アップルは11月10日(米現地時間)、iPhone 14シリーズでの「衛星経由の緊急SOS」機能が、今月末から米国およびカナダで提供開始することをプレスリリースで発表した。具体的なリリース日や、必須となるiOSのバージョンについては、まだ明らかにされていない。
衛星経由の緊急SOSを支える通信インフラ開発に、アップルはAdvanced Manufacturing Fund経由で4億5000万ドル(約640億円)を投資。この資金の大半は、同社の衛星パートナーであるGlobalstarに提供されるとのことだ。ちなみにAdvanced Manufacturing Fundとは、アップルが米国製造業の発展のため、R&Dや設備投資を支援すべく、2017年に設立したファンドである。
この投資により、特別に設計・製造した新型アンテナが、アラスカ、フロリダ、ハワイ、ネバダ、プエルトリコ、テキサスなど、Globalstarの全ての地上局に設置されるとのこと。iPhone 14ユーザーがWi-Fiや携帯電話通信の電波が届かない場所でも緊急サービスにテキストメッセージを送ったり、「探す」アプリを使って衛星経由で自分の位置を共有でき、圏外でも安心できると謳われている。
ただし衛星に緊急SOSを送るには、空と水平線が直接見える理想的な環境であれば、メッセージの送信に15秒、(森林の)葉が薄い、または中ぐらいに茂った木の下では1分以上かかることがあるという。遮へい物が多かったり、密林のただ中では助けが呼びにくいのかもしれない(緊急サービスも駆けつけにくそうだが)。
今回のリリースで興味深いのは、「衛星経由の緊急SOS」の仕組みが詳しく説明されていることだ。iPhoneユーザーが緊急SOSを発信すると、時速約1万6000kmで地球低軌道を周回するGlobalstarの24基の衛星の1つがメッセージを受信する。さらに衛星は、世界中の要所に設置された専用の地上局にメッセージを送るという。
地上局で受信されたメッセージは、救助を要請できる緊急サービスや、最寄りの緊急サービス拠点でテキストメッセージを受信できない場合、アップルのトレーニングを受けた緊急スペシャリストがいる中継センターに転送されるとのことだ。
アップルのサポート文書では、本機能は「2022年11月に予定されているiOS 16ソフトウェアアップデート」が必須だと述べられている。メジャーアップデートのiOS 16.2は12月中旬だと予想されているが、その前にiOS 16.1.xなどのマイナーアップデートが配信されるのかもしれない。
またアップルは、2022年内に同機能を利用できる国を拡大するとも噂されている。すでにGlobalstarの日本法人が存在していることもあり、続報を待ちたいところだ。
- Source:Apple
- Source:MacRumors