーターは10万円台前半で、イブスマイル(ホンダ)など6万円台の廉価モデルもあった。
しかし現在は安いモデルでも20万円に近い。さらに2006年の違法駐車厳罰化が追い打ちをかけた。値段と気軽さでは電動アシスト自転車に、利便性と快適さでは軽自動車に負けてしまっているのが現状だ。
原付の高額化した理由は二つ。排ガス規制は排気量が小さいほど対応が困難でコストがかかる。さらに原付一種がほぼ日本でのみ流通しているのも大きな要因だ。
50ccは日本独特の免許制度が生んだ排気量で、海外は100~150ccがコミューターの主流。ほぼ国内専用である50ccは、大量生産によるスケールメリットがないため、市場価格を高くせざるを得ない。
51cc以上のクラスには、2022年11月1日から「平成32年(令和2年)排ガス規制」が全面適用されたが、50ccは対策が困難であり、さらなる高価格化を招くとして、2025年11月まで適用が延期された経緯がある。
ホンダが11月に発表するEV第1弾の車名をスクープ!
2025年までは対策を施さずに販売を続けられるワケだが、今後は電動モデル(EV)が台頭する可能性が高い。
その旗振り役となりそうなのが、ホンダ初の一般向けEVだ。
ホンダは、2022年9月の二輪事業説明会で電動バイク戦略を発表。その第一弾が11月のミラノショーで初公開される見込みなのだ。
説明会でホンダは電動バイクを次の三つに区分し、発売予定時期を明らかにした。
●EB=電動自転車(最高速25km/h以下)
●EM=電動モペット(最高速25~50km/h) ※EB/EMと合わせ、2022~2024年までに5車種を中国、アジア、日本、欧州で発売予定
●EV=電動ビークル ※趣味性の高いFUN領域のバイク。2024~2025年までに日本、アメリカ、欧州で4モデル発売
これ以外にも日欧とアジア向けに「パーソナルユース」のコミューターEVを2車種予定。ホンダは2025年までに合計10車種以上の電動バイクをグローバルでラインナップする予定だ。
では、11月のショーで発表になりそうな電動バイクは何か。情報筋によると「2023年4月頃に日本でも一般向けモデルが発表もしくは発売される可能性が高い」という。電動自転車と電動モペットのどちらかと言えば、日本国内で原付一種の将来を左右する電動モペットの優先度が高いはずだ。
したがって今回登場するのは一般向けに販売する電動バイクで、スクータータイプと予想される。
そして情報筋によると車名は『EVP1』を名乗るという。恐らくEVは“Electric Vehicle”、Pは“Personal”(個人)の意で、「個人向けEVの1号機」を表す。そのものズバリ、直球の車名ゆえにホンダの本気が感じられる。
さらに原付一種=50cc相当(定格出力0.6kW以下)と原付二種=125cc相当(定格出力0.6kW超~1.0kW以下)の2バージョンを用意する見込み。免許や目的に応じて選択できることになる。
ライバルはE-ビーノ、ホンダ初の一般向けEVスクーターが発売へ
この予想が実現すれば、ホンダの電動バイクが初めて一般ユーザー向けに発売されることになる。意外と思う人もいるかもしれないが、ホンダの電動バイクは、1994年のCUV ESから始まり、2010年のEV-ネオ、2018年のPCXエレクトリック、2020年のベンリィe:と続くが、いずれも官公庁向けのリースや法人向けのリース販売などだった。
今回ついに一般向けEVが発売となればトピックである。さらに、国内4メーカーらによって設立された「ガチャコ」(Gachaco)が、2022年秋から電動バイクの共通規格バッテリー「ホンダモバイルパワーパックe:」のシェアリングサービスを開始。新型EVももちろん同サービスに対応するはずだ。
もし、ホンダ初の一般向け電動モペットが発売されるとすれば、ライバルはズバリヤマハのE-ビーノになる。E-ビーノは2022年8月にバッテリー容量を従来の1.2倍に増やし、1充電あたりの走行距離を29kmから32kmに伸ばしたばかり。ホンダの電動モペットがどれほど超えてくるのるかも注目したいところだ。
ホンダの象徴、スーパーカブはEV化での存続に期待!
原付の電動化が進む場合、気になるのはホンダを代表するアイコンの一つ、スーパーカブ50の去就である。
前述のとおりホンダの電動バイク戦略では「パーソナルユース」のコミューターEVを2機種発売予定としている。この一つがスーパーカブ50の後継機と予想したい。
根拠として、現在モンキー125、スーパーカブC125、CT125ハンターカブ、ダックス125ら往年のモデルを現代にリバイバルした「クラシックウイング」がグローバルに好評を博している。この流れに乗り、カブのコミューターEVを発売すれば、一挙に普及が見込めそうだ。
現に2015年の東京モーターショーには電動カブの「EVカブコンセプト」が出品されており、本来ならスーパーカブ60周年の2018年に市販される予定だった。
様々な事情で市販化には至っていないが、前述のとおり日本国内では原付一種の次期排ガス規制が2025年11月に設定されている。そしてホンダのコミューターEVの投入時期もこれを見越したタイミングなのは明らか。エンジン版のスーパーカブ50を高いコストを払って存続させるより、電動化した方がコスト面でも企業イメージの面においてもメリットは大きいはずだ。
なおビジネス向けとしては、ジャイロe:、ベンリィe:シリーズが既に電動化され、法人向けにリース&販売されている。近年、原付一種のビジネスカテゴリーでカブ系の販売が年々落ち込み、反対にオートマのスクーター系が伸長。EVスクーターにビジネスの用途を任せ、EVカブはコミューターとしての側面を強める方向性もありえるのだ。
現代にこそ欲しい! アウトドアで大活躍するモトコンポのEV版
そしてもう一つ注目したいのがモトコンポのEV版「モーターコンポ」だ。
モトコンポは、1981年にホンダが発売した50ccレジャーバイク。折り畳み可能で、クルマのシティに収納できるよう設計されたモデルだ。ご存じのとおりシティは大ヒットしたが、モトコンポの販売は振るわず。しかし現在でもファンは多く、EM=電動モペットとして復活すれば、これまた“クラシックウイング”の一員として人気が出そうだ。
近頃のアウトドアブームも追い風になるだろう。元祖モトコンポのようにクルマへ積めるコンセプトは、ガソリン不要で横積みできる電動車が有利。キャンプ地でのちょっとした移動やポータブル電源としての活用にも最適だ。また、災害時にも電源として活用できるので、乗り物以外の用途にも幅広く使える。
いずれにせよ11月8日開幕のミラノショーで発表されるのはスクーターで、EVカブ、モーターコンポが登場するとしても先の話になる。
――日本は海外に比べ、EVバイクの導入が進んでいない。充電できる住環境やインフラの整備不足など様々な課題が理由の一つだが、魅力的なモデルが登場すれば、事態が大きく進展する可能性がある。ホンダの象徴であるスーパーカブ、そしてモトコンポのEV版は、まさに時代を変える一手になるだろう。
ガソリンエンジン版50ccが風前の灯火の今、まさに求められているモデルと思うのだが……どうですかホンダさん!?
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投稿 ええっ……スーパーカブも電動に? 「50cc原付」が全廃の危機!! 気になるホンダの電動バイク事情 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。