国土交通省は11月8日、1台で大型トラック2台分の荷物を運ぶことができる連結全長最大25mのフルトレーラ連結車、通称「ダブル連結トラック」について、同日より対象路線を拡大すると発表した。
従来のダブル連結トラックの対象路線は東北道の一部〜九州道の一部までつながっているが、今回の対象路線拡大で北陸や四国、首都圏などほとんどの高速道路が対象路線に加わる。距離は従来の2050kmから5140kmまで約2.5倍増えることになり注目だ。
ここでは今回の対象路線拡大について、これまでのダブル連結トラックの歩みとともに紹介する。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/国土交通省、トラックマガジン「フルロード」編集部
ダブル連結トラックとは?
日本のトラック輸送業界は深刻なドライバー不足と高齢化に直面しており、少子高齢化による労働人口の減少が進むことで、今後ますます人材確保が困難になると見られている。
そこで国土交通省は、トラック輸送の省人化を推進するため2016年9月に「ダブル連結トラック実験協議会」を発足。特車通行許可の「車両の長さ」の基準を従来の21mから25mまで緩和するとともに、1台で大型トラック2台分の荷物を運ぶことができる「ダブル連結トラック」の実用化に向けた実証実験を開始した。
ちなみに特車通行許可とは、道路法に基づく車両制限で定められている数値を超える大きさ、重さの車両(特殊車両)を運行させる際に、あらかじめ道路管理者の許可を受けるもの。正しくは「特殊車両通行許可(制度)」である。
ダブル連結トラックの実証実験は新東名高速道路を中心に運送会社参加のもと行なわれ、約2年の実験期間を経て、安全性が確認できたことから2019年1月に特車通行許可の車両長の基準が緩和され、ダブル連結トラックの本格的な運行が始まった。
基準緩和に際しては、車両の形状、装備、ドライバーの経験、運転方法など6つの条件からなる「長さ21mを超えるフルトレーラ連結車の緩和要件等」が設定されている。
なお、ダブル連結トラックは欧州の連結全長25.25mの連結車「ユーロコンビ」などを参考にしたもの。「ダブル連結」という名前なので紛らわしいが、実際には連結全長21m以上のフルトレーラ連結車を指す。
ダブル連結トラックのこれまでの歩み
先述の通りダブル連結トラックは2019年1月に本格運行を開始し、同年3月には共同輸送がスタート。共同輸送とは、別々の運送会社の牽引車(フルトラクタ)と被牽引車(フルトレーラ)を組み合わせて運行するもので、2社の荷物を1名のドライバーで幹線輸送(拠点間輸送)することで省人化を図るものだ。
また、それまでダブル連結トラックは新東名高速道路の対象路線(主に通行できる路線)は海老名JCT〜豊田JCTまでとされていたが、同年8月に対象路線が拡大し、東北自動車道の一部、圏央道、東名高速道路、名神高速道路、新名神高速道路、山陽自動車道のすべてと、九州自動車道の一部まで拡大。
さらに同時期より、高速道路のSA、PAへのダブル連結トラックの優先駐車マスの整備も開始されている。
今回の対象路線拡大の中身は?
いっぽう、今回発表されたダブル連結トラックの対象路線の拡大は、対象路線を従来の2050kmから5140kmまで拡大するという、かなり大掛かりな内容だ。
対象となる路線は運送会社の要望等に基づいて決められており、東北自動車道、九州自動車道はほぼ全域が対象路線となり、北陸、四国、さらに首都圏も対象となる。
また、ダブル連結トラックを駐車可能な駐車マスについては、2022年6月末の時点で全国に95カ所が整備されているが、拡大した路線をダブル連結トラックが走り始める時期(2023年4月以降)をめどに、拡大予定の路線の26カ所の休憩施設等に優先駐車マスを新たに整備、改善基準告示(連続運転時間4時間で30分の休憩、いわゆる430)を超過する箇所を解消するとしている。
なお国土交通省では、引き続き運行状況や物流事業者のニーズを踏まえて対象路線を検討していくとしている。
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