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イギリスの次期首相を決める保守党の党首選が9月5日に迫っている。現在、インド系のスナク前財務相とイギリスで3人目の女性首相を目指すトラス外相との一騎打ちが繰り広げられている。

トラス氏(英政府公式サイト

党首選の序盤は、スナク氏がリードしており、同僚議員による7月の予備投票ではスナク氏が首位を独走した。7月下旬に行われた世論調査では、スナク氏の支持率が49%だったのに対して、トラス氏の支持率は31%だった。

しかし、わずかの間に情勢は一変した。8月上旬に行われた世論調査では、トラス氏が60%に対しスナク氏は26%とダブルスコア以上の圧倒的な差をつけたのだ。現地報道を総合すると、イギリスでは既に「次期首相はトラス氏」という認識のようだ。

トラス氏、付加価値税の削減検討

そんな中、トラス氏が検討している政策がイギリスはもちろん、日本でも注目を浴びている。英紙サンデー・テレグラフによると、トラス氏は、上昇する光熱費や物価高などの対策として所得税と付加価値税の削減を検討しているという。

付加価値税とは、モノやサービスを購入する際に課せられる税金で、日本の消費税のようなものだ。イギリスの付加価値税の税率は20%だが、家庭用燃料、電力、チャイルドシートなどは5%の軽減税率が適用されており、食品の税率はもともと0%だ。

とはいえ、すべての食品で0%が適応されるわけではない。たとえば、パン屋のサンドイッチは0%なのに対して、ファストフード店のハンバーガーは20%の税金がかかる。また、イギリス名物のフィッシュアンドチップスの税率も20%だ。アイスクリームもキャンディも“贅沢品”として、20%の税率がかけられている。

歴史的なインフレに直面しているイギリス国民(※画像はイメージです。SolStock /iStock)

10月から光熱費8割アップ

イギリスは現在、歴史的な物価高に見舞われている。英統計局が17日に発表した7月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で10.1%上昇。中でも、食料品の値上がりが深刻で、「食品・非アルコール飲料」は前年同月比で12.6%上昇した。

さらに、ウクライナ情勢によるエネルギー価格の高騰を受け、イギリスでは10月から家庭での電気・ガスが80%も値上げされる。一般的な家庭の場合、年間の光熱費は3549ポンド(約57万5000円)、月々の支払額は約4万8000円に上る。ちなみに日本では、4人家族の電気・ガスの料金の平均は、1カ月およそ1万6000円だ。

こうした中、庶民の生活を守るためにトラス氏は、付加価値税を一律5%削減することを検討しているというわけだ。英財政研究所(IFS)に試算によると、付加価値税を一律5%引き下げた場合、一般家庭では年間1300ポンド(約21万円)の節約になるという。

「日本の消費税も下げる検討を」

日本ではトラス氏が検討する政策を羨望のまなざしで見る人が少なくない。特にネットで減税運動を展開している人たちの間では、次のような反応が目立った。

なぜ日本の政治家は国益に反することは欧米追随するのに、国民の生活を守ることには欧米追随しないのだろう?

日本の消費税も下げる検討をして欲しいです。

こんだけのインフレ下で減税ってすげえなぁ!

日本もイギリスほどではないが、食品を中心に物価高に襲われ、エネルギー価格もじわじわ上がっている。最新の「国民生活基礎調査」(2019年)によれば、生活が「やや苦しい」「大変苦しい」と回答した世帯は54.4%に上る。母子家庭に至っては、86.7%の世帯が「生活が苦しい」と回答している。コロナ禍やエネルギー価格の高騰、物価高でこの割合はさらに高まっていると推測される。

岸田首相もトラス氏のように、「国民の生活を守るために消費税率を一律5%削減する」と言ってくれないだろうか。せめてお得意の“検討”くらいはしてもらいたいものだ。