スーツで言えば、オーダーメードに例えられる「民需」に対して、メーカー完成車はいわばレディメードのトラックボディだ。
今や大型のウイングボディやバンボディですう勢を占めるメーカー完成車だが、先行するメーカー3社にやや水をあけられていたパブコは、ここでもう1つのボリュームゾーンである平ボディに着目。
メーカー完成車の手法で高品質・短納期・即戦力を実現する大型平ボディ「ザ・ブロック」を開発した。後編はその開発手法をレポートする!
文/フルロード編集部 写真/フルロード編集部・パブコ
*2020年6月発行トラックマガジン「フルロード」第36号より
完成車のメリットをトレースする大型平ボディ「ザ・ブロック」とは?
では、パブコの期待の大物「ザ・ブロック」の製品特徴とは何か、もう一度整理して伝えてもらおう。
「製品特徴は、高品質・短納期・即戦力の3つに象徴されていますが、まず高品質についてですが、ザ・ブロックは一部ウイングの部品と共通化しており、設計も完全に整備しているので、これによって品質的にも安定しています。
それに近畿工場50年の蓄積されたノウハウが詰まっているので、品質には自信を持っています。短納期については、先ほど来から話に出ていますが、材料の手配も図面も整備されているので、生産側も容易に早期展開ができます。
民需の平ボディは1台1台いろいろな部品が必要なのですが、これは仕様が統一されていますので、つくりやすく作業性もアップしますし、部品の共通化によりアフターパーツの供給も迅速に展開できるというメリットもあります。
さらに即戦力ということに関しては、実用的な装備は標準で設定しています。たとえばバックアイカメラ、LED作業灯、左右FRPフタ付きボックス型物入れ、アオリ開閉補助装置、鳥居補強ガセット兼用足掛け、チェーン掛けなどなど、必要充分な装備を採用しています。
また、ロープフックは通常は溶接ですが、ザ・ブロックではボルト締結にしています。溶接では錆が発生しやすいためで、そういったところまで気を配って標の蓄積されたノウハウが詰まっているので、品質には自信を持っています。
いっぽうオプションも豊富に揃えています。標準仕様の床材はアピトンですが、これは積み荷や用途によってニーズが違ってきますので、厚さの異なる亜鉛鉄板張りを2種類用意したほか、縞鋼板も準備しています。
そのほか、角材・スタンション2対、リヤロープ柱、ステンレス製ヒンジ、ステンレス製掛け金、ステンレス製掛け金2対、中間柱、アームがステンレス製の開閉補助装置、さらに耐塩害塗装といったさまざまなオプションも用意しています。
現在、6×2の後2軸車用にザ・ブロックを設定していますが、ボディは五方開のアルミブロックで、全長11990mm、全幅2490mm、全高3060mm。荷台の内法長9600mm、内法幅2400mm、サイドのアオリ高800mm、リヤのアオリ高700mmとなっています。
ちなみにザ・ブロックというネーミングは、もちろんアルミブロックを使った平ボディという意味も込めていますが、『The』は無類の、『Block』はベスト、ロジスティクス、オプション、カウントレス、キロメーターズの頭文字からとっていまして、日本語にすると、『無数のキロメーターに続く最高の物流の選択肢』となり、無数のキロメーターを走って荷物を運ぶ、それを実現できるような最高の選択肢になればいいなという思いを込め、皆で考えたものです」。
もう1つのボリュームゾーン「平ボディ」の復権へ
ザ・ブロックは三菱ふそう、いすゞ自動車、日野自動車、UDトラックスの後2軸車に対応しているが、近々8×4に対応した仕様も発売する予定だという。では、大型平ボディおよびザ・ブロックの今後の需要をどう見ているのだろうか?
「平ボディの需要はこれからも堅調に推移すると見ています。屋根があると積載できない荷物もあるし、それは今後もなくならないでしょう。重機や機械もの、コンテナを運ぶ平ボディもありますし、建築機材・資材を運ぶトラックもある。
その中でザ・ブロックの立ち位置ですが、これまでは地場のボディメーカーさんのオリジナリティのある平ボディがトレンドでしたが、そのメーカーさんの数も減ってきて、困っているユーザーさんがおられる。
また地場のメーカーさんは生産キャパの問題もあるので、1年待ち、2年待ちなんてことがざらにありましたが、そのタイムロスをなくせば、ユーザーさんは1年早くご商売ができるわけです。
特に今の二代目、三代目のユーザーさんは効率的なビジネスを志向されるわけで、そういったことにも対応しなければいけないと思います。
さらに言えば、これまで民需の平ボディというのはカタログ販売ができなかったわけですが、ザ・ブロックは販社の担当者に特別なスキルがなくてもカタログ販売ができ、さらに民需の特殊平ボディより価格が安くなるので、『これでいいじゃん』というユーザーさんはきっとおられると思うのです。
しかも、カタログ販売ができるということは、地場ではなく、全国のユーザーさんが対象になりますから、潜在的な需要は決して少なくないのではいかと思っています」。
パブコ近畿工場の生産能力は月産60台。これまでの特殊平ボディだけではそこまでいかないので、当面はそれを補う形でザ・ブロックを生産する予定だという。
「今後は8×4の低床車用のザ・ブロックを発売したり全国展開をして、どのくらいの需要があるか見極めたいと思っています。ウイングのメーカー完成車ほど比率が高まればいいのですが、そのためには投資もしなければいけないし、商品力の強化も必要だと思っています。
近畿工場では、特殊平ボディは地場のユーザーさん、ザ・ブロックは全国展開、そんな棲み分けも想定しています。いずれにしてもパブコにとっても期待の大きい新たな事業展開であることは間違いありません」。
小型・中型では平ボディのメーカー完成車あるものの、大型の平ボディでメーカー完成車的な狙いを打ち出したザ・ブロックは、確かに画期的だ。
かつてウイングボディが一世を風靡した際には「時代遅れの平ボディなんて、いずれ駆逐されるだろう」などと観測する向きもあったが、今や堂々の復権である。そこには日本最古参の架装メーカーのしたたかでしなやかな生きざまが見えるようだ。
投稿 生き残りをかけトラック架装のもう1つのボリュームゾーンに注力! 平ボディの復権に挑むパブコの場合【後編】 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。