米半導体企業AMD(Advanced Micro Devices)はここ数年、PC向けプロセッサーの販売が好調なことに加えて、ソニーやマイクロソフトのゲーム機にチップを供給することで快進撃を続けてきた。
しかしノースランド・キャピタル・マーケットのアナリストは、今後は中国の需要が失速し、インテルに技術競争で追いつかれることで、AMDの成長が鈍化するとの警告を発している。
同社の投資家向けメモによれば、落ち込みが予想される背景にはいくつかの要因があるという。最大の要因は、中国企業が支出を減速させており、需要が減少していることだ。さらに中国政府が2025年までに、インフラから海外調達の技術を段階的に排除する方針を採ることも指摘されている。
さらにチップ技術に関しても、インテルがAMDに追いついてきているとのことだ。2023年後半までにインテルがデスクトップPC向けプロセッサーで4nm技術に移行するが、同時期にAMDはTSMCの5nm技術を使うようになると見られている。またAMDの苦境は、TSMCの3nmでの量産が遅れていることでも悪化しているそうだ。
もっともTSMCは、3nm技術は順調で、顧客の関心も引き続き高いと強調し、遅れを繰り返し否定している。しかし、この最先端技術を優先的に使えるクライアントは、おそらく最大手のアップルとなるだろう。
ノースランドのメモに戻ると、TSMCのゲートオールアラウンド(GAA/チャネルをゲート電極で覆う次世代の構造)トランジスタはインテルの類似製品に遅れを取っているとも付け加えられている。現インテルCEOのパトリック・ゲルシンガー氏が、優れたリーダーシップを発揮していることも大きいようだ。
最後に、新型ゲーム機(PS5やXbox Series X|S)が登場してからしばらく経っているため、買い換えによる大きな需要の伸びは望めないとの趣旨も述べられている。これらの要因から、ノースランドはAMDの目標株価を80ドルから60ドルに引き下げた。
もっともノースランドのメモが公表された後に、AMDが第3四半期(7~9月)の決算を発表。そこでは利益が市場予想を上回ったこともあり、同社の株価は上昇していた。
とはいえ、これはサーバー用プロセッサー市場への進出拡大が、PC市場での不振の影響を補った形となっている。最近はインテルがAMDに押される一方という印象があったが、今後はゲルシンガーCEOの指揮のもと、インテルの逆襲が本格化するのかもしれない。
- Source:Wccftech