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AMDが2022年9月末から発売したRyzen 7000シリーズと対応するソケットAM5対応マザーボードですが、価格面で競合のIntelに劣後し苦戦が強いられていますが、そもそもなぜRyzrn 7000シリーズとAM5対応マザーボードが高いのか原因が明らかになり始めています。

トータルコストが高いRyzen 7000とAM5対応マザーボード

Why AMD’s Ryzen 7000 and Motherboards Cost So Damn Much | Tom’s Hardware

AMDが2022年9月27日に発売したRyzen 7000シリーズでは価格を据え置きつつ、TSMC 5nmを採用するZen4アーキテクチャーを搭載し、Ryzen 5000シリーズやIntelの第12世代CPU Alder Lake-Sを超える高いパフォーマンスを発揮するモデルとなっています。

しかし、CPU自体のパフォーマンスが高く多くのモデルは価格据え置きにはなっていますが、CPUを買う上で必須となるマザーボードが廉価版でも3万円と高価でメインメモリーもDDR5のみ対応ということで売れ行きがAMDの想定を下回っているようで、直近では減産が行われるとも言われています。

また、IntelではAMDのRyzen 7000シリーズを上回る性能の第13世代CPU、Raptor Lake-Sをより安価な価格設定で販売するなどRyzen 7000とそのマザーボードは厳しい戦いを強いられていますが、そもそも今回AMDが発売したRyzen 7000シリーズとAM5対応マザーボードが競合のIntelよりなぜここまで高価になってしまっているのかToms Hardwareで推察が行われています。

CPUやIOダイのプロセス微細化が仇に。製造コストが高騰。

CPUなどの半導体製品の多くは年を重ねる毎に新しい製造プロセスを用いています。これにより同じ面積に搭載できるトランジスター数が増え性能と省電力性能の向上が行えます。しかし、新しい製造プロセスでは量産までにかかった研究開発費や設備投資のコストが高く付き、結果的に製造コストは高くなる傾向にあります。また、詰め込めるトランジスターの数が増える事で設計や検証に掛かるコストも膨れ上がり、1mm2辺りの価格は急騰する傾向にあります。

AMDではこのようなコスト高騰に対応するため、チップレットを採用しダイサイズを小型化する事で歩留りを大幅向上させてコストを低減しています。ただ、Ryzen 7000シリーズのCPUダイで採用されたTSMC 5nmはIntel 7 (10nm相当)に比べると非常に高価で例えチップレットを採用してもコスト面で打ち勝つ事は困難になっています。また、Intelの場合、Intel 7は既に登場から数年が経過しており新たな設備投資はほとんど不要かつすべて自社工場でチップの製造からパッケージングを行っているためAMDよりコストは低くなる傾向にあるようです。

上記に加えて、Ryzen 7000シリーズではCPUダイはTSMC 5nmに進化していますが、I/OダイもGlobal Foundry製の12nmダイからTSMC 6nmで製造されたものに変更されています。I/Oダイのプロセス微細化もコストを押し上げる原因となっているようです。

特にダイサイズ面では2つのCPUダイとI/Oダイを搭載するRyzen 9の場合、CPUダイは70mm2を2つで140mm2、これに加えてI/Oダイの125mm2が加わり合計265mm2程度の大きさになります。一方でIntelのCore i9-13900Kなどはモノリシックダイの257mm2となっており、合計するとIntelの方がダイサイズは小さく、さらに面積やトランジスター辺りのコストもIntel製CPUの方が安いと見られています。

AM5対応マザーボードはTDP170W化がコストを押し上げる要因に

Ryzen 7000シリーズで最も評判が悪いのがAM5対応マザーボードの価格で、ミドルレンジモデルのB650マザーボードでも最低3万円から、X670に関しては5万円からと非常に高価になっています。

この高い販売価格に関してはソケットAM5で変更された様々な設計や機能が影響してしまっているようです。

価格押し上げ原因の1つがLGAの採用です。AMDではLGAを採用するのが初めてでAM5ソケットとリテーナーに関してはIntel製品より高コストとなっているようです。ただ、このコストについては量産が進むにつれて量産効果により低下していくと見られています。

もう一つ主因とも言えるのが、Ryzen 7000シリーズで引き上げられたTDPと新しい電流制御です。Ryzen 5000シリーズまではベースTDPは105Wでピーク時の電力は142Wでした。しかし、Ryzen 7000シリーズからはベースTDPは170Wに引き上げられると共にピーク電力は230Wに引き上げられ、EDCとTDCの電流値も増加させました。

このベースTDPの引き上げによってマザーボードメーカーは例えコスト重視のB650においてもベースTDPの170Wを満たせるような設計を行う必要があり、より多くのフェーズまたはより高い電流のMOSFETを使用しなければならず、コスト高騰の原因となっています。

さらに、この電力の増加に際してAMDでは新しく採用した電流制御であるSVI3が用いられておりこれにより170W~230Wの電力をソケットに安定かつ高効率に供給する事が可能になっています。しかし、このSVI3に関しては規格が新しく、これらに対応できるパワーICやMOSFETが限られているためコストを高める原因になっているようです。ただ、こちらもSVI3を搭載したAM5マザーボードが売れれば量産効果が発揮されてコストが下がっていくと見られていますが、AM5マザーボードが売れなければコストは高止まりしたままになってしまいます。

TDPなど消費電力の話になるとIntel製CPUの方がピーク電力が高いはずと思いそうですが、コストに大きく関わるのはベースTDPのようです。特にエントリーモデルやミドルレンジモデルなどでコストを下げたい場合、電源回路はベースTDPでも動作に支障が無い範囲で最小限のものを搭載する必要がありますが、最大125Wと170Wでは電源回路の設計が大きく変わってくるようです。

ちなみに、エントリーマザーボードでCore i9-13900などハイエンドCPUを全開で回すとパフォーマンスが落ちるのは電源回路をケチっているからですが、エントリー・ミドルレンジであればそれでも問題はありません。

関連記事:AMD Ryzen 7000対応、ミドルレンジマザーB650の価格判明。最低3万円から

 

Ryzen 7000シリーズに関してはIntelと見比べるとどうしてもコストパフォーマンス面で劣っており、マザーボードまで含めると絶望的なレベルと言えます。この原因としてRyzen 7000側はTSMC 5nmや6nmなど高価なプロセスを使った事が挙げられていますが、今後TSMC 4nmや3nmなどを採用したZen5 Ryzen 8000なども登場する予定ですが、更に高騰するのでしょうかね・・・実際にTSMCでは3nmの製造に向けた開発費や設備投入で数十兆円規模の投資を行うとしているため、今後出現するCPUでは更に価格が高騰してもあまり驚かないですね。。。

AM5マザーボードに関しては部品のコストがまだ下がりきっていないという点も価格が高い原因の一つとして挙げられていますが、TDPを170Wにしてしまったことによる弊害の方が遥かに大きそうです。でも、それならラインアップ的には複雑になってしまいますが、Ryzen 7のTDP 105Wまで対応した安めのマザーボードなど出して欲しい所です。

 

すぐに買えるかは分かりませんが、新型PS5と言われている『CFI-1200』のエントリーがAmazonで開始されていますので、欲しい方は早めのエントリーする事がオススメです。

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