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フィットRS復活盛り上がってるけど……ホントに必要? もっと大事なことあるんじゃ?

 販売ランキング1位を獲得したこともあったフィットだが、現行モデルは苦戦を強いられている。

 そんな状況を打破すべく、先代モデルまで設定されていた走りのRSが復活。クルマ好き界隈では大盛り上がりとなっているが、このRSは本当にフィットに必要なモデルなのか? というのも現行フィットはライバルのヤリスなどに比べて大人しすぎる顔などデザインに関する不満が多いというのが実情である。

 ならばRSの追加よりももっと大事なポイントがあるようにも思えるが……。フィットはどうしたらいいのよ……。

文/清水草一、写真/ホンダ、ベストカーWEB編集部

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■ヤリスより広くて使い勝手いいのに……フィットどうしたよ

2022年10月にマイナーチェンジを受け登場したホンダ フィット。フロントデザインの押し出しを強くすると予想されていたが、逆にさらにおとなしくなった

 フィットの販売が一向に上向かない。今年4月から9月までの半年間の販売ランキングは、登録車の第9位。2万7000台余りにとどまった。月平均5000台にも届いていない。トップのヤリスは、ヤリスクロスを加えた数字とは言え、8万4000台強。軽自動車も含めれば、N-BOXが単独首位を独走しているが……。

 現行フィットが登場した時、私は「非の打ち所がない!」と思った。柴犬がモチーフのデザインは、シンプルでかわいらしく、それでいて芯の強さを感じさせる。

 インテリアはナチュラル志向で癒される。i-DCDからe-HEVへ変更されたパワートレインは、DCTの廃止によって滑らかさが格段に向上。燃費では、ヤリスやアクアなどトヨタのハイブリッド勢にかなわないが、リッター20kmを超えると、燃費競争はあまり意味をなさなくなるので、実質的なマイナスは小さい。

 伝統のセンタータンクレイアウトによって、室内はヤリスに比べ圧倒的に広い。ヤリス対フィットの戦いは、トヨタの販売力をもってしても互角か、ひょっとしてフィットが勝つのでは!? と思ったものだ。

■最大の敗因は顔!! ハイブリッド改善にRS追加でも足りない……

 ところがフタを開けてみれば、出足からヤリスがリードし、フィットは一度も巻き返せないまま、逆にリードを広げられ、ノートにも完敗した。いったいナゼ!?

 考えられる最大の理由は、「デザインが大人しすぎた」という点だった。ヤリスの毒虫顔に比べると、フィットの柴犬顔は確かに大人しい。コンパクトカーは、ナリが小さいだけに周囲にナメられやすい。よって怖い顔で武装していたほうが有利――というのは、軽カスタム系の躍進で既に証明されている。

 そこで、クルマ業界ではこんな噂が流れていた。「フィットは次のマイチェンで、猛獣顔になるらしい」

 実際にフタを開けてみたら、その観測は大ハズレ。マイチェンフィットは、柴犬顔の特徴だった鼻の出っ張りがなだらかになり、かえって大人しくなった。

 この顔ワンダーシビックから始まった、かつての砲弾型フォルムへの回帰すら感じられる。それはそれで決して悪くないが、猛獣どころか、よりシンプルに、よりフツーになったのだからズッコケる。

 新設されたグレード「RS」は、その他にグレードに比べると、やや面積の大きいメッシュグリルが付き、昭和のスポーツモデルの雰囲気になっている。

 マイチェンにともなって、パワートレインは若干強化されている。e:HEVは駆動用モーターの最高出力が従来型比プラス14PSの123PSとなり、エンジンと発電用モーターの発電能力もアップ。

 ガソリンエンジン仕様は、排気量が1.3リッターから1.5リッターに拡大され、最高出力と最大トルクは従来型の98PSと118N・mから、118PSと142N・mに強化された。

 パワートレインの強化は、「燃費よりも痛快な加速がウケている」という分析によるものだろう。

 確かにヤリスハイブリッドは、軽量ボディのおかげでかなり速いし、ノートはEV的なダイレクトな加速が気持ちいい。ライバルに比べるとフィットのe:HEVは、特に不満はないものの、刺激には欠けていた。そこを強化したのは納得だが、ライバルに対して優位に立つほどの改善ではない。

■RS追加でもヤリスには敵わず!? 売れないワケは他にもあった

マイナーチェンジと同時に先代モデルで消滅していたRSグレードが復活。MTの設定はないが3つのドライブモードが選択でき、サスペンションもRS専用にチューニングされる

 ある意味マイチェンのキモである「RS」は、先代RSと異なり、パワートレインはハイブリッドのみ。当然MTもない。ハイブリッドの出力も他のグレードと同じだ(!)。

 違いはドライブモードの設定で、「エコノミー」「ノーマル」「スポーツ」の3つから選ぶことができる。また、パドルシフトの操作で減速Gを4段階に調整可能。サスペンションもRS専用にチューニングされている。

 ただ全体としては、決して「レーシングスポーツ」な方向性ではなく、ホンダの言う「ロード・セーリング」を志向している。

 こんなことでフィットは巻き返せるのだろうか!? ズバリ、ムリである。

 しかし私は思う。フィットはマイチェン前から十分いいクルマだった。そして今度のマイチェンで、よりいいクルマになった。いいクルマと売れるクルマは、決してイコールじゃない。ホンダは販売の巻き返しをあえて捨て、よりいいクルマにすることに専念したのだ!

 2年前には私も、「新型フィットは、顔が大人しすぎるから売れないのか?」と思ったが、それは見当違いだった。いまさら猛獣顔にしたところで売れ行きは回復しない。ホンダはそれがよくわかっていて、あえて、よりオーソドックスなルックスに変更したのだ。

 では、なぜフィットは売れないのか!?

 それは、すでにさんざん言われていることだが、「N-BOXが強すぎるから」。これに尽きるのだろう。

 コンパクトハッチバックは、軽自動車のすぐ上に位置するカテゴリーで、軽に最も食われやすい。N-BOXの大ヒットが始まるのとほぼ同時に、フィットの凋落は始まっている。N-BOXが売れ続けている限り、フィットが販売の首位争いに復帰することはないのだ!

 その証拠にと言ってはなんだが、フィットベースのSUVであるヴェゼルはよく売れている。カテゴリーが違えば、シンプルなデザインでも十分商品力はあるのだ。

 フィットに求められる変化。それはN-BOXとの差別化、つまり高級化しかないだろう。次期フィットは、ノートオーラ的な方向性で臨めば、勝機があるかもしれない。

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