シーズンも終盤戦を迎えた2022年スーパーGT第7戦、九州オートポリスでのGT500クラス決勝は、土曜午前のクラッシュから挽回を見せた松下信治と、セカンドスティントで首位独走を決めた塚越広大の17号車Astemo NSX-GTが今季初優勝。2位の100号車STANLEY NSX-GTとともにホンダ陣営がワン・ツーフィニッシュを決め、最終戦を前にタイトル戦線に急浮上する結果となった。
10月に入って全国的な秋晴れにも恵まれ、地域によっては30度越えの真夏日も予報される週末は、前日の予選から参戦メーカーや各タイヤ銘柄が入り乱れつつ、トップ5がコンマ5秒差圏内という白熱の勝負が繰り広げられた。
そこでポールポジションを射止めたのは24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zの佐々木大樹で、ひさびさのQ2アタックとなった自身にとってGT500キャリア初、チームにとっては2017年台6戦以来となる5年ぶりの最前列を獲得。足元のヨコハマタイヤとしては、今季4回ポールを奪ってきた19号車WedsSport ADVAN GR Supraに続き、年間5度目の予選最速となった。
さらにアウトサイドの2番手、4番手、6番手には、それぞれ100号車STANLEY NSX-GT、17号車Astemo NSX-GT、そして8号車ARTA NSX-GTとブリヂストンタイヤを装着するホンダ陣営が並び、奇数列3番手、5番手には19号車WedsSportに加え、ひさびさのQ2進出となった14号車ENEOS X PRIME GR Supra)が続くなど、ポール獲得のニッサンZ GT500を包囲するグリッド順に。
スーパーGT恒例となるシーズン最後の2戦でサクセスウエイト(SW)が半減、そしてノーウエイト勝負となる最終戦を前に、序盤戦の好成績によりここまで足枷を嵌められて過ごした陣営も、タイトルに向け最後の反撃を狙うレースに。
決勝日も午前から強い日差しを受けたサーキットは、快晴の空に航空自衛隊新田原基地所属のF-15J/DJがウェルカムフライトを実施。その轟音の余韻が残るなか、正午を10分ほど過ぎてウォームアップ走行が始まると、ここで36号車au TOM’S GR Supraのジュリアーノ・アレジがいきなりのコースオフを喫し、赤旗中断の影響で20分間のセッションが5分延長され、以後のスケジュールは遅れての進行となる。
13時35分のフォーメーションラップ開始を前に、気温は26度ながら路面温度は46度まで上昇する季節外れのコンディションのなか、ピットスタートを選択した37号車KeePer TOM’S GR Supraを除く全14台がグリッドを後にする。
大分県警の白バイ隊とパトカーがパレードラップを終え隊列を離れると、想定より高い路面温度も考慮しつつ、各車ともウィービングでタイヤの反応を確かめるようにしてオープニングラップのターン1に飛び込んでいく。
すると9番手だった12号車カルソニック IMPUL Zのベルトラン・バゲットが、インサイドから前方のスペースを見つけ出し、セクター2までで一気に6番手までポジションを上げてホームストレートに帰ってくる。
一方で8番手発進の23号車MOTUL AUTECH Zは39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraにも先行を許し10番手に下がると、3周目には僚友の3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zにもオーバーテイクされ、ジリジリとポジションを下げていく。
先頭を行く24号車リアライズ佐々木は、序盤からうまくタイヤを発動させトップを維持すると、GT300全車をラップダウンした10周目終了時点で、2番手100号車STANLEY牧野任祐に対し5秒以上のマージンを構築する。
17周目にはターン1でスピンオフしたGT300車両があり、最初のFCY(フルコースイエロー)が発動すると、18周目の再開後に車速が回復し切れなかった19号車WedsSport ADVAN国本雄資を捉え、17号車Astemoの松下が3番手へ浮上。その直後にレース距離3分の1を超えた23周目突入でピットウインドウが開くと、2番手の100号車STANLEYを筆頭に、14号車ENEOS X PRIMEらがミニマムの戦略でドライバー交代へ。
モニター上では35.6秒の作業静止時間で送り出した100号車に対し、続くラップで塚越広大へと繋いだ17号車Astemoは、同32.9秒とわずかに作業速度で上回り、トラック上でのポジションを逆転。
結果的に27周目に19号車WedsSport、28周目に続いた24号車とわずかにタイミングを伸ばしたヨコハマタイヤ勢をもラップペースで上回り、ここで17号車が実質的な首位に浮上する。
また、24周目にルーティン作業を終えてピットアウトしていた松田次生の23号車MOTUL AUTECH Zは、なんとコース上でスローダウンし再度ピットレーンへ。直後に復帰を果たしたものの、大きく遅れる厳しい展開となってしまう。
序盤から10番手争いを繰り広げ、苦しいレースペースながら背後のニッサン/ニスモ陣営を抑え続けた39号車DENSO KOBELCOの関口雄飛や、ピット発進の37号車KeePer宮田莉朋らがステイアウトで奮闘を続けるなか、36周目時点でトップ10圏内を争っていた8号車ARTAには、ここでピット作業違反でのドライブスルーペナルティが宣告される。
40周を走破した関口が中山雄一にマシンを託した39号車DENSO KOBELCOに続き、41周終了で37号車KeePerもドライバー交代を終えると、17号車Astemo、100号車STANLEY、そして24号車リアライズのトップ3に。
平手晃平にチェンジして以降、ジリジリとホンダNSX-GT編隊との距離を詰めていった24号車リアライズは、45周目を過ぎ2番手100号車STANLEY山本尚貴のテールに迫る。
一方、14番手スタートから7番手まで進出する力走を披露していた38号車ZENT CERUMO GR Supraは、47周目に石浦宏明がピットロードへとステアリングを切り、厳しい流れが続くシーズンの展開を象徴するかのように、そのままガレージインでレースを終えてしまう。
52周目にはGT300車両の回収で2回目のFCYが発動すると、7番手争いを引き継いでいた36号車au坪井翔が高速コーナリングからの80km/h制限でバランスを崩し、背後の3号車CRAFTSPORTSもあわやの場面に遭遇する。
54周目のリスタート以降は4番手争いの14号車ENEOS X PRIME山下健太vs12号車カルソニック平峰一貴、そして7番手の36号車vs3号車と、双方でトヨタvsニッサンのバトルが繰り広げられる。
すると60周目にGT300のバックマーカーと絡んだ隙を突き、3号車CRAFTSPORTS高星明誠がターン3のインサイドからポジションを奪取。36号車auをパスして7番手に上がり、現ポイントリーダーが最終戦に向けて執念のオーバーテイクを披露する。しかし4番手争いは、63周目に同じくターン3で山下にアウトから仕掛けた平峰がオーバーシュートし、背後にいた19号車WedsSport阪口晴南にも先行を許すことに。
最終盤は各車ともにタイヤの消耗が激しいか、トラック上にマシンを留めて背後のライバルを抑えるのがいっぱいの展開となり、首位を守り抜いた塚越の17号車Astemo NSX-GTが今季初優勝を達成。ここオートポリスを得意とするホンダ陣営が2位フィニッシュの100号車STANLEY NSX-GTとともにワン・ツーフィニッシュを飾り、7位入賞の3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zに4点差と肉薄している。