まとめ
- 唇の荒れは「乾燥した空気」「合わないリップケア製品」などの刺激が原因となりやすいです。
- 対策として、「ワセリンなどの保湿剤を塗る」「加湿器で寝室の湿度を保つ」などの工夫ができます。
- セルフケアで改善しない場合には、感染症やがんなどの可能性もあるので、病院で相談しましょう。
秋から冬にかけて、「唇の乾燥やひび割れ」でお悩みになる方が多いですよね。きれいな唇を1年中保つためにはどうすればよいのでしょうか?今回の記事では、唇のトラブルを予防 / 治療するためのコツについて、皮膚科専門医が解説していきます。
この記事を書いた医師の名前
やさひふ
Yasahifu
医師 / 皮膚科専門医 / 医学博士
Lumedia 編集長。怪しい医療情報に惑わされる患者さんを多く見た経験から Lumedia の立ち上げを決意。
皆さんのすこやかなお肌を守るため、Twitter で科学的根拠に基づいたスキンケア情報発信中。
唇の乾燥を防ぐために
唇の乾燥を防ぐためには、唇への刺激を減らしたり、唇を保湿するのが効果的です。
刺激のある物質を避けよう
まず唇への刺激を減らすには、適切なリップクリームや口紅を選ぶ必要があります。リップケア製品を唇へ塗った際に、「ヒリヒリ」「チクチク」「ピリピリ」と感じることはありませんか?心あたりがある場合、残念ですがその製品は貴方の唇に合っていません (参考文献 1) !唇が荒れる原因となりかねないので、他の製品に切り替えた方が良いでしょう。
また、あくまで一般論ですが、「唇が荒れている際には、下に列挙した成分が含まれないリップケア製品を使用するほうが安心だよ」とアメリカ皮膚科学会が提唱しています (参考文献 1) 。香料などが肌や唇に合わない方は決して少なくありません。製品選びの際に、成分表をチェックしてみると良いでしょう。
- 香料 (シナモン / シトラス / ミント / ペパーミントなど)
- メントール
- カンフル
- ユーカリ
- ラノリン
- オキシベンゾン
- フェノール
- 没食子酸プロピル
- サリチル酸ワセリン
リップケア製品以外でも、マンゴーや柑橘類などの食べ物、歯磨き粉やマウスウォッシュなどのオーラルケア製品も唇への刺激となることがあります (参考文献 2) 。これらの刺激のある物についても、「唇がしみる」などの自覚症状が出るようであれば、なるべく唇へ付けないように注意しましょう。
唇を舐めるのは NG !
また、唇を舐める、噛む、いじるなどの行為は NG です (参考文献 1) 。唇が乾燥していると、ついつい唇を舐めて濡らしたくなりますよね。しかし、これは逆効果のおそれがあります。唾液が唇の上から蒸発することで、余計に唇が乾燥しやすくなるのです。とはいえ、唇をなめる癖を完全に直すのは難しいと思います。もし舐めてしまったら、その後に低刺激のリップクリームを塗ってダメージを補ってあげましょう。
紫外線対策も念入りに
唇への刺激となりうる要因として、「紫外線」も忘れてはいけません。アメリカ皮膚科学会は、「外出前には SPF 付きのリップクリームを塗っておくと良いよ」と呼びかけています(参考文献 1)。(「 SPF って何?」という方は、以前に書いた「日焼け止めってどう選べばいいの?」という記事を先に御覧ください。)
実は、紫外線は唇のがんを招くこともあり、暑くて乾燥した地域に住んでいる方や、屋外で働いている方では、特にリスクが高いです (参考文献 2)。シミやシワ、皮膚がんを防ぐために「皮膚の紫外線対策」が重要なことは有名ですが、「唇の紫外線対策」についても心がける必要があるのですね。
(紫外線対策については、これまでの Lumedia の記事で多数取り上げてきました。こちらのページで紫外線対策の記事一覧をまとめているので、宜しければ併せてご覧ください)
保湿に気を配ろう
唇を保湿する方法としては、まずシンプルにワセリンなどの保湿剤を塗って唇を保護してあげることが有効です (参考文献 2) 。ワセリン以外にも、セラミドやジメチコンなどの保湿成分も役立つでしょう (参考文献 1) 。
また水をこまめに飲んだり、寝室に加湿器を設置して部屋の湿度低下を防いだりする方法もあります (参考文献 1) 。湿度の低下や寒さ、風などは唇にとって良くない刺激となりうる (参考文献 2) ので、なるべく安定した過ごしやすい環境を整えてあげましょう。唇は敏感ですから、やさしい環境でいたわってあげる必要があるのですね。
改善しない場合は?
なお、これまでに列挙した対策を2,3週間続けても唇の症状が改善してこないようであれば、セルフケアで頑張るのではなく、皮膚科専門医を受診する方が良いでしょう (参考文献 1) 。ただの唇の乾燥と思いきや、実はアレルギーや、カビなどによる感染症、がんなどの厄介な原因が潜んでいる可能性もあります。
見た目や問診だけで判断がつかない場合、アレルギーの有無をチェックする『パッチテスト』、カビが付着しているかを目で見て確認する『顕微鏡検査』、がんなどの可能性を確認するために唇の一部を採取する『生検』などの検査を受ける場合もあります (参考文献 2) 。症状や経過に応じて必要な検査は異なるので、担当医の説明をよく聞いた上で検査を受け、唇トラブルの原因を明確にしましょう。
以上、唇のトラブルを減らすためのコツについて説明いたしました。冬場でもきれいな唇をキープするために、低刺激のリップクリームなどを用いた対策をうまく取り入れて下さいね。健やかな唇を守っていきましょう!
COI
本記事について、開示すべきCOIはありません。
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