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 いよいよ秋も深まり、冬まであとわずかだ。この季節、特に太平洋側は乾燥がひどくなるが、そうなると怖くなるのが火災だ。住居はもちろんだが、自動車の火災にも注意しなければならない。

 そこで自動車の火災の原因だが、これが実は多岐にわたっている。エンジンや電気系の不具合はもちろんのこと、搭載物やちょっとしたDIYが原因になることもある。そんな自動車火災の原因を分析した。

文/藤田竜太、写真/Adobe Stock(トップ画像=Andris@Adobe Stock)

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■乾燥する季節……クルマも「火災」に注意

昨年(2021年)の一年間で3千件以上の車両火災が起きている(vladimir kondrachov@Adobe Stock)

 秋から冬にかけては空気が乾燥し、火災が発生しやすい気象条件になる。火災というと住宅や建物がメインで、車両火災は稀だと思うかもしれないが、消防庁防災情報室がまとめた「令和3年(1~12月)における火災の状況(概数)」を見ると、昨年1年間で、3494件の車両火災が起きていることがわかる。

 一日平均9.57件も発災しており、車両火災は意外に身近なトラブルで、他人事とは思わない方がいいだろう。

 そうした車両火災の原因はどこにあるのか? 国土交通省の「令和3年事故・火災情報の統計結果」によると、装置別火災情報件数割合は、原動機が17.1%、電気装置が15.9%、走行装置が7.3%、制動装置が5.2%、保安・灯火装置が5.0%、燃焼装置が3.0%となっている。

 こうした車両火災は、よほど古いクルマにしか起きないのではと考えがちだが、実際走行距離別に見ると総走行距離5万km超が全体の約45%を占めていて、総走行距離が増えるにつれ増加傾向があるのは否めない。

 もう少し詳しく、総走行距離・装置別火災情報件数を見てみよう。1万km以下のクルマの場合、電気装置が26.9%、原動機が7.7%、走行装置3.8%、制動装置3.8%、燃料装置3.8%と続く。

 これが1万~5万kmのクルマになると、電気装置が23.2%、原動機が21.7%、燃料装置14.5%、制動装置2.9%、保安・灯火装置2.9%、走行装置1.4%に。

 5万~10万kmのクルマは原動機が24.7%、電気装置が16.0%、保安・灯火装置が9.9%、燃料装置が3.7%、走行装置が1.2%、制動装置が1.2%。

 10万km超えのクルマだと、原動機が27.2%、電気装置が16.7%、走行装置が15.4%、制動装置が8.3%、保安・灯火装置が3.5%、動力伝達装置が3.2%、燃料装置が1.9%、操縦装置が0.3%と変わってくる。

 同資料による原因分析によると、火災情報件の18.9%が点検・整備の不具合・ミスによるもので外部要因によるものが10.9%、社外品・後付装置によるものが10.1%とのこと。

■車両火災の原因と防止

やはり、というべきか、オイルやガソリンなどの漏えいが車両火災原因のトップとなっている(serhii@Adobe Stock)

 また令和3年の消防白書では、車両火災の出火原因のトップ3として下記を挙げている。

1位:排気管(着火物の漏えい等)15.0%
2位:機関内配線(配線のショート等)8.7%
3位:電気機器7.3%

 また放火(放火の疑いを含む)も4.5%と高い数字になっている。

 これらの資料から車両火災を防ぐには、まず油脂類のリークを見逃さないことが肝要だというのがわかる。

 インジェクター付近からのガソリンの漏れや、カムカバーのパッキンやオイルフィルターの取り付け部、カムシール、クランクシール、パワステホースなどからオイル漏れがあると、それがエキゾーストに垂れて出火する可能性が高くなる。

 定期的な点検を怠らず、オイル交換やフィルター交換をした際は、こぼれたオイルをきちんと拭き取るのも忘れずに。

 もうひとつは配線・電気系。一番危険が指摘されているのは後付け配線。エレクトロタップによる配線の分岐や簡易接続配線、三つ叉配線、タコ足配線などは、車両火災の大きな原因で、電気系が原因の車両火災の大半は、後付け配線に問題があったと言われているほど。

 ライトをHID化したり、LED化したり、イカリングにするなど、社外品に変えたことが原因で車両火災が起きた例も知られている。

 いずれにせよ、どうしても後付け配線が必要な場合は、電装関係の専門家に作業を依頼するようにすること。

 またインストルメントパネルやコンソール、ドアなどのスイッチ類に、飲み物などをこぼして濡らしたり、ケミカルスプレーなどがかかったりするのもショート、発火の原因になるので要注意。

 もうひとつ、バッテリーのターミナルが緩むことで発生するショートもメジャーなトラブル。端子とバッテリー本体の確実に取り付けを見なおしておきたい。

大雨などで浸水した道路を走行すると電気系をショートさせる危険がある(Aleksandr Lesik@Adobe Stock)

 さらに大雨の時、冠水路に侵入してしまうと、電気系をショートさせるリスクが高まる。

 そしてJAFでは、整備や点検の際、エンジンルーム内へのウエスや工具の置き忘れによっても火災が起きる危険性が高いと注意を呼びかけている。

 その他、駐車場などでエンジンをかけたまま仮眠をした際に間違ってアクセルを踏み込んで、エンジンが空ぶかしで高回転状態を続けた結果、車両火災が発生した例も……。

 レアなケースでは、フロントウインドウにアクセサリーなどをつるす透明の吸盤が、凸レンズになって太陽光が集光され、内装が燃え出すパターンや、車内に置いておいたライターやスプレー缶が夏場の高温で爆発したという報告もある。

 したがって、クルマには、吸盤、ライター、スプレー缶の可燃性のものや、ペットボトルなど、余計なものを積みっぱなしにしないことも車両火災の防止になる。

 最近では、クルマ用の小型の消化器(炭酸ガスタイプ)も、ホームセンターやカー用品店でよく見かけるので、もしもに備えこうした消火器を購入し、常時クルマに積んでおくのもおすすめだ。

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