乗用車のホイールを固定するナットは、コンパクトカーで4個、ミニバンやSUVでは5個が主流だ。ところがトラックやバスといった大型車両のホイールは、よく見ると多数のナットが付いている。いくら車体が大きいといっても、これだけ多いのはなぜなのだろうか?
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
大型バスの現在は10個!
タイヤは車両の荷重を支えて滑らかに走るためのなくてはならない部品だが、軸に留めているのは複数のボルトで、表に見えている部分は軸とタイヤをつなぐボルトを締めるナットだ。バスの荷重はこのボルトで支えている。単純に多ければ荷重が分散されて、1本のボルトにかかる負担は少ない。
かといって必要以上に多いとコストがかかり、重量も増し、メンテナンス性も落ちる。よって適切な本数を計算して設計することになるので、多ければよいというものでもない。
以前は日本工業規格(JIS規格)で決められ、メーカーにより異なっていた時代もあるが、現在の大型バスは概ね10本で統一されている。これは日本の規格から国際規格(ISO)に移行したためだ。もちろん車両総重量やホイールのサイズにより10本よりも少ないことはあり得る。あくまでも一般的な大型バスでの話だ。
ナットの形状も変わっていた?
表に見えるこのナットは、以前は頭が丸いものが使用されていた。見た目にもスッキリとしていた印象があった。しかしISO規格では平形のナットと決められているために、見た目が良い(だけではないが)球形のナットは使われなくなった。
これらの規格は日本では2010年から導入されたために、それ以前に製造されたバスはナットが8本や車両総重量によってはそれ以下のものもある。12年前に製造されていてもバスの世界ではまだまだ現役なので走っている姿はごく普通に見かけることができる。
点検はハンマーで!
高速バスで降車休憩があるときに運転士がハンマーをもってタイヤ周りをたたいている姿を目にしたことがあるだろうか。あの小さなハンマーは、叩いたときの音でナットが緩んでいないかどうかをチェックをするものだ。強く締めておけばいいというものではないので、これも国際規格で決められたトルクで締め付けてある。
こうした日々の点検のもとでバスの安全な運行が担保されている。もしナットを数えて10本未満であれば、もしかしたら12年以上前に誕生したバスが今でも整備バッチリで頑張っているんだなと思って応援していただきたい。
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