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「草食に見えて実は肉食」踏めば速いけど使い勝手も乗り味もいい名門スポーツセダン4選

 スポーツカーといえば、2ドアクーペやコンバーチブルなど、華やかな雰囲気をもつモデルをイメージするが、見た目は普通の4ドアセダンながら、中身はハイパワーなエンジンを積んでいるなど、いわゆる「羊の皮をかぶった狼」的なスポーツセダンが人気を集めていた時代があった。

 後席ドアの存在が放つ落ち着き、そして大人な雰囲気でありながらスポーツな走りもこなせるスポーツセダン。今でもスカイライン400RやレクサスIS-Fなどがあるが、もはや絶滅危惧種、非常に貴重な存在だ。かつて人気を集めたスポーツセダンを4つ取り上げ、当時に思いを馳せよう。

文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:HONDA、TOYOTA、NISSAN、SUBARU、LEXUS

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ヨーロピアンな雰囲気と大人のセンスが光る!! ホンダ「アコード ユーロR」

 ホンダ「アコード」に「ユーロR」が初めて設定されたのは2000年6月、6代目のマイナーチェンジに合わせてのタイミングだった。

 エンジンは2.2L DOHC VTECを搭載。最高出力は162kW(220ps)/7,200rpm、最大トルクは221Nm(22.5kgm)/6,700rpm、駆動方式はFFで5速MT、ローダウンサスペンションやブレーキ強化、レカロ製バケットシート装着などでホットな雰囲気のあるモデルとして登場。とはいえ、NSXやインテグラ、シビックに設定されたピュアスポーツ「タイプR」とは異なり、セダンとしての乗り心地を重視したマイルドなセッティングが特徴であった(ちなみに輸出仕様は「タイプR」の名が与えられた)。

 専用の情熱的な赤いボディカラーは「ミラノレッド」、名前は「ユーロR」とヨーロピアンなセンスと大人の乗り心地を楽しめるライトチューンは「玄人好み」と表現するにふさわしいかった。

2000年6月にデビューした初代アコード ユーロR(CL1)。セダンの快適性と実用性はそのままに、大人のスポーツ走行をしっかり楽しめるライトチューンが魅力だ

4枚のドアをまとったスープラ トヨタ「アリスト」

 1991年10月に発売された初代アリストは、クラウンのマジェスタと基本シャシーを共有する高級スポーツセダンだ。

 ただ、その性格はマジェスタとは全く異なるもの。イタリアデザイン界の巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロ氏主宰の「イタルデザイン」が手がけたエクステリアは、氏の得意とする直線と曲線の美しい融合を軸に、豊かで存在感のあるボディラインを形成。セルシオやクラウンのような高級感を損なわずに、スポーティなエッセンスが絶妙に加えられたデザインに仕上がっていた。

 搭載されるエンジンは3.0L 直6 DOHCの自然吸気ガソリンエンジン(2JZ-GE)と、同ツインターボ(2JZ-GTE)の2種類。2JZツインターボといえば4代目スープラ(A80型)に搭載されたものというイメージが強いと思うが、スープラのデビューは1993年のため、採用されたのはアリストのほうが先。そのため「国産最速セダン」と呼ばれ、並のスポーツカーでは太刀打ちできないほどのポテンシャルが高く評価された。

 1997年に2代目が登場するものの、その後はレクサスモデルの「GS」となりアリストの名前は消滅。その「GS」も、セダン市場の縮小に伴い2020年に販売終了となっている。

初代アリスト。ジウジアーロデザインのセンスはもとより、2JZツインターボエンジンのパワーは当時並大抵のスポーツカーでは太刀打ちできないパフォーマンスを発揮した

欧州セダンに負けない本物の走りを提供した5ナンバーセダン 日産「プリメーラ」

 1990年2月にデビューした日産のコンパクトセダン「プリメーラ」。80年代の販売不振を払拭するべく、日産が掲げた「901運動(1990年代までにハンドリングで世界ナンバーワンを目指す)」から生まれた、話題のニューカマーだった。

 5ナンバーサイズのコンパクトなボディでありながら、シャシーの車体剛性アップとフロントマルチリンクサスの採用で欧州車に匹敵するハンドリング性能を実現。デザインもシンプルながらスタイリッシュで若々しく、実用性よりも走りをイメージさせる洗練されたものだった。

 走りを意識し過ぎたせいか、乗り心地が硬いと辛口の評価があったものの、初代の販売は好調で、日産のイメージアップとセダンの常識を覆した一台となった。

 1995年に登場した2代目は、リアにマルチリンクビームサスを採用して乗り心地の改善がなされ、走りを意識したスポーツセダンとしての魅力を向上。2001年には個性的で斬新なデザインを採用したものの、やはりセダン市場縮小の潮流には勝てず販売面では苦戦し、名車プリメーラは3代で幕を閉じた。

走りも楽しいFFスポーツセダンとして人気となった初代プリメーラ

スバル初の高級車は完成度が高かった スバル「レガシィ」

 「レガシィ」といえばステーションワゴンというイメージが強いと思うが、「スバル史上初の高級車」というコンセプトで誕生した初代「レガシィ」はセダンの出来も秀逸だった。

 初代レガシィは1989年2月に登場。エンジンは新開発の1.8L 水平対向エンジンと、同2.0L NA、同インタークーラーターボの3タイプを用意。かの有名な「EJ」エンジン初搭載車だ。レガシィ最強グレード「RS」はセダンのみに設けられたもので、その最高出力は162kW(220ps)/6,400rpm、最大トルクは269.7Nm(27.5kgm)/4,000rpm。RSは10万キロ耐久走行時の平均速度223.345km/hという世界速度新記録(当時)を樹立し、スバル車の技術の高さとレガシィのポテンシャルを世間に知らしめた。

 ラリーの世界ではインプレッサのほうが有名になったが、1990年から93年までWRCに参戦し、その第一線で闘う基礎を築いたのはこのレガシィであり、スバルの、そしてセダンのイメージアップに大いに貢献したモデルでもあった。当時のスバルの経営危機を救ったのも、このレガシィだ。

初代レガシィセダン。上質な内外装とRSの走りの良さがセダンのイメージを向上させた

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 現在は衰退してしまっている4ドアセダンだが、ここにきて、新型プリウスや新型クラウンクロスオーバーのように、スタイリッシュな4ドアスポーツセダンや、その亜種が誕生している。

 4ドアセダンの持つ大人の雰囲気に、ピリッと辛めのスポーティな味付けをしたスポーツセダンは、SUVやミニバンでは味わえない「走りの良さ」や「スタイリングのカッコよさ」がある。特に新型プリウスは、これまでとはガラッと変えたスタイリッシュな形で登場しており、手ごろな価格が期待できることもあり、スポーティセダン好きには、久しぶりに楽しみな一台といえる。登場が楽しみだ。

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