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 日野自動車によるエンジン認証試験の不正問題で、国交省から是正命令という厳しい処分を受けたことで同社はこのほど、再発防止策となる「3つの改革」を公表した。2022年10月7日には同社取締役や4人が辞任しているが、果たして今後復活への道筋を辿ることは可能なのか、国沢光宏氏がクルマ界全体での視座からレポートする。

本文/国沢光宏、写真/日野自動車、AdobeStock

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■回復への道筋は現在も見えてこないが……

すでに10月から生産が再開されている日野自動車の小型トラック、デュトロ

 日野自動車の厳しい状況は続く。2022年10月27日に、今まで開示を見送っていた2023年度の連結業績予想を発表した。「都合の悪いことは隠蔽か?」とばかり調べてみたら悪意あって開示を見送ってきたのではなく、日野自動車自身、どこまで厳しい状況になるのか掴めなかったためらしい。

 実際、発表された数字を見ると、連結営業利益は前年比で82%と大幅減。加えて今期利益については再び非公開としている。これまた「隠蔽か?」となるだろうけれど、特損分についてはその規模すらわからず、今期は最終赤字になる可能性が大きいという。

 確かに今のタイミングで日野自動車全体のダメージを予測することはできないだろう。というのも、現在進行形で不正の影響の全貌が見えていないからだ。そして回復への道筋も明確になっていない。

 具体的に書くと、現在販売している車両については対応ずみなので問題なし。さらに直近の排気ガス規制の不正も状況が明確になっている。すでに走っているクリーンディーゼル車両は耐久性に課題あるのだけれど、発表されているリコール対策を行うことで問題なし。大半の車両は大気を汚すことなく対応できる。

■問題の根本は旧世代のディーゼルエンジン

問題となるのは旧世代のディーゼルエンジンを積んだトラック。一酸化炭素の許容値は現在2.22までだが、1999年までは9.2まで許容されていたというから驚き(lesterman@AdobeStock)

 じゃあ、何が問題かとなれば、古い世代のディーゼルです。

 例えば、最新の規制値だと人体に有害な『CO』(一酸化炭素)は2.22までしか許容されない。しかし、1999年までは9.2と4倍以上。1990年までなんか980という、恐ろしいほど汚い排気ガスを出していた。光化学スモッグの原因になるNOxも直近の0.4に対し、1990年まで350! 排気ガス浄化装置がなく、そのまま燃焼ガスを大気に放出していたからだった。

 日野自動車のディーゼル不正は少なくとも2003年から行われていたという。2003年というのはディーゼルエンジンに『新短期規制』(編註:平成15年排出ガス規制、初めて粒子状物質への対応が求められた規制)という厳しい規制が義務づけられた年で、ここから急激にディーゼル車の排気ガスはクリーンになっていく。

 発表された日野自動車のリコール対応は2016年から始まった最新の規制値に対するもの。それ以前に規制はどうなっているのか明確になっていない。

 約20年前に施行された新短期規制車の排気ガス不正がどんな内容なのか、もはや明確なデータは残っていない可能性が大。そこまでさかのぼって対応しろ、ということになれば資金的にも技術的にも途方もない負担になってくることだろう。

■役員ら4人の処分で幕引きの可能性大か

日野自動車のWebサイトのトップページで掲げられているお詫び

 まったく個人的な意見ながら、当時のディーゼルは台数的にも減っているだろうし、その時に不正をした人間だって残っていない。責任の追及は難しいと思う。

 日野自動車も認識しているのか、取締役ら4人を含む処分を行った。これにて一件落着になる可能性だってある。人の噂も75日と言われるとおり、一般人の意識から消えていけば、会社の立て直しだけですむだろう。

 この記事だって興味を示す人は少ないかもしれない。だとしたら、それも悪くないと思う。日野自動車は日本の物流にとって大切な企業であり、なくなったら困る。

■日野に求められるのはどこよりも真摯な企業姿勢だ

日野自動車にとって今回の一連の不正で失ったものは非常に大きい。ここからどこまで失地回復できるのか、真摯な企業姿勢が求められるのは言うまでもない

 今後、不正を行わない企業体勢を作り、二酸化炭素の排出量が少ない優れたトラックを作ってくれればいい。海外輸出で貴重な外貨を稼いでくれればいい。国民から許してもらうか、意識の外になれば日野自動車は自主再建の道を邁進するのみ。

 メディアは日野自動車の行いをウォッチしていくのが責任だ。過去を猛省し、どの企業よりも熱心な社会貢献をしてくれることを願う。

 ただ、今回の不正で失ったものは大きい。特にトヨタが受けた失望の度合いたるや予想以上だった。次世代の環境自動車をオールジャパンで取り組んでいこうという目的で作られた商用車連合の「CJPT」(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジー、トヨタが主となって作った組織)から強制退会させられたり、日野自動車で生産していたトヨタブランドの見直しをされたりなどなど。真摯な対応を取らないかぎり、ダメージ回復は難しい。

 一方、世界的な規模で見るとカーボンニュートラルは必達目標。物流部門だって最初の経由地点である「2030年に二酸化炭素の排出量46%減」をクリアしなければならない。

 燃料電池などトヨタの技術を使いやすかった日野自動車は本来ならやるべきことが多かったハズ。とにかく失った信頼を回復すべく、社を上げて社会貢献(環境自動車の開発も含まれる)して欲しいと強く思う。

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投稿 悪質なエンジン認証不正問題で地に落ちた日野自動車のイメージ!! 果たして苦境を脱して復活できるのか?自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。