同乗者のマナーがあまりに悪すぎて閉口したという経験をしたことはないだろうか? 同じクルマに乗っていることが恥ずかしい……なんてことはさておき、問題なのは、マナー違反の当事者ではない運転者が違反点数や反則金を科せられることがあるということ。
もしあと数カ月頑張ればゴールド免許が取得できるなんて時だったら、怒髪衝天ものだ! さらに腹立たしいのは、同乗者の免許証には何の影響もないのだ!! 「いやーあとちょっとでゴールド免許なんだよね。安全運転、無事故無違反で頑張らなくちゃー」。あなたが同乗者のマナー違反で取り締まりを受けた直後にこんなことを言われた日には……。
そうなってくると、同乗者のマナーの悪さや違反行為は言いづらいから我慢するしかないなんて言っている場合ではないのだ。
ということで、見かけたら速攻で「やめろー!!」と言うべき違反行為や悪マナーを紹介しよう。
文/藤原鉄二、写真/写真AC
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美容より法律!! 前席サンシェードは絶対NG
助手席に乗った彼女が「まぶしい、お肌に悪いから日焼けしたくない~」などと言って、走り出しても助手席に付けたサンシェードをいっこうに外す気配がない……。そんなわがまま行為のしっぺ返しは運転者であるあなたにくることはお忘れなく。
運転席、助手席の窓にサンシェードを付けると、視界を妨げ、安全を確保できないと判断される。これは、道路交通法第55条第2項「乗車積載方法」の違反行為として見なされ、普通車は6000円の反則金と違反点数1点が科せられるのだ。もちろん、カーフィルムであっても運転者の視野を妨げると判断されれば違反となる。
いっぽう、後部座席の窓ガラスならサンシェードを付けてもOK。もしどうしても「日焼けするから外したくない!!」と駄々をこねられたら、後部座席へエスコートしよう。
ちなみに、ペットを抱っこして窓から顔出しさせていたりすると、同じく「乗車積載方法」の違反行為と見なされる。
叱責は優しさ! シートベルトは正しく着用させる
横を見ると、シートベルトを外していたり、肩の部分のベルトを脇の下に通した状態でしていたり……。そんな同乗者に遭遇したことはないだろうか? たしかに、背の低い人は顎にベルトが引っ掛かって不快、肩が痛い、胸が締め付けられて痛いと感じることがあるようだ。
しかし! そういった行為に目をつぶってはいけないのだ。
道路交通法第71条の3の2項では「自動車の運転者は、座席ベルトを装着しない者を運転者席以外の乗車装置に乗車させて自動車を運転してはならない」と規定しているのだ。
もちろん、シートベルトを正しく装着していない場合でも、シートベルトをすると痛いなどと言い訳をしても厳重注意ではすまないことが多い。
また、後部座席シートベルトについても、高速自動車国道および自動車専用道路では着用義務があり、違反した場合は運転者に対して違反点数1点が科せられる。
シートベルト未着用が認められているのは、「負傷もしくは障がいのため、または妊娠中であることにより、座席ベルトを装着することが療養上または健康保持上適当でないとき」のみ。
つい忘れてしまいがちな後部座席シートベルトだが、実際、「警察庁・JAF合同シートベルト着用状況全国調査結果(令和3年)」によると、運転席、助手席はともに着用率が96%を超えているが、後部座席同乗者の着用率は一般道路で、42.9%、高速道路等で75.7%と低くなっている。
さらに同データによると、後部座席シートベルト非着用時の死傷者数に占める死者数の割合は、高速道路で着用時の約19.4倍、一般道路で着用時の約3.5倍と高くなっている。
とにかく、シートベルトに関しては運転者の点数云々の話ではなく、同乗者の命を守るもの。シートベルトを正しく着用しているかは常時確認し、問題ありなら躊躇なく注意をすべきなのだ。
違反&恥ずかしいのWパンチ!! ダッシュボードはフットレストじゃない
海水浴場などの観光地でけっこう見かけるのが、助手席側のダッシュボードの上にドカ~ンと両足がのっかっているクルマ。
これは、「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」という道路交通法第70条に抵触すると見なされる可能性がきわめて高い行為なのだ。
助手席の人がダッシュボードに足をのせると助手席側のドアミラーの視界が遮られてしまうからだ。
違反として取り締まりを受ければ、普通車で反則金9000円、違反点数が2点が科せられる。
たまに子どもが足を乗せていたりするのを見かけたりすることもあるが、もちろん、子どもだって同じ。「子どもがやっていたことなんで~」なんて言い訳は通用しない。
そもそも、ダッシュボードに足をのせるという行為は行儀が悪い以外の何ものでもない。そんな同乗者を乗せているとあなた自身も周囲の人から同類と見られてしまう。心の友でも大切な彼女であっても、毅然とした態度で注意をしよう。
定員オーバーは窮屈じゃなきゃOKじゃない
「ちょっとそこまでもう1人乗せてって~」と頼まれたものの、その1人を乗せたら定員オーバー。一度断ったとしても、座席にけっこうゆとりがあると「1人くらい大丈夫でしょ?」とゴリ押しされたら、「仕方ないか……」と思いがち。
しかし、定員オーバーは道路交通法第57条の「乗車又は積載の制限等」に抵触し、あなた自身に定員外乗車として普通車で6000円の反則金、違反点数1点が科せられる。
うっかり定員オーバーになってしまいがちなのが子どもを乗せる場合。子どもとは12歳未満で、12歳以上は大人と定義されている。体が大きい小さいは関係ない。
子ども1.5人で大人1人分。ということは、乗車定員から大人の数を引いて、その数に1.5掛けることであと何人、子どもを乗せてOKなのかを割り出すことができる。
たとえば、乗車定員5人で、大人が3人乗車している場合、(5-3)×1.5=3。つまり、子どもはあと3人乗せられるということになる。ただし、チャイルドシートを付けていてスペースが十分ではないなど、ギュウギュウな状態は危険なので、スペースと相談することも必要だ。
定員は国土交通省による「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」に定められていて、シートベルト同様に「安全を確保できる人数」という観点から決められているもの。車内には定員分のシートベルトしか設置されていないうえ、走行性や操作性に影響を及ぼし、事故を起こしやすくなる恐れもある。
定員オーバーは見つからなければ大丈夫と軽く思ってはいけないのだ。
抱っこはチャイルドシートがわりにはなりません!
前項同様、「ちょっとそこまで乗せてって~」と。ちょっと待て、その人の腕の中には乳飲み子が……。しかし、あなたのクルマにはチャイルドシートがついていない。そんな時は心を鬼にして断ろう。
6歳未満の子どもの場合は絶対にチャイルドシートにのせなくてはならないのだ。「大丈夫。私が抱っこしているから」と言われても、大丈夫じゃない、絶対にダメなのだ。道交法の第71条の3の3項に定められている「幼児用補助装置使用義務」違反となり、あなたに違反点数が1点が科せられてしまうのだ。
チャイルドシートは命を守るための装備。抱っこでは衝突時の衝撃で子どもを抱え続けることは不可能で、最悪の場合、子どもがフロントガラスを突き破って車外に飛び出してしまうこともあるのだ。
自分の点数ではなく命を守るという意味でも、ここは毅然とした態度で断るほうが相手のためにもなるのだ。
ただし、子どもが高熱を出して救急病院に連れていくといった緊急事態で乗せてあげるような場合は例外として免除される。
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