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 2022年、コロナ禍も新たな局面に入った。オミクロン株の拡大により、感染者数が急増し、それにともなう家庭内感染や濃厚接触者の増加により、ドライバー不足に拍車がかかっている。そしてすでに減便対応すら現実の問題となっている中、長引くコロナ禍への対応が急がれる。

(記事の内容は、2022年3月現在のものです)
執筆・写真/鈴木文彦
※2022年3月発売《バスマガジンvol.112》『鈴木文彦が斬る! バスのいま』より


■新たなドライバー不足の危機

 オミクロン株の重症化リスクは低いとは言いつつ、感染力の大きさから実際の感染者数が爆発的に増えたことによって、本人が感染したわけではなくても“濃厚接触者”になったために出勤できない、というケースが顕在化している。

 さらに子どもの感染事例が増えたことによって同居する家族である親が感染する、あるいは濃厚接触者として待機しなければならなくなる。

 昨年末ぐらいから、バス乗務員でも“子どもからもらって”家庭内感染するケースが急増している。それがまだ気づかないうちに営業所の喫煙所などで広がってクラスターが発生した事例も聞いている。

 車内感染のケースは今もほぼゼロと言えるが、このような状況下での感染や濃厚接触によって、ドライバー事情が逼迫しつつある。

■減便や土休日ダイヤへの移行やむなしの状況

コロナ下の乗務員不足により平日も仕業数の少ない土日祝日ダイヤで運行せざるを得なくなったケースも

 2022年2月ぐらいから、いよいよ逼迫の度合いが増してきた。全国的にドライバーが出勤できずに仕業が回らなくなり、減便を余儀なくされる傾向が見えてきた。

 首都圏のA社では、感染が急増し始めたころから、こうした事態を見越して3段階の減便ダイヤを設定し、段階的に対応することとした。すでに2月初めに1営業所が第1段階の減便に入っている。

 地方のB社では、出勤できるドライバーが減少したのに伴い、2月に入ってまもなく、平日も仕業数の少なくなる土休日ダイヤでの運行に切り替えた。

 土休日ダイヤの場合、朝ラッシュの便数が少なくなるので通学輸送などにそのままでは対応できないことから、朝(一部下校時間帯)だけの臨時ダイヤを設定、そのダイヤは運転士資格をもつ営業所の事務員や本社の事務職がハンドルを握る。

 小規模な地方事業者ではより深刻だ。中国地方のC社は、自治体から6路線を受託、ドライバー6人と臨時職員2人で運行している。1人でも感染または濃厚接触者となって出勤できなくなると必要な運行が確保できなくなる。

 そこで、万一の場合は近隣のタクシー事業者に運行してもらえるよう、代行の契約を結んだ。運輸局も許可に関して、足の確保という面から柔軟に対応するという。

 ある離島航路の話を聞くと、もっと深刻だった。船長が4人しかいないのに、そのうち2人が濃厚接触者となって出勤できなくなってしまった。通常のダイヤは維持できず、1日1往復運航するのが精一杯だという。離島航路は他の手段での代替が難しく、このことはそのまま離島の住民の生活に影響する。

 2月下旬ごろ、もしかしたら感染はピークを越えたのかもしれないと思わせたが、3月に入ってもいわゆる“高止まり”状態が続いている。すでに大半の人は日常生活において必要な感染対策はとっているはずで、ご承知のようにバスも消毒や換気などの対策は万全に行っている。

 3回目あるいは若年層のワクチン接種を進めつつ、早く感染拡大を止めないと、経営面の前に人的に運行の確保が難しくなりかねない。

■進む傾向が見えてきた住民理解

 新潟市では新潟市が施設と環境の整備を行い、新潟交通が運行確保に責任をもついわゆる“公設民営”方式でBRTを運行しているが、2014年度の開業以降、5年間すべての年度において利用者数、年間走行キロともに計画値を上回り、事業としても安定した実績を積み上げてきた。

 ところがコロナ禍の影響により、2020年度のBRTを含む新潟交通の乗合バス利用者数は、前年度比72%に減少、最大の減少幅を見せた5月には54%となった。バス事業の売上高も約30%減少し、減収額は20億円を超えるという。

 “公設民営”方式の中で、新潟市と新潟交通は運行事業協定を結んでおり、その中の項目の一つに年間走行キロ数を維持することが示されていた。

 開業時の運行事業協定は2019年度末で満了となるが、コロナ禍に突入した直後で改定に向けてのテーブルに着くことも難しかった状況から、いったん延長協定を結び、半年後の2020年10月にコロナ禍の影響を見極める必要もあって2022年度末までの再延長を行った。

 このとき、コロナ禍により利用者が大幅に減少し、悪化した経営状況を踏まえて、確認書を締結して協定の一部効力を停止した。それが年間走行キロを維持するという部分である。

 つまり経営が悪化した状態で走行キロを維持することに縛られると、事業全体が成り立たなくなる恐れがあり、地域の足の確保は事業者の成立あってのものであるという認識であった。

 これにより、新潟交通は2020年11月に利用実態に見合った約12%の減便を行った。BRT開業前に比べて165便の減となる。ドライバー不足の問題もあるものの、幹線・支線の接続や通学時間帯の輸送力確保などからすると、このあたりが限界であろう。

 新潟市では市民に向け「新バスシステム改善目安箱」を設けて意見を募っている。BRT開業から数年は乗り継ぎに関することを中心に多数の意見があったが、乗り継ぎを含むBRTのシステムが定着し、結果的に利便性が高まって利用が増えたことを背景に、次第に意見・要望は減少していた。

 コロナ禍においては減便に対する意見の増加が想定されたが、それに関連する「系統・ダイヤ」に対する意見数には大きな変化はなく、増便要望などは逆に減少している。

 贔屓目に見ると、コロナ禍におけるバス利用者の減少が一目瞭然の中、事業の厳しさが市民にも実感できたのではないか。

 また新潟市も新潟県も新潟交通も、コロナ禍における情報発信(公共交通のメリット・利活用方法・利用促進・安心感の醸成など)をWEBサイトや動画配信、市報などで積極的に行った。それが理解につながったのも明らかであった。

 今後さらに市民理解を進めるための情報発信と、課題整理の上アフターコロナに向けての取り組みを見せていくことがさらなる理解につながるものと考えられる。

投稿 コロナ下でも頑張って地域の足を確保するバス……世間の評価も変わってきたか?自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。