もっと詳しく

10月からさまざまな制度が改正され、「お金」について改正されるルールも少なくない。社会保険の加入対象者拡大や雇用保険料の値上げなどが10月から行われたが、中でも現役世代、子育て世代から大批判を浴びているのが、高所得世帯への児童手当の廃止だ。

K.T.K.N / PhotoAC

「子育て世代からもぎ取り、老人にばら撒く」

10月から世帯年収が1200万円を超える家庭には、児童手当が支給されなくなる。児童手当は、3歳未満の児童1人あたり月1万5000円、3歳以上小学校卒業前は月1万円(第3子以降は1万5000円)、中学生は月1万円が支給されるものだ。これが、年収1200万円を超える家庭には、一切支給されなくなった。

ネット上は、この“制度改悪”に怨嗟の声が渦巻いていた。

勘弁してくれよ。年収1200万円なんて、米国は勿論、上海やソウルでも、低所得者層だよ。

児童手当廃止して約370億円浮いた。5万円給付の事務費に約500億円。そして給付される約8割が老人。子育て世代からもぎ取り、老人にばら撒く。何かおかしいんちゃうかい、岸田さん。

児童手当は年少扶養控除廃止の際、代わりとしてできたもの。だから児童手当に所得制限はおかしい

住民税非課税世帯(80%は70歳以上)に5万円をばら撒くのに必要な税金は約6000億円。子供手当に所得制限かけて特別児童手当を廃止させることで浮いた金額は366億円。まあ、老人は認知症でも寝たきりでも未来がなくても1票を持っていますが、子供たちには未来があっても1票をあたえられてませんからね。

子育て女性「子どもを産むなっていうこと?」

tora-nosuke /iStock

世帯年収が1300万円を超えるため、10月で児童手当が廃止される都内在住の30代女性は、ため息をつく。

国から差別された感じですよね。そもそも、年収1200万円と1100万円では手取り額にそう違いはないですし、家庭によって子どもの数も違います。それに、健康な子どももいれば、難病で高額な医療費がかかる子どももいます。

同じ年収1200万円でも都内に住まざるを得ない人と、地方でも仕事ができる人とでも可処分所得は全く違わないですか?それを各家庭の事情を一切考慮することなく一律で、年収だけを見て児童手当を廃止するなんてちょっと理解に苦しみます。子どもを産むなっていうことなんですかね?」(女性)

この女性が特に憤っているのは、制度設計の不公平さだ。児童手当の所得制限は、夫婦どちらかの年収で判断される。たとえば、この女性は専業主婦で、夫が所得制限に引っかかるため、今月から児童手当が受けられない。しかし、女性のママ友の中には、夫婦で共働きしている人も少なくなく、その家庭の多くはこれまで通り児童手当を支給されるという。

ママ友に、夫婦そろって1000万円以上稼いでいる人がいるのですが、2人とも1200万円の所得制限には引っかからないため、児童手当はこれまで通り受け取れるということです。世帯の年収は軽く2000万円は超えているそうです。

一方、うちは夫が年収1300万円で私は子どもが小さいので働きに出られず無収入。世帯の年収が2000万円を超えている家庭は児童手当がこれまで通り受け取れて、1300万円のうちは廃止。何かおかしくないですか!?」(同)

政府は、2007年に少子化対策の特命大臣を設置し、2015年に内閣府内に「子ども・子育て本部」を設置した。さらに、来年4月には「こども家庭庁」を発足させるなど、一見、少子化対策に力を入れているように見せている。しかし、今回の高所得世帯への児童手当廃止のようにその流れに逆行するような政策をとっていては、出生率は上がらないままなのではないだろうか。