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やっぱり強敵には勝てない? 新型クロストレックとライバル車比較

 スバルの大人気クロスオーバー「XV」がモデルチェンジして「クロストレック」に生まれ変わった。納車は2023年2月頃と少し先になる予定だが、2022年11月11日より予約受注が開始されたこともあり、注目度がさらに上がっている!

 そんなクロストレックを早くも同クラスのライバルと比較した。走りやパッケージング、快適性はどれほどのアドバンテージを持つのかを渡辺陽一郎氏に分析してもらった。

文/渡辺陽一郎、写真/SUBARU、ベストカー編集部

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■新型クロストレックと迎え撃つライバルたち

スバル クロストレック。XVがフルモデルチェンジを機に海外仕様と名称を統一した

 SUVは世界的に人気のカテゴリーとなり、日本でも新型車が活発に発売されている。

 今では新車として売られる小型/普通乗用車の約30%がSUVで、約25%のミニバンを上まわった。そこに約35%のコンパクトカーを加えると、国内販売の90%に達する。この3つのカテゴリーが、国内の小型/普通車を支えているわけだ。

 今の状況を反映して、XVがフルモデルチェンジを行い、車名を海外仕様と同じ「クロストレック」に変更する。今までのXVは、インプレッサスポーツがフルモデルチェンジを行った後で、その派生車種として発売されたが、クロストレックでは順序が入れ替わった。

 クロストレックの今後のスケジュールを販売店に尋ねると、以下のように返答された。※原稿執筆は予約受注直前の時点

 「クロストレックは、2022年11月11日に予約受注を開始する。価格もこの時点で分かる。駆動方式は前輪駆動の2WDと4WD(スバルはAWDを呼ぶ)があり、グレードは2種類を用意する。上級グレードの価格は、現行XVに比べて、約30万円高い。納車は2023年2月頃から開始する」

 新型クロストレックの上級グレードは、11.6インチインフォメーションディスプレイ&インフォテイメントシステム、運転支援テクノロジー、視界拡張テクノロジー、ドライバーモニタリングシステムなどを標準装着する。

 これらの現行XVには装着されない装備の価格換算額が20万円少々で、原材料費や輸送費の高騰に伴う値上げも加わり、販売店のコメント通り価格は約30万円高まる。

 現行XVに水平対向2Lエンジンを搭載する2.0e-Sアイサイトの価格は290万4000円だから、新型クロストレックの上級グレードは、4WDが320万円くらいだ。装備がシンプルなベーシックグレードは、上級グレードよりも約45万円安く、4WDが約275万円だ。2WDはさらに23万円ほど安く、252万円前後になる。

(編注)受注が開始された新型クロストレックの上級グレード「リミテッド」はFFが306万9000円~、4WDが328万9000円~。また、「ツーリング」のFFが266万2000円~、4WDが288万2000円~。(すべて税込価格:販売店調べ)

 そうなると新型クロストレックのライバル車は、売れ筋価格帯が250~320万円のSUVだ。まずはカローラクロスが挙げられる。

 低価格グレードも用意するが、1.8Lノーマルエンジンを搭載する売れ筋は、中級の2WD・Sで価格は240万円だ。ハイブリッドを搭載する上級の4WD・Zは319万9000円だから、クロストレックの予想価格帯とほぼ合致する。

 ヴェゼルもライバル車に入る。ノーマルエンジンは1.5Lと排気量が小さく、装備もシンプルだから、2WD・Gの価格は227万9200円に収まる。ハイブリッドを搭載した上級のe:HEV・4WD・Zは311万8500円だから、この価格帯も実施的にはクロストレックに近い。

■運転のしやすさ比較

クロストレックのライバルとなるホンダ ヴェゼル。視界の良さと車体のコンパクトさはヴェゼルに分がある

 クロストレックのボディサイズは、全長が4480mm、全幅は1800mm、全高は1575mmだ。カローラクロスの4490mm・1825mm・1620mmに近い。ヴェゼルは4330mm・1790mm・1590mm(e:HEV・Z)だから少しコンパクトだ。

 最小回転半径は、クロストレックが5.4m、カローラクロスは5.2mで小回りの利きが良く、ヴェゼルのe:HEV・Zは5.5mだから意外に大回りだ。

 視界はヴェゼルが最も優れ、カローラクロスはSUVの平均水準になる。以前のスバルは視界を重視したが、現行XVとインプレッサは後方視界が悪化した。クロストレックでは、これを若干ではあるが修正する。

●評価の順位
・No.1:ヴェゼル
・No.3:クロストレック
・No.2:カローラクロス

■内装の質感と居住性比較

スバル クロストレック車内。内装の質感はまずまず。シートの形状を見直し、前席の座り心地は快適になった

 内装の質感と造り込みは、3車種ともに同程度だ。ヴェゼルが少し上質だが、大きな差は生じない。

 前席の座り心地は、シートの形状を見直したクロストレックが快適だ。腰からヒップポイント、大腿部をしっかりと支えて、長距離の移動も快適に楽しめる。着座姿勢も乱れにくい。カローラクロスとヴェゼルは平均的な座り心地になる。

 後席の足元空間はヴェゼルが最も広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半だ。クロストレックは2つ少々で、カローラクロスは2つ弱と少々狭い。

●評価の順位
・No.1:クロストレック
・No.2:ヴェゼル
・No.3:カローラクロス

■荷室&シートアレンジ比較

クロストレックのライバルとなるトヨタ カローラクロス。荷室面積に余裕があり、リヤゲートの角度も立っているため、車格のわりに荷室容量が多い

 カローラクロスは、荷室面積に余裕があり、リヤゲートの角度も立たせた。荷室容量は後席を使った状態で487Lとされ、全長が4500mm以下のSUVでは最も大きい。クロストレックは315Lとされる。

 ヴェゼルは、全長の割に後席の足元空間を広げたから、荷室容量はカローラクロスを下まわる。その代わり燃料タンクを前席の下に設置したから、後席を格納するとボックス状の広い空間に変更できる。後席の座面を持ち上げて、後部のドアから車内の中央(前席の真後ろ)に背の高い荷物を積むことも可能だ。

●評価の順位
・No.1:カローラクロス
・No.2:ヴェゼル
・No.3:クロストレック

■動力性能&エンジンフィーリング比較

 最も注目されるのは、ヴェゼルの主力グレードが搭載するe:HEVだ。直列4気筒1.5Lエンジンは、主に発電機を作動させ、駆動はモーターが行う。そのために加速が滑らかでノイズも小さい。

 クロストレックは、e-BOXERと呼ばれるハイブリッドシステムを搭載する。エンジン回転数が下がっている巡航中にアクセルペダルを緩く踏み増した時など、モーターの駆動力が即座に立ち上がる。動力性能が高いとはいえず、加速感も少々地味だが、実用的なパワーユニットで運転しやすい。

 カローラクロスでは、直列4気筒1.8Lノーマルエンジンも選べるが、価格がクロストレックの売れ筋グレードと吊り合うのはハイブリッドだ。ハイブリッドは、ノーマルエンジンと比べた時の価格アップを35万円に抑えて割安感も強い。動力性能は大人しいが、加速は滑らかで運転しやすい。

●評価の順位
・No.1:ヴェゼル
・No.2:クロストレック
・No.3:カローラクロス

■走行安定性と操舵フィーリング比較

重心が低く、ホイールベースが長いクロストレックは走行安定性に優れる

 クロストレックは全高が1600mm以下だから重心も低い。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2670mmで、全長の割に長く、走行安定性が優れている。

 峠道では旋回軌跡を拡大させにくく、なおかつ後輪の接地性も高いから、危険を避ける時でも不安定な挙動に陥りにくい。機敏に曲がるスポーティ感覚の演出は弱いが、ステアリングの支持剛性を高めて小さな舵角から正確に反応する。車両との一体感を伴った運転を楽しめて、安全性も優れている。

 カローラクロスも操舵角に応じて良く曲がる印象だ。走行安定性も満足できる。ヴェゼルは後輪の接地性を高めた代わりに、操舵に対する反応は少し穏やかだ。峠道などを走ると、少し曲がりにくく感じる場面もある。

●評価の順位
・No.1:クロストレック
・No.2:カローラクロス
・No.3:ヴェゼル

■乗り心地&静粛性比較

 クローズドコースを走った限りでは、クロストレックは路上の細かなデコボコを少し伝えるが、粗さは抑えておおむね快適だ。ノイズは相応に響く。

 ヴェゼルは乗り心地が適度に柔軟で、e:HEVにより、通常の走りではノイズも小さい。カローラクロスは、コンパクトSUVの平均水準だ。

●評価の順位
・No.1:ヴェゼル
・No.2:クロストレック
・No.3:カローラクロス

■安全&運転支援機能比較

衝突被害軽減ブレーキや全車速追従型クルーズコントロール、ドライバーの異常を検知するドライバーモニタリングシステムも上級グレードに標準装着。日進月歩の安全装備は後発の車が有利か

 クロストレックは、衝突被害軽減ブレーキや全車速追従型クルーズコントロールに加えて、ドライバーの異常を検知するドライバーモニタリングシステムも上級グレードに標準装着される。

 ヴェゼルもe:HEV・Zであれば、LEDアクティブコーナリングライトなどが標準装着され、装備の充実度を高めた。

●評価の順位
・No.1:クロストレック
・No.2:ヴェゼル
・No.3:カローラクロス

■総合評価/推奨ユーザー

 クロストレックは走行安定性が優れ、後席を含めて居住性も快適だ。ファミリーユーザーからクルマ好きまで、幅広いユーザーに適する。

 カローラクロスは荷室の広さが一番の特徴で、荷物を積むなどレジャーユースを含めた実用性を重視するユーザーにピッタリだ。

 ヴェゼルは荷室の使い勝手も良いが、一番の魅力はコンパクトで視界の良いボディと、広い後席の両立にある。加速感も滑らかで、運転のしやすさ、上質感を重視するユーザーに適する。ヴェゼルは機能やデザインのバランスが優れている。

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