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お得な特別仕様車と通常モデル ディーラーの販売方法はどう違うのか?

 新型モデルが登場してから1年後など、販売の勢いが一段落したときに登場するのが特別仕様車だ。ベースとなるカタログモデルに、人気のメーカーオプションや上級グレードの装備を盛り込み、割安で販売を行う。

 特別仕様車は、装備が充実していて安価であることから、ユーザーメリットが大きく、さらに販売店としても新型車に近いカタチでプロモーションでき、販売効率が高い。

 カタログモデルと特別仕様車、ディーラーでの販売方法に違いがあるのだろうか。それぞれの売れ行きなどにも触れながら、ディーラーと特別仕様車の関係性を深堀していこう。

文/佐々木 亘、写真/TOYOTA

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■ディーラーにおける特別仕様車の存在感

2022年4月登場のトヨタ アルファード特別仕様車 S“TYPE GOLD III”

 ある程度の販売実績があるクルマであれば、特別仕様車が設定される。長期間、改良の手が加えられなかったり、新型発表当時から販売台数が大きく右肩下がりになってきたりすると、販売の起爆剤として投入されるのが特別仕様車だ。

 モデル末期のクルマや、長期的に改良等の変化が無く、市場の注目から外れてしまった(営業マンも存在を忘れかけている)クルマが、特別仕様車になって甦る例も少なくはない。特別仕様車の設定は、「改良までは出来ないけど、再び注目を集めてちょうだい!」というメーカーの気持ちが入っているだろう。

 ベースモデルとは違い、「特別」かつ「不定期」に設定されるのが特別仕様車なのだが、中には登場を確約され、ユーザーが待ち焦がれているものもある。

 例えば、アルファードの「S TYPE GOLD」(ヴェルファイアの「GOLDEN EYES」)やヴォクシーの「煌」がいい例だ。こうした特別仕様車には根強いファンがいて、新型車が出てもしばらく様子をみて、特別仕様車が出てくるタイミングで買い替えるというユーザーもいる。

 人気があり認知度の高い特別仕様車への問い合わせは多く、アルファード・ヴェルファイア、ヴォクシーなどでは、新型モデル登場と同時に「タイプゴールドは?煌はいつでるの?」と、気の早い質問が多く飛び出す。

 毎度名称や形式を変更する特別仕様車が多い中で、特別仕様をあえて定番のカタチにしてしまうメーカーの戦略もすごい。過去には三菱やスズキが、スポーツブランドとのコラボを行い、定期的に特別仕様車を出していた。こうした取り組みは、ブランドを形成し、ファン構築に大きな役割を果たしている。

 特別仕様車は、販売を担当するディーラーにとって、存在を思い出す栞のような存在であり、販売状況を大きく好転させる可能性を持つもの。文字通りの特別なクルマなのだ。

■入手ルートは通常と違う? 台数限定や期間限定の魔物

2022年4月登場のトヨタ ヴェルファイア特別仕様車 “GOLDEN EYES III”

 特別仕様車には大きく分けると2つの種類がある。一つは販売期間をある程度定めたもの、もう一つは販売台数を定めたものだ。前者を特別仕様車、後者を限定車と呼ぶこともある。

 特別仕様車は、通常のカタログモデルと扱いは大きく変わらない。

 メーカー側の生産ラインも大きな変更を施す必要が少なく、オーダーが入った分だけ、順当に生産していくのがほとんどである。売れる見込みの高い特別仕様車になると、ディーラーへの配車枠が大きくなり、逆にベースモデルの方が減産されて、生産調整を受ける場合もあるだろう。

 一方で、台数限定や完全受注生産のような特別仕様車に関しては、ディーラーがメーカーに対してクルマをオーダーする方法が変わってくる。

 近頃はプレミアム感を出したいのか、台数限定や注文期間を区切った特別仕様車が多く出てきており、ディーラーがユーザーをコントロールできず、販売に苦慮する姿を見ることが多い。

 台数限定の場合は2つのケースの販売方法が一般的だ。

 一つは、過去の販売実績に則って、全国のディーラーに対して先に配車枠を通知し、その台数分の販売を、ディーラー自身に任せるケース。ディーラー側で先着販売にするのか、それとも抽選販売にするのかを決められる。

 配車数が決まっていて、誰がどこへ何台売るかをディーラー側で調整できるため、販売の自由度は高い。

 もう一つが、ディーラーを通して抽選販売を行うとメーカーが通知するケース。この方法はトラブルが絶えない。ディーラーは抽選申込を受け付けるだけであり、クルマが、いつ何台入ってくるかわからないのだ。

 自社の大事なユーザーが、メーカーが行う抽選に漏れてしまえば、そのクルマを入手することは出来なくなる。クルマが買えるのか、それとも買えないのかをディーラーが説明できずに、販売現場では対応に苦慮する販売方法だ。

 販売促進につながる台数限定や期間限定の特別仕様車には、魔物も潜んでいる。売りの専門家であるディーラーが、仕入れの状況を読めなくなる限定特別仕様車の存在は、必ずしも善とは言えない。

■やっぱり売れるから設定されるのか? 特別仕様車の販売実績はいかほど?

2020年10月登場の先代トヨタ ヴォクシー特別仕様車 ZS “煌 III”。特別仕様車にはそれ自体に広告のような効果がある。現行型ヴォクシーにもいずれ設定されるか?

 特別仕様車だから売れ行きは良いのか。販売実績について考えていこう。

 先に挙げた、アルファードS TYPE GOLDやヴォクシー煌といった定番の特別仕様車は飛ぶように売れる。売り手としては「特別仕様車ではなく、それを通常モデルにした方が良いのでは?」と思うほどだ。

 では定番以外、単発タイプの特別仕様車はどうか。例えばプリウスの「ブラックエディション」、「セーフティプラス」といった、装備充実型・特別色設定型の特別仕様車は、一時の起爆剤にはなるものの、その勢いは長く続かない。

 余程センスのいい色づかいや、お得な装備がセットにされて価格据え置きなどの目玉が無い限り、特別仕様車だから販売が伸びるというケースは少ない。

 それでも、特別仕様車を発表することにより、その車種全体にスポットが当たり、カタログモデルの売れ行きが良くなるケースは大いにある。特別仕様車は、その仕様自体が売れるというよりも、そのモデルの宣伝広告が増え、全体の実績が上がるというメリットの方が多いだろう。

 ディーラーとしても、メーカーの販売戦略に乗り、特別仕様車を武器に販売台数の増加を目指す。特別仕様車が設定される裏側には、こうした戦略や思いが交錯しているのだ。

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