ヨーロッパには、日本の軽トラックより少し大きいか、少し小さいかぐらいの車体サイズに、頑丈なラダーフレームや4WDシステム、さらには油圧動力取出装置や油圧式四輪ステア機構などを備えた小型特殊トラックが存在。狭隘地や山岳地帯の公共工事になくてはならない存在となっている。
一部で日本にも導入されているヨーロッパの小型特殊トラックとは、一体どんなクルマなのか? 同ジャンルに詳しい緒方五郎氏が、代表的なモデルをピックアップして解説する!!
文/緒方五郎 写真/各メーカー
※2021年12月10日発売「フルロード」第43号より
●HAKO ムルティカーM31
ドイツのHAKO社のムルティカーM31は、日本の小型トラックと軽トラックの中間の大きさの特殊トラックGVW(車両総重量)7.5tだ。
その源流は、1950年に旧東ドイツで開発された立席1人乗りの開放式運転台トラックで、1t積トラックより小さいサイズで最大積載量2tを確保していた。これがムルティカーM21、M29と進化して、最新版がM31というわけだ。
ラインナップは、キャブ付きシャシーのM31B、三転ダンプ架装のM31T、油圧取出装置搭載のM31C、無段変速ハイドロスタティックトランスミッション搭載のM31ハイドロシュタートの4種類。エンジンはフィアット・パワートレーン社(FPT)製3.0L直4ディーゼルだ。
なお、ムルティカーM31は神奈川の飛鳥特装により国内でも販売されており、昨年中日本高速道路が路面清掃車仕様車を導入。現在は圏央道の一部で試験運用されている。
●ボネッティFX100
イタリアのボネッティ社のFX100は、古都や狭隘地で運用するために、全長4.0〜4.7m×全幅1.65mのコンパクトな車体に、頑丈なラダーフレーム、センターデフ付き4WDシステム、150PSを発揮するFPT 製3Lディーゼルエンジンを搭載した、ユニークなトラック。
GVW3.5tモデルと5.5tモデルを設定し、通常のトラック同様、ダンプ、クレーン、脱着ボディ車、高所作業車、タンクローリ、消防車などの特装車の架装ベースとして用いられている。
前身は1974年に開発された自治体向け4×4トラック「F80」で、84年に「F100」に進化。2001年に現在のFX100がデビューし、以来、エンジンやトランスミッションを改良しながら今日まで販売され続けている。
●デュルソ マルチモビル
イタリアの農機メーカー、デュルソ社が製造するGVW4.5〜6.6t級の特殊トラックで、全長4.3〜4.9m×全幅1.5mという車体サイズに、ハイテン鋼製ラダーフレーム、油圧装置を搭載するためのアタッチメントなどを装備可能。駆動方式は4×2と4×4を設定する。
エンジンはイギリスのパーキンス社製2.2L直4で、イタリアでは時速40kmを上限とする車両カテゴリー「マッキネ・オペラトリチ」に該当。ただし農業トラクタのカテゴリ「T4.3」では時速40〜60km、ドイツでは62kmまで認められる。
ユニークなデザインのキャブは中国製パーツを組み立てたもの。なお、同社では中国の江淮汽車製小型トラック「HFC1035」に欧州製パワートレーンを搭載したGVW6.5t車の組み立て・販売も行なっている。
●デュルソ カントリー
上と同じデュルソ社の農業トラクタ。軽トラより一回り大きいGVW3.4t車で、プレス鋼製ラダーフレーム、パートタイム4WDシステムを備える。パワートレーンはヤンマー製1.6L直3ディーゼルにトヨタ製5MTを組み合わせたもの。トランスファーは自社製だ。
●ハンザ APZ1003
ドイツのハンザ機械製造が販売するAPZ1003は、ムルティカーM31と同じジャンル、同じクラスの小型総輪駆動トラック。FPT製3.0L直4エンジンのパワーを、ハイドロスタティックトランスミッションで油圧に変換して四輪を駆動する。油圧式四輪ステア機構を備えるのも特徴だ。
●フォルト ミトス・ジェメラッタ
イタリアの農業機械メーカー、フォルト社のGVW3.5t級特殊トラック。上で紹介したデュルソ社のマルチモビルやカントリー同様、こちらも「マッキネ・オペラトリチ」のカテゴリーに属す。軽トラより少し大きい4×4トラックだが、エンジンはイタリアのロンバルディニ社製2.3L直4、パーキンス社製3.3L直4、FPT製3.2L直4のいずれかのディーゼルを搭載する。
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