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異論反論!?「ヘッドアップディスプレイ不要論」にもの申す! 視線移動が少なく安全性は高いので将来的にもすべてのクルマに装備すべき!

 フロントウィンドウに車速やナビのルート案内を投影し、ドライバーの視点の移動が少ないため、より安全に運転できるヘッドアップディスプレイ。そのヘッドアップディスプレイが今ネットやSNSなどでザワついている。

 目障り、気が散る、いらないんじゃない? という声もあり、ほんとのところはどうなのか? モータージャーナリストの松田秀士氏が解説する。

文/松田秀士
写真/トヨタ、日産、マツダ、スズキ

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■HUD(ヘッドアップディスプレイ)のしくみ

アリアに採用されたパナソニック オートモーティブシステムズの11.5インチ・ウインドーシールド(WS)型HUD

 先日、Yahoo!トピックスに掲載されていた記事を見て愕然とした。その記事では、クルマに採用される多くの新技術があるが、なかなか流行の兆しが見られない機能もあり、なかでもヘッドアップディスプレイ(HUD)はその一例だという。

 また、見た目ばかりの進化にはユーザーが付いてこないことも多く、HUDは速度メーターやメーカーによってはNAVIルートを映し出すことができるものもあるが、運転中に集中力が分散することが問題になっているのだという。

 筆者が愕然としたのは、まずこの記事の筆者はHUDの本来の機能と目的を取材せずに記事を執筆したとしか思えなかったからだ。

 HUDは情報をフロントガラスに映像として映し出すものだが、ドライバーがその情報を見たときに、どうやらフロントガラスにドライバーの目のピント(焦点)が合ってしまうものだと勘違いしているようだ。

 確かにHUDはフロントガラスに映し出すものだが、ドライバーがその映像を見た時の焦点距離はフロントガラスのずっと先2.0m以上遠くにあるのだ。モノによっては4m以上先に映し出すこともできる。

 HUDはもともと戦闘機や戦闘ヘリコプター用の軍用技術で、情報を無限遠の点に結像させることによって、外界から映像に視点を切り替える際に「焦点(ピント)を合わせ直す」という生理現象が生じない。軍用では無限遠点だがクルマではそこまでの性能は必要がなく、遠くても5m以内である。

 よく似ているものがルームミラーやドアミラーで、鏡面そのものにピントを合わせて見ているわけではない。これも一種の無限遠点なのだ。

 つまりドライバーは運転中に前方を注視しているわけだが、その注視している景色の中にHUDの情報が浮かび上がり、ピント合わせする必要もなく情報を読み取れるというメリットがある。

 これによってハンドル越しやダッシュボードに設置されたメーターを読み取る際の視線移動、場合によっては顔そのものを動かしてメーターを読み取ることによって起こる前方不注意を防ぐ効果がある。

 特に加齢とともに起こる老視(老眼)では、メーターやNAVIディスプレイを注視することでピント合わせに時間がかかり、つまりその間前方視界が欠損することになり危険なのだ。

 またさらに前方に視点を戻したとき、今度は元の遠方焦点距離に戻るのにも時間がかかる。また、この目のピント合わせ機能を頻繁に使うことは眼精疲労に直結する。

 眼精疲労は目そのものが疲れてしまうもの、と考えがちだが、人間は目で情報収集し脳で見ている。つまり眼精疲労は脳の疲労と直結しているのだ。疲労した脳で運転を続けるのがどれほど危険かは言うまでもないだろう。

■どうしても慣れなければオフにもできるが使い慣れれば安全性は高まる

少ない視線移動で表示認識できるマツダの交通標識認識システムTSR(Traffic Sign Recognition system)

 ここまで説明するとHUDは老視などを起こしている高齢運転者だけに有用であって、老視を自覚していない中年&若年運転者には無用な装置と思われるかもしれないが、目のピント合わせ機能に優れる若年層でも、あまりにピント合わせ機能が速いために疲労しやすい、というデータもあるのだ。

 つまりHUDは視線移動が少ないというメリットだけでなく、ピント合わせもほぼ必要なくなり安全性が高くなる。どうしてもフロントガラスに映し出された映像が気になるのなら、映像の色を薄くすることもできるし、照射位置も上下に移動させることができる。そして消すこともできるのだ。

 HUDの機能には確かにメーカーによって差があることも事実だが、高級車になればなるほど焦点距離は遠くになると考えてよいだろう。

 なかにはフロントガラスより手前のダッシュボード上にポップアップ式のポリカーボネートのディスプレイに映像を映し出すタイプのものもある。ただこの方式はそれほど遠方に焦点距離がなく、やはりフロントガラス投影式のものがお勧めだ。

 HUDはメーカーによって差があると書いたが、実際にはサプライヤーによる差である。前回の東京モーターショーではコンチネンタル社が焦点距離4.3mのものを展示していた。

 このようなことからHUDは流行り廃り(はやりすたり)の技術なんかではなく、日進月歩で進化しているクルマの安全技術のなかの一つなのであって、将来すべてのクルマに装備してもらいたい装備と筆者は考えている。

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