北米の代表的な自動車ショーであるデトロイトモータショーが3年ぶりに開催された。例年であれば重要な車種が発表されることが多く、2019年1月には新型トヨタスープラが世界初公開された。
久しぶりの今回は開催時期が9月にずれ、参加メーカー数も激減。そんな中、トヨタブースには新型トヨタクラウンクロスオーバーが展示されていたという!
文/小林敦志、写真/小林敦志、池之平昌信、TOYOTA、SUBARU、FORD
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■デトロイトモーターショーが3年ぶりに開催
コロナ禍後アメリカは新型コロナウイルスに関し入国時の検疫措置をほとんど撤廃し、さらに日本人の海外渡航最大の“壁”であった、再入国時の陰性証明書の渡航先取得をワクチン3回接種の場合免除したなか、まさにタイミングよくアメリカ ミシガン州 デトロイトを訪れた。
2019年の開催以降3年ぶりにデトロイトショー(北米国際オートショー)が開催されるからである。
2019年までは1月開催であったが、2020年開催以降はデトロイトとしては過ごしやすい6月開催にするとしていた。しかし新型コロナウイルス感染拡大で開催することができず、2022年も9月という当初予定からは変則的なスケジュールで開催となった。
確かに訪れてみると、日中こそ少し暑いかなと思うが、朝夕は逆に寒さを感じるくらいであった。5日間滞在したが雨も降ることもなく、晴れの良い天気が続いた。
今回のデトロイトショーは開催前に嫌な予感がした。ウエブサイトに会場のフロアプラン、つまり会場における各参加ブランドの配置図が公開されないのである。
このような状況を過去に体験したのを思い出した、2016年のモスクワモーターショーである。この時も参加メーカーやフロアプランが公表されないまま筆者はロシアの首都モスクワへ向かった。
現地に着くと、先着していた日本人の同業者から、「今回は西側の完成車メーカーはほとんど参加しないらしい」との話を聞いた。事実会場を訪れると、ロシアブランドのほか、中国、韓国系ブランド、そしてメルセデスベンツがいるぐらいであった。
なぜこうなったかは謎であったが、2014年にロシアはウクライナのクリミア半島に侵攻しおり、これが影響していたのではないかという説が有力であった。
そしてこのモスクワモーターショーの経験に基づいた、“嫌な予感”は的中した。その後開催直前に今回のデトロイトショーのプレスカンファレンススケジュールが送られてきたが、そのなかでカンファレンスを行う完成車ブランドはシボレー、フォード、ジープのみであった。
現地にきて最終的に確認するとGM(ゼネラルモーターズ)、フォード、クライスラー系をメインとしたステランティス、そしてトヨタとスバルがすべての参加完成車メーカーだったのである。
■ひっそりと展示されたトヨタクラウンクロスオーバー
気になるショーデビューモデルで最大の話題は新型マスタングといえるだろう。開催初日の午後8時に、屋外特設会場にある屋外ステージでプレスカンファレンスが盛大に行われるなか、新型マスタングはワールドデビューを果たした。
開催2日目には屋内展示会場のフォードブースに早速展示されたが、展示車のまわりは常に多くの人が集まっていた。フォードブースの通路を挟んだ対面にはトヨタブースがあった。
トヨタはとくに今回のデトロイトショーではプレスカンファレンスを行わなかったが、そのトヨタブースのマスタングの対面には、“知る人ぞ知る”といった注目モデルが展示してあった。それがトヨタ クラウンである。そう、日本でいうところのクラウンクロスオーバーが展示してあったのである。
筆者は日本で実車を見る機会がなかったので、まさに新型クラウンとはデトロイトでファーストコンタクトすることとなった。
めざとい現地メディア関係者はじっくりクラウンをチェックしていた。しかし1台しかない展示車はドアロックされており、インテリアやエンジンを確認することはできなかった(とはいえ内装も含め最終市販モデルに仕上がっていたようだ)。
初日はプレスデーとはいえ午後1時より業界特別招待日となり、業界関係者が来場することを意識したようだ。業界招待日は単にクルマを見るだけでなく、大手を振ってライバル車の計測や素材確認などデータを取ることが許されているのである。
おそらく日本と同じ7月15日に登場したばかりのモデルなので、“業界関係者の“チェック”を防ぎたかったのかもしれない。
北米のクラウンも日本と同じく2.4Lと2.5Lのハイブリッドユニットを用意。エクステリアではフロントのエンブレムがクラウンの王冠から一般的なトヨタエンブレムに変更されているぐらいで見かけが大きく変わっているようなことはなさそうだ(日本仕様の実車はまだ見ていないのではっきりしない部分も多い)。
日本ではそのキャラクターに賛否はわかれるところだが、メインのニーズがセダンなどの一般的な乗用車からクロスオーバーSUVへ移っているアメリカでは、選択肢が減るなかで、“それでもセダン”と固執しているユーザーも取り込むこともできるし、結構売れるのではないかと感じた。ちなみに正式発売はまだされていない。
トヨタはこのほか、やはりデビューしたばかりのフルサイズピックアップのタンドラや、フルサイズSUVのセコイヤなどを展示し展示車には人が集まっていた。単に“おつきあい”ではなく、しっかりと参加し、トヨタは今回のデトロイトショーで“爪痕”を残しているなあと筆者は感じた。
■年々衰退していくデトロイトショー
地理的に近いイリノイ州シカゴで毎年2月に“シカゴ オートショー”が行われるが、シカゴとその周辺都市の人口が多いこともあり、“全米で最も集客するオートショー”ともいわれている。
一方、デトロイトショーはデトロイトとその周辺都市の人口は少なく、アメリカン3の威厳が昔ほどなくなった現状では集客も期待できないとして、コロナ禍直前から参加したり参加しなかったりを繰り返すメーカーやブランドも後を絶たなかった。
しかも、シカゴはショーデビューモデルも少なめで、トレードショーとして割り切っているのに対し、デトロイトショーは最後まで、“世界初披露モデル”にこだわってしまった結果衰退が加速してしまったのではないかと筆者は考える。そのなかで新型コロナウイルスの世界的感染拡大が起こった。
事情通は「世界的にオートショーの開催が難しくなるなか、各メーカーはオンラインでの新型車の発表ノウハウを確立していったこともあり、コロナ禍前以上に参加するオートショーの選択と集中、つまり参加するショーの絞り込みをさらに進めました。
その結果が今回のデトロイトショーの参加メーカーになったといってもいいでしょう」と語ってくれた。
また、アメリカのオートショーシーズンの開幕は、10月上旬あたりに毎年カリフォルニア州アナハイムで開催される、“オレンジカウンティ モーターショー(今年は9月29日より開催)”が先陣をきることになっており、このショーで今年なら2023年モデルの展示が原則始まることになる。
そのため9月はイヤーモデルの端境期であり、イヤーエンドのセール期間になっている。今年なら、一部2023年モデルを販売現場で先行販売しながら、2022年モデルの在庫処分セールが活発に行われる時期なのである(2022年は生産遅延の関係などもありいつもと違うようだが)。
事実、トヨタブースに置いてあったカローラクロスは日本仕様と異なるグローバルフェイスから2023年モデルは日本仕様とほぼ同じ顔つきになるのだが、会場には2022年モデルが展示してあった。
もちろん、ショーデビューモデルや近日発売モデルも展示されているが、多くが2022年モデルでは、来場者が新車検討するにもいまひとつともいえる展示内容となるのである。
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投稿 王冠がないってマジか!? 注目度いまひとつ? 北米仕様クラウンは歴史を作るのか は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。